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もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら13泊目

1 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 23:42:43 ID:m1wsBb0V0
このスレは「もし目が覚めた時にそこがDQ世界の宿屋だったら」ということを想像して書き込むスレです。
「DQシリーズいずれかの短編/長編」「いずれのDQシリーズでもない短編/長編オリジナル」何でもどうぞ。

・基本ですが「荒らしはスルー」です。
・スレの性質上、スレ進行が滞る事もありますがまったりと待ちましょう。
・荒れそうな話題や続けたい雑談はスレ容量節約のため「避難所」を利用して下さい。
・レス数が1000になる前に500KB制限で落ちやすいので、スレが470KBを超えたら次スレを立てて下さい。
・混乱を防ぐため、書き手の方は名前欄にタイトル(もしくはコテハン)とトリップをつけて下さい。
・物語の続きをアップする場合はアンカー(「>>(半角)+ 最後に投稿したレス番号(半角数字)」)をつけると読み易くなります。

もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら12泊目
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/ff/1198792331/

PC版まとめ「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」保管庫@2ch
ttp://ifstory.ifdef.jp/index.html

携帯版まとめ「DQ宿スレ@Mobile」
ttp://dq.first-create.com/dqinn/

避難所「もし目が覚めたら、そこがDQ世界の宿屋だったら」(作品批評、雑談、連絡事項など)
ttp://jbbs.livedoor.jp/game/40919/

ファイルアップローダー
ttp://www.uploader.jp/home/ifdqstory/

お絵かき掲示板
ttp://atpaint.jp/ifdqstory/

2 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/29(火) 23:46:40 ID:XTl7U9H70
ドラクソなんかの世界に紛れ込んでしまったら自殺するしかないね

3 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/30(水) 00:58:06 ID:h1liBlbJO
乙!
3ゲトズサーー

4 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/04/30(水) 11:32:18 ID:jdFhU5hLO
>>2
現世でも同じだろ蛆虫

5 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/01(木) 00:16:17 ID:xRhWVn4U0
スレ立て乙です。

6 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/01(木) 14:12:07 ID:+b8QrQBsO


7 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/02(金) 01:30:56 ID:NmHihLlw0
擦れた手GJ!
前スレの容量まだショート分くらいあるのかな

8 :俺と凶器1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:13:37 ID:p4FDjYNj0
体が宙に浮いたかと思うと目まぐるしく景色が変わり次の瞬間にはもう町の前に立っていた。
相変わらずすげー呪文だぜ。で、ここで何をするんだ?とねーちゃんに尋ねる。



ここにもオーブがあるわ。王様が保管しているてお父様が言っていたわ。
それとここの酒場の倉庫にはお父様達が旅をした際に使った武器や防具、道具がたくさん残ってるらしいの。
今後旅はさらに熾烈を極めるだろうから必要なものは自由に持って行きなさいだって。


なるほど。まあイケにしては気が利くじゃねーか。そういえば俺今丸腰だしな。
長年の相棒はやまたのおろちと戦った時に昇天したし。確かに武器がいる。
そうして俺達は酒場に向かった。道中勇者が口を開いた。

ねえ!今日はあたしんちにみんなで泊まってよ!わたし先に行ってお母さんにみんなが来るって
話してくる!ルイーダさんの店のすぐ近くだからそれだけ伝えたらわたしもすぐ行くから!

そう言って勇者は走って行ってしまった。
しっかし嬉しそうだったな。勇者って言っても16のガキだもんな。
この町にはしばらく滞在しててもいいだろう。そう頻繁には帰ってこれないだろうしな。

そうしているうちに俺達は酒場に着いた。
ほうほうここが噂に名高いルイーダの酒場ですか…おっさんが得意気にこの酒場に関する薀蓄を話し出す。
無視して中に入る。そういやピエロが仲間に加わったのもここだったよな。
懐かしいな。そうそうあのテーブルの所に見るからに怪しいピエロの格好をした大男が……っておいッ!!!!


9 :俺と凶器2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:14:15 ID:p4FDjYNj0
そこにはまたしてもピエロがいた。
こっちに気付くと嬉しそうに駆け寄ってくる。
てめーはこんな所で何をしてるんだ!!!!とっとと城に帰れ!!!!!!
と怒鳴りつける。しかしピエロ曰く自分がいないとここに預けてある荷物持ってけないぞとの事だ。
たしかに俺達が預けたわけじゃないし勝手に持っていってしまってはそれはもうただの泥棒だ。
だから賢者に言われて来たのだと偉そうにするピエロ。まあ別にかまわんがあの大臣心労で死ぬぞそのうち。

ピエロがカウンターで話をしてそのまま裏の倉庫へ案内してもらった。
中に入る。これは…すげえ。

そこには所狭しと大小様々な武器や防具、なんだかよくわからない道具が並んでいた。
どれでも好きなもんを持っていっていいとの事なのでみんな片っ端から物色している。
俺はというと当然武器がいる。繰り返すが相棒のドラゴンキラーは折れてしまった。今後やまたのおろちクラス
の敵とはまた対峙する事になるかもしれない。魔王なんてさらに強烈な化け物だろう。
そいつらとやりあうには確実にドラゴンキラー以上の武器が必要なのだ。

………………。

ダメだ。そこそこよさそうなものはあるのだが今一つこう心にグッとくるものには出会えない。

…………?

その時一際異彩を放つ剣を発見した。いや異彩なんて生易しいものではない。
凄まじく禍々しい。そして恐ろしく破壊力がありそうだ。

思わず手を伸ばす。遠くで見ていたピエロとねーちゃんが叫ぶ。

いかん!いかんぞ!!!
ダメ!!!!!その剣を触ってはダメよッ!!!!!


…え…

10 :俺と凶器3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:14:58 ID:p4FDjYNj0
そんな事言われてももう俺は完全に剣の柄を握ってしまっている。
血相を変えてピエロとねーちゃんが駆け寄ってきた。


マズいわ…よりによってこんな剣を…

…シャナクは使えるかね…

ごめんなさい使えないの…一刻も早く教会で…


何やらヒソヒソ話をしている。何なんだ?なーんか胸糞悪いなチクショウ。
そんなこの剣マズイのか?せっかく強そうだったのに。

俺は無造作に剣を元の場所に戻した。


!!!!!!!!!?????????

ねーちゃんとピエロが目を丸くしている。だからさっきからなんなんだよ!!!!

ねえ…総長さんその剣持って何も変化はなかった?
握ったあと剣が離せなくなったりとか意識が朦朧としたりとか…


ない。
俺はもう一度剣を拾う。そして置く。それを何回か繰り返して見せる。


こんな事って…

ねーちゃんが困惑の表情を見せる。

11 :俺と凶器4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:15:34 ID:p4FDjYNj0
だから何なんだよ!とねーちゃんに詰め寄った。

呪われた装備品についての知識はある?

呪われた装備…。あるわけねーよ。この世界の事なんてまだまだわからない事だらけだ。

聞いた所によるとこの世界には「呪い」のかかった武器や防具があるらしい。
そういう類のものを手にすると気が狂って仲間を斬りつけたり金縛りにかかって
動けなくなったりしてしまうらしい。しかも一度装備してしまうと本人の意思では外せなくなり
外すには特別な魔法や特別な儀式が必要だそうだ。

まさか…この世界に呪いそのものを受け付けない人間がいるとは…

ピエロが呟く。この世界…。ああそうか。きっと俺は元々この世界の人間ではないから呪いがかからないのでは
ないのだろうか。どういう理屈だかさっぱりわからないしわかりたくもないがとにかく俺は呪われないのだ。

という事はこの剣を持っていっても問題ないだろう。
俺は再度剣を拾い上げた。見れば見るほど妖しいオーラを放っている。

それは「はかいのつるぎ」という剣よ。
絶大な攻撃力があるわ。ただしその呪いが故に普通の人なら動けなくなってしまうものなのだけど…。

ねーちゃんが説明してくれた。一振りしてみる。
軽く振っただけなのに空気を切り裂く鋭い音が室内に響く。こいつはすげえ。
もう二度、三度と振ってみる。ちょっと強めに振ってみる。思いっきり振り回してみる。
すげええええ!気に入ったぜ!俺はこいつを新しい相棒にする事を決めた。
はかいのつるぎ。なかなか素晴らしいネーミングセンスじゃねえか。
なんたって破壊だからな破壊。まさに破壊王たる俺に相応しい剣である。
この剣なら魔王だかなんだか知らねえがズッタズタのボロボロにしてやるぜ!!!ガハハ。


12 :俺と凶器5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:16:12 ID:p4FDjYNj0
…やっぱり少し精神に異常が…

いやしかしこの程度なら支障はあるまい…

また二人でコソコソ話してやがる。

しかし呪われた武具が問題ないとなるとここには強力な武具なんて山程あるぞい。
なんせ誰も装備できなくてまとめてここに放置してったからな。

とピエロが言った。マジか!?そいつは素敵だ。俺は呪われた武具を片っ端から漁った。
探せばもうほんと沢山あるある。どいつもこいつも不気味な風貌でかっこいいぜ。

「はかいのつるぎ」

「じごくのよろい」

「ふこうのかぶと」

の三つを装備した。体の奥底から力がグングンと湧いてくる。なんだか今の俺なら魔王にもタイマンで
勝てそうだ。

悪魔…悪魔じゃ…

おっさんを始め以下みんなが俺を見て絶句している。こいつらは本当にファッションセンスってもんが
わかっていない。

キャー総長ちゃんかっこいい!!!どうしたのそれ!?

いつのまにか追いついて来た勇者が駆け寄ってくる。え…もしかして今ここでこの俺の格好いいコーディネート
を理解できてるのは勇者だけなんじゃ…それはそれで逆に不安だ。

13 :俺と凶器6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:27:27 ID:p4FDjYNj0
わたしも新しい服欲しい!うーーーーんっとかわいいやつ!

あーあ、これは長引きそうだ。女ってのは服を買いに行くとあーでもないこうでもないと異常に時間がかかるが
それはこっちの世界でも同じらしい。総長ちゃんもよさそうなのがあったらこっち持ってきて!だと?
ほほう俺のセンスを頼るとはやっぱこいつなかなかわかってるじゃねえか。どれどれ。
俺はさっきまでとは打って変わって女の子目線で使えそうなものを探し始めた。
かわいくてそれでいて強さも兼ね備えた実用的なやつ。うーんこれはこれで意外と難しい。

おお!!!!これは!!!?????

俺はまたまたとんでもない鎧を発見した。いや正確には鎧なんてもんじゃない。
ただのビキニだ。かなり際どい。でへへ…これねーちゃんが装備するべきだな…そうに違いない!

それは「しんぴのビキニ」じゃ。高い防御力と歩くたびに体力が回復するという効果も秘めた
素晴らしい防具じゃ!

近くにいたおっさんが興奮気味に説明してくれた。ほうほうなるほどな…それはつまり体力が低いねーちゃんに
ピッタリじゃないか!これは我が鬼浜爆走愚連隊の戦力アップのためにも是非装備してもらわなくては!
おっさんと目を合わせる。あいつもニヤけてやがる。

いやーん総長ちゃんのエッチ!そんなの着て外歩けないよー

何を勘違いしたのか勇者が言ってくる。てめーじゃねーよボケ。てめーのまな板じゃビキニは似合わん!
これはスタイルのいい大人の女にこそ似合うのだ!

ねーちゃん!ちょっとこれを…

そこまで言いかけただけなのに返事が返ってきた。

殺すよ?

…………。はい。悪乗りが過ぎました。サーセン…。

14 :俺と凶器7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:28:21 ID:p4FDjYNj0
そんなこんなしているうちにみんなそれぞれ身を固めたようだ。
さてここで俺がみんなをファッションチェックしてやろうと思う。

さてまず勇者からだ。

いなずまのけん
みかがみのたて
ドラゴンメイル
きんのかみかざり

という格好だ。まあこれは俺が選んだんだがな。本当は頭もミスリルヘルムにしようと思ったんだが
重いしかわいくないとの事で却下されてしまった。あんな髪飾りで頭守れるかよと思うがまあ奴も
女の子なのでそのくらいは気を使いたいのだろう。他が重装備なのでよしとするか。



続いてねーちゃん

りりょくのつえ
てんしのローブ
ふしぎなぼうし

いいよいいよー!まさに天使!ねーちゃんにピッタリの衣装だ。
りりょくのつえで精神力を消耗する分ふしぎなぼうしの効果で節約する(ねーちゃん談)
まあ俺には難しい事はさっぱりわからんが相性のいい組み合わせらしい。
うんうんうねーちゃんは頭いいなあ。


15 :俺と凶器8 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:29:12 ID:p4FDjYNj0
そして最後がパンツ

まじんのおの
やいばのよろい
ちからのたて
グレートヘルム

おお!これは強そうだ。もうこいつの人間離れは例えるならモンスターみたいな人間ではなく
人間っぽいモンスターだな。パンツ仮面からパンツモヒカンにレベルアップしやがった。
本来なら重すぎて空振りが多い武器らしいがこいつの糞馬鹿力なら問題なく振り回せる。
まさにこいつピッタリの武器だ。

俺達はもともと持っていたボロボロの装備品を捨て…じゃなくてここに保管しておいて
時間も時間なので勇者宅に向かう事にした。

16 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/05/02(金) 17:30:20 ID:p4FDjYNj0
>>1スレたて乙!
新スレ一発目の投下頂きました!


17 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 00:51:17 ID:YyjyTbgoO
総長乙でした!

18 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 02:00:28 ID:P5QUxFz3O
乙でした!
しかしなんという美女と野獣共
パンツはオルテガ的に考えたらそんなにおかしくはない。ギリギリ。
だが総長てめーはダメだ
全身呪い装備とか効果はともかくビジュアル的に酷すぎるwww

19 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 08:57:20 ID:yLgaoimM0
総長外道装備杉ワロタwwwwww
そしてねーちゃんに神秘のビキニ装備して欲しかった俺w

20 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 10:26:40 ID:dXDxFnbKO
何という神秘のビキニ
ねーちゃんの姿を想像しただけでワクワクしてしまった
この俺は間違いなく変態




―○-○―




21 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 13:59:36 ID:jxc257+T0
勇者ちゃんにこそ神秘のビキニ着て欲しいのに…
総長分かってねーなwwww
しかし悪魔総長と魔物パンツではもう二人で町の中歩けないw

22 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 14:18:58 ID:mXE1dgEE0
呪いをもはねつける、総長TUEEEEE
総長が装備外したとき(入浴(ってあるのかな?)中とか、就寝中とか、他の仲間が間違ってさわらないように気をつけなくては・・・

23 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/03(土) 18:49:13 ID:VFerFGOS0
―憲法は赤口と―

「アマンダさんは天空の花嫁と聞いてどんな人を想像しますか?」
まったく見知らぬ世界から来たような奇妙な男は軽い口調で変な質問をしてくる。
「なあに。ケージさんの知り合いの人?」
「ええ。知り合いの女性が『もし結婚したら天空の花嫁になる。』と言っていましてね。」
「きっと天界に住まう女神のようなお嫁さんなんでしょうね。」
私は自分が花嫁衣裳を着てジョセフの横に並ぶ姿を思い浮かべていた。
「私もそう思いました。しかしそうではないんです。」
あら、あまり綺麗な人じゃないのかしら……
「いえ、美しい女性ですよ。美しいというより可愛らしいと言ったほうが似合うかな。」
私の顔を見て考えを読んだのかケージさんはそんなことを言った。
「この2人は10年ぶりの再開をきっかけにお付き合いを始めたそうなんです。」
「まあ、ロマンチックね。」
「女性が入院している間に男性が引っ越してしまって、思いが伝えられなかったそうです。」
「すれ違いの恋が実ったのね。」
私のジョセフへの想いもすれ違いだった。でも、邪魔する障壁はもうない。

「話がそれました。実は天空の花嫁という言葉で注目すべきは夫のほうだったんですよ。」
「どういうこと?」
「夫が『天空の人』と呼ばれていた。その妻になるから天空の花嫁というわけなんです。」
「あらあら、それは思いもよらなかったわね。」
「もし結婚したら天空の花嫁。ただし天空なのは妻ではなく夫のほうだった。」
ケージさんの口調が変わった。
「そうなんですよ。注目すべき相手が違っていた。この事件もね。」

――この事件。

ペロの餌に毒が入れられた事件。この男はその事件を調べている。
そして少しずつ真相に近づいてきている。

この事件の真犯人である私に……

24 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/03(土) 18:50:36 ID:VFerFGOS0
――

私は一冊の本を胸に抱いていた。

偶然道具屋で見つけた古い本。
ぱらぱらとページをめくるとそこには様々な薬の調合法が載っていた。
私はしおりが挟んであるページで手を止めた。
そして、そこに書いてあった薬を見てある計画を思いついた。

すばらしい未来を手に入れるための計画だ。
私とジョセフ。2人の輝かしい未来のための……

私は本を買うと胸に本を抱えたまま買い物を続けた。
薬の材料を揃えていくためだ。
材料のほかに真っ赤な口紅を買った。
きっとジョセフがも気に入ってくれるだろう。

私は自分の家である宿屋に帰ると自分の部屋にこもる。
そっとしおりの挟んであるページを開いた。

私はそこに載っているレシピのとおりに薬を調合していく。
材料の分量を間違えないよう注意深く文字を追う。

カタ。

小さな物音に私は本から顔を上げた。
あたりを見回したが誰もいない。
少しばかり神経質になっているのかもしれないわ。
だが、この薬を作っているところを誰かに見られるわけにはいかない。

25 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/03(土) 18:51:37 ID:VFerFGOS0
宿泊客が間違ってこの部屋に入ってくることがないわけではない。
こういうとき宿屋の娘という立場が恨めしく思う。
宿屋という商売は父親が人と接することが好きなのでやっている。
いろんな人と出会うのが楽しみだという。

宿屋にはいろんな人がやってくる。
特に今は変な客がいる。妙な格好をした男だ。
目が覚めたとき、まるでここが見知らぬ世界だったかのような反応だった。
何か変なものでも食べたんじゃないかしら。
その考えに私は声を出して笑いそうになってしまった。
私がこんな心配をするのは酷くおかしなことなんだもの。

何しろこれから私は犬のえさに毒を入れようとしているのだから。

「えーっと、あとはこの草を入れればできあがりっと。」
私は薬の完成を報告するような台詞を声に出して言った。
自分がこれからやろうとしていることに、少しばかり気分が高ぶっているのかもしれない。

「うふふっ。サンディの困った顔が目に浮かぶようだわ。」
私は再び心の声を口にする。
こんなことを誰かに聞かれたら大変なのに。
やはり大胆になっているに違いない。

私は悪い女になろうといていることを楽しんでいるのかもしれない。
今鏡を見たら私はどんな顔をしているのかしら。
冷たい目をして口の端だけを少し吊り上げている姿が思い浮かぶ。
そんなことを思いつつ、私はまた悪女らしい台詞を言う。
「見てらっしゃい。私のジョセフに手を出したりして許さないからっ。」

26 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/03(土) 18:52:50 ID:VFerFGOS0
「おお、アマンダ。ちょうどいいところに来た。ちょっと話がある。」
完成した薬を持って家を出ようとしたとき父親に呼び止められた。
「今日からしばらくこの人に家の仕事を手伝ってもらうことにしたんだ。」
そう言って父が紹介してきたのは、例の妙な格好をした男だった。
「どうもよろしくお願いします。」

この男、もうおじさんと呼んでも差し支えなさそうな年齢よね。
帰る方法が見つかるまで家において面倒を見ることにしたという。
こんな得体の知れない人を家におくなんて、父さんも物好きだわ。

それにこの人、宿屋の仕事なんてできるのかしら。
もともと何をしているのか聞くとおじさんはコウムインをやっていると答えた。
何かしらコウムインって。
え、ケイジって言うのが名前なの?
変な名前。本名なのかしら。呼びにくいからケージさんって呼ぶことにするわ。

「ケージさん、しばらくこの宿屋で働くつもりなの?」
「早く帰りたいのは山々ですが、帰る手がかりがまったくない状態でして。」
「町の外から来たってことは旅をしていたんでしょ? 腕に覚えがあるのね。」
「いえ、私のいたところは至って平和なところでして戦いなんて無縁なんですよ。」
「あらまあ、うらやましいわね。」
「法律で軍隊を持つことを禁止されているくらいですからね。」
そんなことしてモンスターが襲ってきたらどうするのかしら?

「この町だってとても平和そうです。」
町の中にいればモンスターが襲ってくることはない。
いたって平穏な毎日が繰り返されている。
「町の中にいる限りはね。確かに今は平和なものよ。」
でも、これからこの町には大事件が起きるのだ。
「こんなときにこの町に来るなんてあなたも災難ね。」

27 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/03(土) 18:54:32 ID:VFerFGOS0
「こんなときと言うと何か良くないタイミングだったのですか?」
そんなこと言える分けないじゃないの。
「今、町の中は平和なものだけどいつ魔王が襲ってくるのか分からないって意味よ。」
うっかり変なことを言ってしまったがうまく誤魔化せたわ。
でもケージさんはきょとんとしたような顔をしていた。

「魔王……そんなものがいるのですか?」
いまどき魔王も知らないなんてずいぶんのんきな人なのね。

「とにかくあなたの身元は分からないわけね。」
「ええ。目が覚めたらこの宿屋にいたとしか言いようがないのですよ。」
本気でそんなことを言っているのかしら。
……まさか本当に何か変なものでも食べたんじゃないでしょうね。

それともこの男、自分が異世界からきたとでも言うのかしら。
どうせ異世界から来るなら世界の救世主となる若くてかっこいい男が良かったのに。
まあ、破壊神だとかそういう恐ろしいものじゃなくてよかったわ。
私は目の前の男を見て私はそんなことを思っていた。

でも、この目の前の男は破壊神よりもはるかにたちの悪いものだった。
今から犯罪を犯そうとする私にとっては……

―続く―

28 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 18:55:44 ID:MYeTaEjK0
リアルタイム遭遇支援

29 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 18:56:51 ID:MYeTaEjK0
支援したと思ったら終わりかw
今回は6の話みたいだからかなりwktk

30 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/03(土) 20:28:53 ID:jxc257+T0
冒険の書シリーズ大好きだ!
今回はサンマリーノのあの事件からから始まるのか
続き楽しみだ

31 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/04(日) 04:51:05 ID:HhsTFc+QO
今までの流れからいくと、今回は6章立てでしょうか?
ドラクエにまさかの倒叙探偵小説ktkr!
渋いケージさんの推理が楽しみです!

32 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/04(日) 06:45:54 ID:6lBXv6bhO
ケージ=刑事か…確かに公務員だわ

33 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/04(日) 15:24:15 ID:2ezlh5ct0
な、なるほど。刑事だったのか。
そりゃ、毒殺の犯人にとってはたち悪いわ・・・(wwwww

34 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/04(日) 18:14:43 ID:tV7pZdF70
>>33
右京さんだとか十津川さんみたいのが相手だったらもうどうしようもないな

35 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/04(日) 19:13:40 ID:EWI6FhMW0
のっけから総長と冒険の書のダブル更新とか何のご褒美ですか?
お二方とも乙&GJでした。

ロト紋のキラでさえ避けた呪いの武具を躊躇無く装備w
さすが総長!おれたちに(ry

36 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/04(日) 20:26:10 ID:frK+7em9O
ニコラス・ケイジが思い浮かんだのは俺だけでいい。

37 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/05(月) 23:00:13 ID:qW6dnOehO
最近更新しないなと思ってたらこっちだったか………。
仕事中にでも読ませてもらうか!
じゃ、行ってきま〜す。

38 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/06(火) 11:39:52 ID:b3Cv6Fjm0
総長の反則装備キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!

ドラクエコロンボキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!

もうメッチャ期待!

39 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/09(金) 06:06:35 ID:8dn3gOT2O


40 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/10(土) 08:22:22 ID:bAMWuVID0
hoshu

41 : ◆Tz30R5o5VI :2008/05/10(土) 09:47:47 ID:QDiPxsy0O
>>1


42 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/11(日) 20:20:28 ID:CeMKsIor0
保守

43 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/13(火) 07:23:11 ID:FNQ18FALO
保守

44 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/14(水) 00:41:56 ID:+RBulQR60
―刑法を先勝に―

ケージさんという正体不明の男がうちの宿屋で働くことになった。
彼が自分の家に帰るための方法が見つかるまでまでということだ。

「宿屋と言えば客商売よ。ちゃんとできるのしら?」
「もちろんお世話になる以上、何でもやらせていただきます。」
そう言っているけどどこか頼りないのよね。

父さんは彼が働くための準備をあれこれしていた。
「午後にでも教会行って神父様に彼を紹介しようと思うんだ。」
「教会ですか?」
「何かを始めるときには教会でお祈りをするものなんだ。」
父さんの説明にケージさんはしきりに納得している。

何かを始める前には教会でお祈りをするものだ。
でも、今日の私はそれができない。
犯罪の成功を神様にお祈りするわけにはいかないもの。

「教会へは午前中に行ってしまいなさいよ。」
「早く働いてもらって自分が楽しようって言うんだな、アマンダ。」
そう言って父はワハハと笑った。
「違うわよ。何事も早いほうがいいと思っただけよ。」

そう、早いほうがいい。
サンディとジョセフがこれ以上近づく前に手を打つ必要があるのだ。

45 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/14(水) 00:45:25 ID:+RBulQR60
余計なやり取りで時間を使ってしまった。
私は瓶に詰めた毒薬を持ってこっそり家を抜け出した。
これから向かうのは町長の家だ。

屋敷に着くと誰にも見つからないように屋敷に忍び込む。

屋敷の中では犬のペロが寝ていた。
ごめんなさい。あんたに恨みはないけど私の未来のために協力してね。
私は心の中でそう呟くと皿に盛られた犬の餌に薬を振りまいた。
それからまたこっそりと屋敷を出る。

大胆な犯行だったが幸いなことに誰にも見られていない。
私はまだ胸の高まりが続いていた。

あの餌を食べるのはペロ。そのペロの面倒を見ているのはサンディだ。
餌を食べてペロが倒れれば誰だってサンディのせいだと思うだろう。
飼い主である町長は犬のペロを可愛がっている。
きっと町長は激怒してサンディを屋敷から追い出すに違いない。
そうなればサンディはもう町長の息子であるジェセフに近づくことさえできまい。
これで私のジョセフへの想いを邪魔するものはいなくなるのだ。

これから起きることを考えて思わず笑みがこぼれる。
帰る途中、毒薬の入っていた瓶を捨てる。
そして何食わぬ顔で自分の家である宿屋に戻った。

46 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/14(水) 00:46:42 ID:+RBulQR60
「お出かけでしたか?」
うちに帰り着いたときやはりどこからか帰ってきたケージさんが話しかけてきた。
ああ、そうだ。彼は教会へ行くことになっていたのだった。
「ええ、ちょっとね。」
「大方かっこいい旅の剣士の噂を聞いて探して回っていたんだろう。」
父さんが口を挟む。私はそんなところよと答えておいた。
自分の推理が当たっていたことに父さんは満足しているようだ。
まさか自分の娘が犬の餌に毒を入れていたとは夢にも思ってないのだろう。

「ここでは剣士なんてものがうろうろしているんですか?」
ケージさんが妙な質問をしてくる。
「旅をするならそれくらい普通でしょ? 町の外にはモンスターがうろうろしているもの。」
「モンスター……魔王がいるならモンスターがいても不思議はないと言うわけですね。」
「下手に外へ出たらハエ魔導にヒャドされたりバブルスライムに毒を受けたりするわよ。」
なんだか神妙な顔をしている。まさかモンスターすら知らないのかしら。

「そうそう、彼の身元を捜すなら町長のところにも挨拶に行かないといけないな。」
父さんがそんなことを言い出す。
「それならさっそく行ってきます。」
「でも今行っても町長は家にいないわよ。」
「おや、町長の家に行っていたのですか?」
私は内心しまったと思ったがすぐに切り替えした。
「町長の屋敷へは行ってないわよ。」
とっさに思いついた町長が留守だと思った理由を述べる。
「大通りで町長を見たの。だからまだ帰ってないと思っただけ。」
うっかりぼろを出すところだった。もう少し気をつけなければ。

だけど、この男の前ではそれも無駄な努力だったのかもしれない。

47 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/14(水) 00:47:45 ID:+RBulQR60
「どうやら大変な事件が起きたようです。」
ケージさんがそんなことを言い出した。
彼は午後になって町長のところへ挨拶に行き、たった今帰ってきたばかりだ。
「まあ、何があったの?」
「町長の飼っている犬が突然痺れたように痙攣して動かなくなったらしいです。」
「あら、それは大変ね。神父様がペロを診てくださったのかしら?」
「はい。油断はできないが大事に至らないだろうということです。」
「それは良かった。ペロったらいったい何を食べたのかしらね。」
「何でもいつもどおり餌を食べた後、急に具合が悪くなったようです。」
「ペロの面倒を見ているのはサンディよね。大丈夫かしら……」
ちょっと白々しいとも思ったけど十分自然な演技だろう。
「サンディさんというのはお友達ですか?」
「え、ええ。友達よ。」
確かに友達だった。でも友達だから許せないこともあるのよ。
「サンディさんは町長の怒りを買って地下の納屋に入れられてしまったそうですよ。」

「町長はペロを大切にしていたから何か罰を与えるつもりかもね。」
「……まさか絞首刑と言うことはないでしょうね。」
「コウシュケイ?」
「ああ、私のところでは死刑は首をくくるものと決まっているんですよ。」
「なんだか残酷ね。」
「すみません。もちろんサンディさんはそんなことにならないでしょう。」
さすがにあの町長でもそこまでするわけがない。
そんな会話を交わしたあと、私は自分の部屋に戻った。

48 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/05/14(水) 00:52:04 ID:+RBulQR60
町の中は事件の話で持ちきりのようだった。
「うっふっふっ。サンディは 地下の納屋に閉じこめられたし……」
私の狙い通りね。
「これで邪魔者はいなくなったわ。もうジョセフは私のものよ。」
計画がうまくいっていることに私は部屋で悦に入っていた。
サンディがあんなことになって落ち込んでいるジョセフを私が優しい声をかける。
そうすればジョセフは私になびくはずだ。
すぐには難しいかもしれないがもう邪魔者はいない。
ゆっくり時間をかけて落とせばいい。

コンコン。

「誰!」
突然のノックに私は思わず大きな声を上げた。
「驚かせてすみません。」
ケージさんだった。
まさか今の台詞聞かれていないでしょうね。

「何の用かしら?」
「アマンダさんはサンディさんのお友達ですから伝えておいたほうがいいと思いまして。」
なにやらもったいぶったような言い回しだ。
「この事件についておかしなところがあるのですよ。」
「事件ってサンディがペロに毒を盛った事件よね。」
「いえ、まだサンディさんがやったと決まったわけではありませんよ。」
何を言い出すのかしらこの男は。
「ですから少し調査をしてみたいと思っているんです。」
調査? この男いったい何をしようというのかしら……

―続く―

49 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/14(水) 02:38:03 ID:w5Mvdrti0
乙でした
古畑風?

50 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/14(水) 03:11:59 ID:8ouNigOt0
乙です。
確かにアマンダさん、いろいろと挙動不審なことをおっしゃってますね。
事件のことを詳しい話を聞く前にやたらよく知っているようですし。
今後の展開が楽しみです。

51 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/14(水) 08:42:08 ID:H0OMOp7m0
コロンボも古畑も犯人側に感情移入しちゃうんだよね〜

作者さん乙!続きの捜査篇に期待

52 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 11:39:56 ID:62m6t0P+O


53 : ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 21:00:55 ID:+enQABRA0
Rです。10時くらいから投下開始します。
慣れてない代替機を使っての投下なので、少々手間取るかもしれません。
ご了承ください。

54 :Stage.15 hjmn [1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:07:06 ID:DFY+M6xr0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。今日は僕の方、ゲームサイドですね。では前回のおさらいです。
   レイさんとランシールの試験に挑んだ僕は、魔王さんと話をする機会がありました。
   そこでこのゲーム世界には『未来』が無いということを知らされます。
   僕なりにちょっと考えがあったんで、勇者試験は土壇場でレイさんに譲りました」
アルス「その後こいつから俺に電話がかかってきて、俺の過去を話したら、なんか散々言われました」
タツミ「別に間違ったことは言ってないだろ? それではサンクスコールです」

アルス「>>371様、やりこんでるねぇ。同じドラクエ3の主人公としては嬉しいっす。
   こないだの雑談でも言ったけど、まったく気にする必要ないぜ」
タツミ「>>372様、重たい空気のままで終わりたくなかったので、ちょっと構成を変えました。たまには新鮮でしょ?」
アルス「>>373様、バラモスなぁ……あいつもループしてるうちになんか悟ったのかもな」
タツミ「>>374様も周回プレイ大丈夫ですよ。
   でも、僕も名前や性別を変えてプレイしてたらアルスもループしてなかったのかな?」
アルス「記憶を残したまま別人として繰り返されただけじゃないのか、>>374様の考察のとおりに」
タツミ「やっぱりそうか。>>376様、バラモスさんの株、急上昇だね。
   僕もちょっと話したけど、なんか魔王って気がしなかったな」
アルス「>>373様、タツミの過去って、俺が『夢』で見てたのとどう違うんだろうな。
   しかしあの正論ラッシュはいじめだよなぁ? いや正論だからなにも言えないが……」
タツミ「>>378様、↑こんなん言われてますけど、僕もなんとかしたいとは思ってます。一応」
アルス「一応ね」

55 :Stage.15 hjmn [2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:09:47 ID:DFY+M6xr0

タツミ「>>380様、あー……4の主人公さんは、ループしたら大変そうですよねー」
アルス「お前、3以外のドラクエは未プレイじゃなかったっけ?」
タツミ「だったんだけど、中の人もナンバリングは全部やってるので番外では把握してる設定で。
   >>381様、5の人だったらキツイですよね〜。もしも僕の親が5を買ってきてたら……」
アルス「入れ替わった時点で本体ごと叩き壊されてたかもなw
   >>382様、Stage.9.5のアナザーサイドで出てきた青年社長だっけ」
タツミ「383様のおっしゃる通り、5って親子三代の壮大な物語ですからね」
アルス「>>384様、5以降は『勇者≠主人公』だもんな。6、7は職業だし。8もはっきりしないし」

タツミ「次は雑談のサンクスコール……なんですけど」
アルス「うちの作者が余計なことを書いてしまって、変に心配かけてすんませんした」
タツミ「詳しくは避難所で。>>595様、>>596様、ご心配おかけいたしました。今は元気ですよ〜」
アルス「>>594様、ご支援サンクスっ。このシリーズはサンクスコールの他に、
   たまに雑談や外伝が入るんだ。まとめて『番外』と言ってます」
タツミ「>>597様、DSのリメ発売、待ち遠しいですよね。リプレイ楽しんでください」

アルス「以上かな? たくさんのレスありがとさん!」
タツミ「いつも本当に励みになってます。今後もよろしくお願いしますっ」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』


【Stage.15 喧嘩と恋とエトセトラ(前編)】
 ゲームサイド [1]〜[10]

56 :Stage.15 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:14:02 ID:DFY+M6xr0
Prev(前スレ) >>337-368 (Game-Side Prev(前スレ) >>284-315)
 ----------------- Game-Side -----------------

「僕のMP、今のでどれくらい減ったのかな」
 現実の通話料に換算すると、けっこう減っちゃったかも。これ、もし最近のサービスを
利用してたらタダだったりしたんだろうか。思い出にこだわらないでさっさと新しい携帯
に機種変しておけば良かったかもしれない。

 窓の外に目をやった。今夜は満月。石畳の歩道と池を挟んだはす向かいの三角屋根から、
月明かりに照らされて怪しげな煙が立ちのぼっているのが見える。
 ここはレーベの村。試験を終えてランシールを出立した僕たちは、アリアハンに戻る前
にこの村に泊まることにした。ここらでちょっと骨休みしようという僕の提案による。最
初はアリアハンに直帰する予定だったのだが、魔王討伐中の勇者一行が地元をうろうろす
るのも気まずいし勝手のわからない街では落ち着けないから、レーベあたりが妥当じゃな
いか――という僕の言い分に、みんなも賛成した。
 それは建前で、なんのことはない。サヤお母さんに「絶対に合格するから」なんて大口
たたいちゃった手前、顔を出しづらいだけなのだが。

「ん、どうしたのヘニョ」
 ベッドに座っている僕の隣にヘニョがやってきた。なぜてやろうと手をのばしたら、思
い切ったようにピョンとひざに飛び乗ってきた。
 まん丸の目が僕を見上げている。なんだかまた心配されているようだ。
「さっきの電話かい? 大丈夫、別にケンカしてたんじゃないよ」

 しっかしあのバカ、よくもまあとんでもない勘違いをしてくれたもんだ。「三津原辰巳
のことはなんでも知ってる」とか言っておいて、まさかなにもわかっていなかったとは。
 父さんは単身赴任で? 母さんは僕に無関心? 友人やガールフレンドに囲まれてそれ
なりに楽しく暮らしてるって? はあ? 誰のことだよそれ?

 それねー、僕が思い描いていた『夢』なんですよ、アルセッドくん。
 アルスが同調(シンクロ)してたのは、現実の僕そのものじゃなくて、僕が「こうだったらい
いなぁ」と思い描いていた理想の自己像だったのだ。

57 :Stage.15 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:15:58 ID:DFY+M6xr0

 なにせ僕の場合、イメージ力が半端じゃないからね。僕のリアルな妄想を「現実」と勘
違いし、彼は「日本のごく平均的な高校生」と入れ替わったつもりでいたわけだ。ずいぶ
ん混乱したことだろう。

「そっか……知らなかったんだ」

 まあ、知らないならその方がいいんだけど。
 アルスのさっきの話を聞けば、僕の方がマシか?って気がしないでもないし。

 さてと、その辺の処理は後でやるとして――。
 レーベには明日いっぱい滞在する予定だ。全員フリーにしておいて、僕はその間にこっ
そり抜け出し、一人で王様のところに行こうと思っている。
 あれだけ言えば、アルスも大人しく言うことを聞いてくれるだろう。向こうの時間で明
日の朝まで、最低でもあと数時間は、絶対にモニタリングさせてはならない。

   ◇

 翌日は抜けるような晴天だった。
「――というわけで、かなり綿密なプランの練り直しが必要なんだよ。一日部屋にこもる
から、悪いんだけどみんな邪魔しないでね」
「了解ッス!」
 即答で敬礼するサミエルの後ろで、エリスとロダムは微妙な表情を浮かべている。
 エリスはわかりやすい。試験に落ちた僕をずっと気にかけているようだから、「今この
人を一人にして大丈夫かしら」とか、女性らしい心配をしているんだろう。うんうん、君
は本当に優しいね。
 ロダムはちょっと怖い。どこまで読まれてるのか……この人は勘がいいからな。

 そのロダム本人がふうっと息を吐いたことで、ことは進んだ。
「わかりました。では我々も一時解散ということで。私は博士を訪ねておりますので、な
にかございましたら、そちらへいらしてください」

58 :Stage.15 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:18:05 ID:DFY+M6xr0

 一礼して退室するロダム。昨日の夕食の時に、魔法の玉を作っているおじいちゃんが、
もとはアリアハンお抱えの発明家だと聞いた。若い頃ロダムも少し勉強を見てもらったこ
とがあるそうだ。
「んじゃ俺は、誘(イザナ)いの洞窟まで行ってます。たまにゃ顔見せろってうるさいんスよ」
 誘いの洞窟にいるおじいちゃんはサミエルの親戚の人なんだって。人口密度の低いアリ
アハンでは、たいていどっかこっかで血が繋がっているんだろう。
「では、私はアイテムの補充をしておきます。道具屋さんにいますから」
 エリスも渋々部屋を出ていった。宿には僕だけが残された。


 廊下に人の気配がなくなったことを確認し、ドアに鍵をかける。ベッドの下から隠して
いたキメラの翼を引っ張り出そうとしたら、なにか引っかかった。
「こらヘニョ、なにやってんの」
 キメラの翼に噛みついて放さないヘニョごと引っ張り出す。置いていかれると本能的に
理解しているのだろう。行くなと目が訴えている。
「いい子だから放して、ね? 別に大したことじゃない。すぐ戻ってくるから」
 現在の膠着した状態を打開するためには必要なことだ。
 半透明のとんがりをこちょこちょしてやると、ヘニョは諦めたように口を開けた。
「ありがと。じゃ、ちょっと行ってくるね」
 僕は窓を乗り越えて外に飛び降りた。二階の高さから地面に落ちるまでの間に、素早く
アリアハンに飛ぶ。

 アルスの実家の前を避け、僕はルイーダの酒場の横から店の裏へ廻り、城の外堀に沿っ
て歩いた。
 城門の近くまで来ると、僕に気付いた若い番兵さんがにこやかに声をかけてきた。
「ジュニアじゃないか、どうしたんだい?」
 たまにアルスのことを「ジュニア」と呼ぶ人がいる。僕はどうも好きじゃないんだが、
今はかまわずに用件だけを告げた。
「王様に会いたいんだけど、取り次いでもらえるかな」
 番兵さんは少し不思議そうな顔をしつつ、奥の詰め所に向かった。そうか、アルスは顔
パスで入城できるんだっけか。

59 :Stage.15 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:19:41 ID:DFY+M6xr0

 しばらくしてさっきの番兵さんが二人の兵士を連れて出てきた。おろおろしている番兵
さんに構わず、厳めしい顔をした兵士たちは両サイドから僕の腕をグイとつかんだ。
「まさか自ら戻るとはな」
 ドスの効いた声だが、なんとなく困惑している。僕がニセ勇者だということと例の「約
束」についてはトップシークレットのはずだから、たぶんこの兵士たちは、サヤさんと王
様が密会していたあの夜、王様の警護に当たっていたSPあたりだろう。
「追っ手を放つ準備をしていたが、手間が省けた」
 どういたしまして。税金を無駄遣いさせなくて良かったよ。

 すぐに牢屋に連行されるかと思っていたのだが、普通に謁見室に通された。
 この部屋の主役である国王はむっつりと押し黙り、ランシールの地下にあった石の人面
より無表情だ。重苦しい雰囲気の中、王様ではなくそばに控えていた大臣が口を開いた。
「……なにか申し開きはあるか」
「すみません」僕はぴょこんと頭を下げた。「落ちました」
 大臣が目を丸くする。広い謁見室は再び静まり返った。
「他に言うことはないのか!」
 たまりかねたように王様が怒鳴った。大臣が止める間もなくづかづか近づいてきて、僕
の襟首をつかんで無理やり引き立たせる。意外と背が高い人で、僕は爪先立ちになった。
王侯貴族なんてみんな貧弱だと思ってたけど、かなりの腕力だ。大勇者オルテガの親友だ
けあって、この人も実はそこらの冒険者より腕が立つんじゃなかろうか。
 なんて考えている僕に、王様は怒声を重ねる。
「この痴れ者が、ようもヌケヌケと現れたものだ! 貴様、よもや自分が吐いた言を忘れ
ておるのではあるまいな?」
「忘れてませんよ。手でも足でも好きに持っていけと言いました。――でも」
 僕は正面から王様を見つめた。
「言い訳はありませんが、ひとつ確認していいですか?」
 王様が手を離した。僕は再び膝を着くことはせず、立ったまま続けた。
 あの不条理な「約束」についての確認を。

60 :Stage.15 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:21:11 ID:DFY+M6xr0

「僕も当時は誤解してたんですけど、今回の本試験に落ちたからって『一級討伐士』の資
格が永久剥奪されるわけじゃないんですね。現地で違う討伐士の方から聞いたんですが、
一時的に特典が利用できなくなるだけで、残り9ヶ月で本試験に合格すればいいんだと。
なんであのとき教えてくれなかったんですか。っていうか、試験に落ちたら勇者じゃなく
なるという王様の言葉、あれは嘘だったってことですよね?」
「……」
 僕の言葉に周囲の空気がわずかに波立った。
「教えてくれたのはサマンオサの一級討伐士の方でしたが、その人と僕が競争になったの
は、王様のご指示だったんでしょうか」
「余ではない。退魔機構の議会が決めたことだ」
「やっぱりご存知だったんですね」
 王様の唇の端がピクリと動いた。
「……なにが言いたい」
「いえ。ずいぶん嫌われたものだなーと、そう思いまして」
 世界退魔機構の創設者であるアリアハン国王に、僕とレイさんの試験が重なったことは
すぐに知らされたはずだ。「面白そうだから競争させろ」なんて超法規的措置(ムチャクチャ)
を黙認し、この瞬間まで触れなかったんだから、王様もなかなか意地が悪い。
 別にみんながみんな、僕の味方をしてくれるなんて楽観してるわけではない。
 ただ――
「正直に言わせてもらいます。僕はあなたの干渉がとても面倒だ。これ以上僕にかまって
欲しくない」

「無礼者が!」
 脇にいた兵士が僕を絨毯に引き倒した。やり方を心得ているというか、顔面からいっ
ちゃって痛いのなんの。毛足の長い高級絨毯だというのに、口の中に血の味がする。落ち
着きなさいって君たち。
「ケン…カを売りたい、わけじゃない。前にも言ったように、僕はアルスを元の鞘に戻す
ことしか考えてないし。だから、王様」
 目の前のピカピカに磨かれた靴先に、僕は血に濡れた唇を押し付けてやった。
「好きなとこ持っていっていいんで……それで手を打ちませんか? サヤさんにも余計な
ことは伝えなくて結構ですから」

61 :Stage.15 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:23:11 ID:DFY+M6xr0

 このときの王様がどんな顔をしてるか見てやりたかったんだけど、僕はすぐに兵士に反
対方向に引きずられ強引に退室させられたので、それは叶わなかった。

   ◇

 今度こそ地下牢にブチ込まれた。さて王様はどうする気だろうか。
 実際問題、僕にはなにひとつ「罪」はない。
 王様<神様 という図式が成り立つこの世界で、ルビス勅命で『アルス』の名を継いだ
僕に詐称罪はあたらない。それはこの国を出立する前に目を通したアリアハン司法全書で
確認している(安易にルビスの遣いを称してるわけじゃないのだよ)。まあアルス本人か
らのご指名だとストレートに言えちゃえばいいんだけど、そうはしたくないからちょっと
ややこしいことになってるんだけどね。
 んで焦点は上述の真偽になるわけだが……ぶっちゃけルビスの遣いなんてデタラメなん
だけど、真実か偽りかを立証するにも、これまでの活動記録を洗うしかないわけで。この
時点で僕のしてきたことに問題は無いはずだ。
 だがここで、僕と王様はこれらとは無関係に「約束」を交わしている。
 その始末の付け方によって、僕の身の振り方も決まる。

「いて――」
 口の中が気持ち悪い。初ホイミを試そうかと思ったが、今後のことを考えるとMPの無
駄遣いは避けたいのでやめた。
 石作りの素っ気無い牢の中はランシールの地下を思い出す。自然とレイさんのことも。
 あの人は別れの間際まで僕のことをずいぶん気にかけていた。世界退魔機構へも、『ど
ちらが合格してもおかしくない接戦だった』と力説していたとか。

「やはり私は、この試験を譲られるべきではなかったように思うよ」
 出発前に「少し話さないか」と呼び出された神殿の裏。大理石の柱にすらっとした長身
を寄りかからせているレイさんは、絵画のように様になっていた。
「譲ったわけじゃないよ、僕が最後にハズレを引いただけ。内容的には間違いなくあなた
の方に軍配が上がると思うしね。なるようになったってことだよ」

62 :Stage.15 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:24:18 ID:DFY+M6xr0

 僕はちょっと大げさな動作で肩をすくめた。レイさんは黙っている。澄んだグレイの瞳
が、なにか物思いにふけるようにじっと地面を見つめている。
 なんとなく落ち着かなくて、ちらちらと横目でうかがっていると、ふいにレイさんが顔
を上げた。
「私はね、君のことが心配なんだよ、青少年。君はいつも、自分のことを二の次にしてい
る気がする。最初に会ったときからね」
 反論を封じるようにぴっと人差し指を立てたレイさんは、一瞬あたりをうかがうように
すると、僕の耳元に口を寄せてきた。
「私は一度会った人間は忘れない。君は『アルス』じゃないだろう?」
「え? ええと……」
 内心焦っている僕に、レイさんは笑みを浮かべた。
「安心したまえ、誰にも言う気はないよ。君が誰だろうと、そんなのはどうでもいい。た
だ私は――『君』が心配なんだ」
 真っ直ぐに僕を見つめて繰り返すレイさんの言葉は、胸に響いた。さすが『勇者』って
いうのかな。すべてを打ち明けて、寄りかかってしまいたくなるような。
 でも、今この人に言うべきことじゃない。僕には僕の、レイさんにはレイさんの役割が
ある。
「他に隠してることや困ってることはないのかい? 言ってくれ、力になるから」
 僕は黙って首を振った。レイさんはもどかしいような表情を浮かべたが、汲み取ってく
れたのだろう。
「わかったよ。じゃあせめて、本当の名前くらいは教えてくれないか」
「タツミ。変わってるだろ?」
「ふむ、タツミか。珍しいが、いい名前だ」
 神殿の表の方から、サミエルが僕を呼んでいる声が聞こえた。出発準備が整ったらしい。
「そろそろ戻るか。ま、なにかあったら連絡してくれたまえ。退魔機構に問い合わせれば
すぐわかるようにしておくから」
「うん、ありがとうレイさん」
 歩き出した東の二代目の後姿に、一人っ子の僕にもし上がいたら、レイさんのような人が
いいな、と思った。
 

63 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 22:28:50 ID:1qV9C+kH0
連投規制って今もあるか?支援

64 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 22:32:19 ID:DSehGOcU0
支援!

65 :Stage.15 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:34:10 ID:DFY+M6xr0

 ……牢獄はしんと静まり返っている。
 ここにいる人間の気配のすべてが、僕に集中しているのがわかる。事情を知っているの
は牢番だけで、囚人たちは「なぜ勇者が投獄されるんだ?」と興味津々の体で様子を見て
いる状態だ。
 やがて入り口が騒がしくなり、とうとう声がかかった。王様がお呼びだそうだ。手枷を
かまされた時点で下った審判を悟ったが、僕はいっさい表情には出さなかった。

   ◇

 連れて行かれたのは、ぐるっと高い石塀に囲まれた直径30メートルくらいの円形の広
場だった。赤茶色の砂をならした地面。ど真ん中にぽつんと設置されている、腰の高さく
らいの平らな石の台。他にはなにもない殺風景な場所だ。
 真っ青な空に目を細める。今日は本当に天気がいい。

 正面の上段に王様が立っていた。逆光でよく見えないが、先刻より小さくなってしまっ
たように思えた。
「もう一度聞く」
 どこか疲れた声で、王様は以前と同じ質問を投げてきた。
「アルセッドはどこにいる」
「言えません」
 僕の答えも以前と変わらない。

 たっぷり間を置いて。

「……利き腕はどっちだ」
「右、かなぁ?」
 実は両利きなのでどっちでもいいんだけど、そんなんで悩ませても時間の無駄なので、
僕はそう答えておいた。普通に応答している僕に、王様はさらに疲れた様子で、
「お前はなにを考えておるのだ」
 と大きくため息をついた。
 

66 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 22:35:00 ID:DSehGOcU0
支援

67 :Stage.15 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:38:28 ID:DFY+M6xr0

 僕が考えてることなんて、大したことじゃないですよ、全然。
 これは単なる…………嫌がらせ。

 そう、嫌がらせだ。
 王様の性格を考えたら悩んだと思うよ、この数時間。もう禿げ上がるくらいね。
 だって世界的に慕われている大勇者オルテガの親友だったんだろ? カッとなりやすい
性質(タチ)ではあるけど、冠を盗まれたどこぞの国王みたいに、そこまでテキトーな人間と
は思えない。サヤお母さんも「本当は優しい」みたいなこと言ってたし。
 そんな彼が嘘をついた。その場の勢いだったとしても、伝えるべき真実を捻じ曲げて、
僕を追い込んだ。
 しかし間違った前提で交わされた「約束」でも、国王直々に申し渡したことをおいそれ
と撤回することはできない。最初から恩赦も考慮にあっただろうが、僕が終始こんな調子
だからね。臣下は全員「容赦するな」って異口同音だったろう。
 だから彼はもう、身動きが取れない。彼が決められるのは刑の執行後のことだけだ。
この「約束」には、その後のことは含まれていないから。

 この世界で『勇者』の肩書きを背負っていくためには、世界退魔機構と無関係ではいら
れない。仮に今回の試験で合格していたとしても、僕がアルスのことを吐かない限り、王
様からいつまでも陰険な妨害を受けるのは目に見えている。
 だからここできっぱり決別を叩きつけてやるために、僕はわざと試験に落ちた。さすが
に決心までは時間がかかったが、アルスの話を聞けば、甘いことも言ってられない。
 王様にはご自分の不実にモヤモヤしていただきながら、今後の不干渉を取り付けさせて
もらおう。

 これが僕の、喧嘩の買い方だ。
 

68 :Stage.15 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:39:48 ID:DFY+M6xr0

 丸く切り取られた青空を、一羽の鳶が横切っていった。その姿が見えなくなるのを見計
らったように、王様がつい、と片手を挙げた。
 手枷が外された。目隠しをされ、石の台にうつぶせに肩を押し付けれた。
 高々と罪状が読み上げられる。小難しい用語を並べているが、要約すると大事な情報を
隠匿したので罰を与えて国外放逐にするとか、そんな内容だった。だいたい予想通りのと
ころに落ち着いたな。

 普通、こういうときに思い浮かぶのはユリコだったりエリスだったり、せめてアルスと
かロダムとかサミエルとか、そのあたりだろう。
 なのに、僕が真っ先に脳裏に描いたのは、レイさんだった。
 おいおい大丈夫かよ僕、と自分に突っ込んだ瞬間。

 それが――来た。
 
 

69 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 22:42:39 ID:l6m+q2Sk0
支援

70 :Stage.15 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/16(金) 22:42:51 ID:DFY+M6xr0
本日はここまでです。
やっぱり手間取りました;
ご支援ありがとうございました。

71 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 22:52:18 ID:A1+p1/Sv0
おっつー
いいところで区切るとは続きが気になるではないか
タツミはどうなるんだろ?

72 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/16(金) 23:04:08 ID:1qV9C+kH0
>>70
投下乙!
ちょwこんな気になるとこで終わるなよwww

73 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/17(土) 02:42:42 ID:aYnTJyRVO
ここでまさかのパンツ登場

74 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/17(土) 02:48:46 ID:ddNMrdCYO
タツミ早まるなww
頭いいくせに一旦キレると見境無く突っ走るタイプだなww

75 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/17(土) 11:14:21 ID:CAINLQwn0
ここで切れるなんてwwwwwwwwww
カンダタより暴れそうだwwww

76 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/17(土) 21:27:07 ID:H4GWnXqM0
乙しかし引きがテラ卑怯wwwww

PC早く治るといいな

77 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 04:25:07 ID:4Ej8WwJC0
にょわ〜^。気になって寝られないよ〜〜(wwwwww

78 :R ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 19:32:19 ID:446yyUOM0
Rです。勢いで書きあがったので連投いいですか?
10時ごろから投下予定。カブる場合は避難所にご連絡を。
本日はメ欄もチェックで。

79 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 19:53:59 ID:Q/kAjOPyO
ダメと答える人がいるだろうか

80 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 19:55:00 ID:SmxGsr090
続きが気になっててモヤモヤしてたから嬉しいw

81 :Stage.16 hjmn ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:08:45 ID:bvU2J8NF0

アルス「ちーっす」
タツミ「どうもー。なんか僕ってばピーンチ! だけどまぁそういうこともあるさね」
アルス「あるさね、じゃねぇ。結構イチ大事だろ、マジでなに考えてんだお前は?」
タツミ「さあ? たまに自分でもよくわかんないんだよね。ではサンクスコールでーす」

タツミ「>>71様、僕どうなるんでしょうね。平静そうにしてますが実は心臓バクバクいってます」
アルス「本当かよ? >>72様、ちょっとわざとらしい切り方だとは思ったんだけど、
   投下当日もあそこまでしか書いてなかったんだ。ぎりぎりまで次の展開を悩んでてさ」
タツミ「じゃあ>>73様の言う通り、このあとパンツさんが登場する可能性もアリってワケ!?」
アルス「あるあrwwwねーよwwwww」
タツミ「それ(・∀・)イイ! 実は僕、ひそかに総長さんとこのパンツさん大ファンなんだっ」
アルス「はぁ〜〜!!!???」
タツミ「名物鬼浜会議のボケボケ〜な発言とか、いつもお腹空かせてたりとか、なんかイイよねっ」
アルス「わからねぇ!! そこは普通に女勇者たんに萌えておこうよ!ねえ!!??」
タツミ「もちろん彼女もいいんだけど、『3の女勇者たん』と聞くと、なんかこう恐怖心が」
アルス「例のベホマ〜☆な彼女か。それにしたって……。
   >>74様、俺のプレイヤーはキレてなくてもどっか変な方向に突っ走ってる気がしますorz」
タツミ「なんだよ失礼な。>>75様、大丈夫です、うちにはカンダタなんてヤツぁいませんので、
   きっとパンツさんが大暴れしてくれます!」
アルス「いやカンダタいるから。パンツさんは総長さんとこの人だから勝手に遠征させちゃダメ。
   総長さんホントすんませんマジすんません、コイツにはよく言って聞かせますんで」
タツミ「そういえばアルスの性格判断って『くろうにん』だったよね?」
アルス「お前が苦労させてんだ! ……>>76様、新しいPCが来る前に俺が壊れそうです。
   そして>>77様、俺は別な意味で今後は安眠できなさそうな悪寒がします」


アルス・タツミ『それでは本編スタートです!』

【Stage.16 喧嘩と恋とエトセトラ(後編)】
 続・ゲームサイド [1]〜[11]

82 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:11:45 ID:pvXk49cq0
私怨

83 :Stage.16 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:13:00 ID:bvU2J8NF0
 Game-Side Prev >>56-68
 ----------------- Game-Side -----------------

 「それ」は――相変わらずの勢いだった。

 入り口付近で制止しようとしているらしい兵士たちの情けない悲鳴が聞こえてくる。僕
の肩を掴んでいた執行役も加勢しに行ったので、起き上がって目隠しを外すと、陽光を鮮
やかに反射する黒い甲冑の戦士が、兵士の一人を軽々と投げ飛ばしていた。

 ……嘘だろオイ。マジで? このタイミングで来ちゃうの?
 いくら勇者だからってアンタ……デキすぎじゃね?

「これはどういうことだ!」
 レイさんの澄んだアルトの声が場を一喝する。後ろにはエリスたちの姿もあった。
「東の!?」
「いったい彼はなんの罪で裁かれているのだ? 誰にとっても無益だろう、これは!」
 出会い頭に世にも正論ブチかまされて、王様もたじたじになっている。引け目があるか
らなおさらだ。
「なぜそなたが……?」
 王様が逆に問い返すと、レイさんはふんと鼻を鳴らした。
「世界退魔機構が私と彼の競争を取り決めたときから、ずっと疑問だったんだ。そんな埒
外を、『公明』と名高いあなたが理由も無く看過するはずがない。その上、彼がアルセッ
ド=D=ランバート本人ではないと判明して、もしやと思ってね」
 たっぷり嫌味のこもったセリフを投げつけてから、僕には柔らかく笑いかける。
「決め手は君がわざと試験を譲ったことだがね、青少年。神殿の人間に確認したら、最後
の二つの宝箱の中身を変えることなどないと言っていたよ。まんまと騙されたな」
 そこチェックされたかー。その場の思いつきだったし、やはり無理があったかな。
「勇者様! あなたはどうしてこう、全部ひとりで片付けようとするんですか!」
 我慢できなくなったようにエリスが駆け寄ってきた。
「最初から私たちを頼ってくださったら、もっといい解決方法がいくらだって、い、いく
らだって……もう! もうこのバカ勇者! バカ! バカバカ!」
「うわわ、ごめん泣かないでエリスっ。僕もまさかこんな――いったぁ!」

84 :Stage.16 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:15:24 ID:bvU2J8NF0
 今度はスパコーンと頭を叩かれた。
「ロダム、杖は痛いよ……」
「じゅーぶん加減しておりますよ。まったく、サミエルが忠義をのけて明かしてくれなけ
れば、我々は知らぬ間に後悔させられるところでしたぞ?」
「宿を出たフリしてすぐ戻ったってのに、部屋はもぬけの殻で俺も焦ったッスよ」
 ええっ? 3人のうち誰かが王様から見張りを命じられてるのは察していたが。
「もしかして僕の『監視役』って……」
「俺ッス。試験に落ちたって報告した途端、逃げないように取り押さえろって指令が来て
びっくりッスよ。本人に戻る意思があるからって、様子見に徹してたんスけど」
 サミエルは悪びれもせずうなずいた。てっきりロダムが監視役だと思ってたけど、サミ
サミってば意外と役者?
「でも俺はありのままのことしか伝えてないッスよ。『アリアハンの一級討伐士として相
応しい行動をしている』って。なのに、たかが試験に落ちたくらいでなんスかこれ。失礼
ながら王様、俺もうこの役、降ろさせてもらいますね」
 最後はキッと主君を睨みつけるサミエル。
「わ、わきまえろレイトルフ!」
 目を剥く王様に、サミエルは涼しい顔をしている。その隣にエリスとロダムが「自分も
同意だ」とばかり無言で並ぶ。クビ確定、ヘタをすれば反逆罪で逮捕される可能性だって
あるのに……。

「さて、私も少し格好つけるとしようか」
 うるうるしている僕の肩をぽんと叩いて、レイさんが一歩踏み出した。優雅な動作で膝
を着き、「騎士の礼」を取る。
「王よ。ルビス勅命という彼の言葉が信じられぬなら、私が神命に誓って保証する」
 堂々と宣言する一級討伐士に、王様は息を呑んだ。しかも――、
「どうしても許されないなら、代わりに私の腕をもげばいい」
「なに言ってんのレイさん!?」
 これには王様どころか、エリスたちや周りで成り行きを見守っている兵士たちも驚いた。
当たり前だ、他国の『勇者』が簡単に口にしていいことじゃない。
「レイ=サイモンともあろう者が、この紛い物ごときになぜ……」
「そうだよ! 無関係のあなたがそこまでする義理はないでしょ?」

85 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:16:21 ID:pvXk49cq0
四円

86 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:16:31 ID:SmxGsr090
支援

87 :Stage.16 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:18:30 ID:bvU2J8NF0

 今回ばかりは僕も王様と同意見だ。慌ててレイさんの腕を引っ張って、撤回してくれと
訴えた。

 するとレイさん。ちょっと首をかしげると、僕の両肩に手を置いて、静かに告げた。
「無関係なんて言わないでくれ。惚れた弱みというものだよ、青少年」

 ……はい?

 ブッ飛んだセリフを僕の脳みそが理解する前に、強く抱きしめられた。
「んんっ――!?」
 唇に柔らかい感触が重ねられる。最初こそジタバタしたが、剣一本でモンスターの大群
を蹴散らすような相手になんの抵抗ができようか。
「……んん…ん……」
 しかもあれだ。大人のチューってやつですか? 何度も角度を変えてついばまれている
うちに、そのせいなのか単に酸素不足なのか、頭がボーっとなってきた。

「ん……っふ…ぁ…」
 ようやく解放されたときには、ろくに立っていられなくて。しなやかな長身にすがりつ
くように身体を預けたまま、ぼんやりしている頭を振る。
「すまない。でも好きなんだ。初めて逢った時から、ずっと」
 耳元で熱っぽく囁かれ、のろのろと視線を上げると、端正な顔が間近で微笑んでいた。

「レイさん……僕は……」
 どうしよう。急にそんなこと言われても。
 困った僕が振り返ると。
 



 全員が (OдO) という顔で固まっていた。
 

88 :Stage.16 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:21:46 ID:bvU2J8NF0

「いやぁああ!! うちの勇者様にナニしてくれやがってんのこの人ぉ!?」
「こンの変態が勇者様から離れろぉ! ってスリスリするなぁあ!!」
「だってカワイイんだもん。あ、こら返せ」
 サミエルが僕の服をガシッとつかみ、レイさんから一気に10メートルくらいズザザザッ
と引き離した。
「大丈夫ですか勇者様!? ああ可哀相に、びっくりなさったでしょう」
 エリスなんか、まるで交通事故に遭いかけた幼い我が子を心配する母親のようだ。さっ
き腕が切られかけていたときより激しくないか? 仲間たちのものすごい剣幕に、僕もど
う反応していいのやら。
「えっと、そ、そりゃびっくりしたけど。変態は言いすぎじゃあ……」
「勇者様!? まままままさか」
「本気ッスか!?」
 サーッと青ざめる二人に、ロダムだけはいつもの穏やかな口調で、
「落ち着きなさいエリス、サミエル。混乱してはなりません。ほら、衆道も武士の嗜みと
申しますし??」
「武士ってなんスかー!? あんたが一番混乱しとるわ!」 
 アリアハン第二近衛隊副長に蹴飛ばされて転がる宮廷司祭殿。散々な言われようにも関
わらず、レイさんは楽しそうに笑っている。
「ははは、厳しいね。私はそんなに不釣合いかな?」
「うがー!! まだ言うか! 叩っ斬るぞ変態勇者!」
 ちょっ、そりゃいくらなんでも言いすぎだ。
「やめなってサミエル! た、確かに僕とレイさんは……」
 世間一般では受け入れられないのはわかるよ。でも、
「一回りくらいの年の差ならアリだとおm」
「「「そこじゃNEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」」」
 なにそのツッコミ。
「いや俺らだって、勇者様がその気だってんなら応援してやりたいッスよ?」
「でもここはグッとこらえてください。流されてはいけませんっ」
 半泣きで必死に説得する仲間たちは、まるで身分違いの恋をした主君を必死に諌める臣
下のようなぁ〜ってもううまい比喩が見つかんねーよ、なんなんださっきから! お前ら
偏見持ちすぎだっつーの!

89 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:23:52 ID:pvXk49cq0
しえん

90 :Stage.16 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:24:52 ID:bvU2J8NF0

「エリスもサミエルもいい加減にしろよ、あんまり失礼だろ!」
「ですが殿方同士の恋愛なんて宿スレ的にブッチぎりでアウアウじゃないですかっ。巣に
帰れって大荒れするに決まってますでしょう!?」
「確かにビジュアル的にはちょいヤバかもだけど、どうせテキスト表現なんだから設定が
女性ならセフセフじゃないのかよ!?」
「そりゃこいつが女なら……………………………………え?」

 全員がいっせいにレイさんを振り返った。
「「「お、女〜!?」」」

 本人は腹を抱えてゲラゲラ笑い転げている。
「アーハハハハハ! か、彼らを責めてはいけないよ、青少年。君のその鋭い観察眼が、
他の人間にも備わっていると思わないほうがいい」

   ◇

 なんと、みんなレイさんのこと本当に男だと思い込んでいたらしい。
 おいおい、普通わかるだろ? 注射とかで改造してるわけじゃなし、どうしたって違和
感あるじゃん。そんなのマンガとかゲームの話だけで

 ……ゲームだった orz

「いつから気付いてらっしゃったんですか?」
 まだ半信半疑のような口調でエリスが聞いてくる。
「最初から。僕はてっきり公然の秘密なんだと思ってたよ。だからレイさんのことも一度
も『彼』とか『彼女』って言ったことないし」
 僕の言葉に3人は「えっ?」と顔を見合わせた。
「前スレ! じゃない、前の前のスレだっけ?」
「とっくにdat落ちしてるわよ。まとめサイトまとめサイト!」
 ちなみにレイさんの初登場はStage.11の中盤からですが。

91 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:26:16 ID:SmxGsr090
支援

92 :Stage.16 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:28:27 ID:bvU2J8NF0

「本当だ……マジで言ってないッスね」
「そのせいでたまに文章が不自然になってますな」
 うるさい、仕方ないじゃないか、僕だって気を遣ってたんだ。

 原作ではレイさんにあたるNPC(ノンプレイヤー・キャラクター)は、はっきりと「サイモンの息子」
と言っている。にも関わらず女性だったから「また設定がズレてるなー」と思ったのだ。
最初はこんなハンサムなおねーさまが存在していいのかって驚いたもんだよ。
 聞けば本名を伏せてるとか、有名人っぽい苦労してるらしいし、僕も曖昧にしておいた
方がいいだろうと判断したんだけどね。

 こみ上げる笑いを抑えつつ、その「彼女」はカードサイズの金色のプレートを取り出し
た。アルスも持っていた、一級討伐士の身分証だ。
「いちいち説明するのも面倒で、今は男で通すようにしているが。この通り世界退魔機構
には『レイチェル=サイモン(女)』で登録されているよ」
 決定的な証拠を見せられ、サミエルとロダムはようやく安心したようにうなずきあった。
エリスはまだジトーっとレイさんを睨んでいるが、不機嫌な彼女をよそに、サミエルは当
然のごとく次の矛先をこっちに向けてきた。
「そうなると、勇者様はどうなんスか〜?」
 ニマニマしつつ僕をヒジで小突く。ロダムも同じ顔だ。
「しっかり見せつけられてしまいましたしなぁ。おや勇者様、耳まで真っ赤ですぞ?」
「あ、当たり前だっつーの……」
 さっきは照れる間もなく大騒ぎになったけど、僕だってまだ16なんだぞ、そこまで耐性
できとらんわい。

 でも返事はしないとな。マジでどうしよう。ったく、こういう色恋沙汰とか、ドラクエ
らしからぬ部分はやっぱり僕の担当らしい。
 正直、レイさんみたいに男顔負けのカッコイイおねーさまがお相手じゃ、どう考えても
恋人ってより弟かツバメがいいとこだ。僕だって男だぜ、そんな年上にいいように翻弄さ
れるなんて…………まあ…………悪くないかな……

93 :Stage.16 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:32:29 ID:bvU2J8NF0

「ぬぅあぁにを考えていらっしゃるんですか、勇者様ぁ?」
「もちろんどうお断りしたら角が立たないかなーってことだよははははは」
「当然ですわ。勇者様には重大な使命があるんですもの、女にうつつをぬかしてるヒマな
んざありませんわよねぇ?」
 にっこり。
 エリス怖いよ。
「あー、ということで……レイさんゴメンなさい」
 僕は腰から90度で頭を下げた。
 いやまあ、僕の年齢では不純異性交遊になるし、そうなるとやっぱり宿スレ的にヤバイ
気もするし、だからといって成熟した女性にずっとプラトニックでいてくれというのも酷
な話だし、僕だってアレがコレでソレだから、いろいろと……ねえ?

 レイさんは一瞬すごく切なそうな顔をしたが(本当にごめんなさーい!)、すぐに笑顔
になった。
「まあそうだろうな。いいさいいさ、悩ませてすまなかった」
 が、またもやとんでもないことを言い出した。
「でもせめて、しばらくは一緒に旅をさせてくれないかな?」
 え? つい身構えてしまった僕に、黒の剣士はひらひら手を振る。
「諦めは早い方だよ。信じてくれ、誓ってもう手は出さないから」
 途端にうちのパーティは祭り状態になった。
「信じられません! 絶対また勇者様になにかするに決まってるわ!」
 猛反対するエリスに、さっきまでの拒絶っぷりはどこへやら、女性と判明した途端すっ
かり肯定派に回ってしまったサミエルが反論する。
「そこは信じてやれよエリス、レイさんは嘘をつくような人じゃないだろ。それに東の二
代目が入ってくれりゃあ百人力だぜ。なあロダム」
「そうですな。先ほどのように勇者様個人に私的感情で近づかれては全体の士気に関わる
ので私も賛成しかねるが、あくまでメンバーとして加わっていただけるなら問題ないので
は。レイ殿は呪文についても造詣の深い方だ、我々も学ぶことが多いでしょうし」

94 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:35:51 ID:SmxGsr090
しえん

95 :Stage.16 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:37:18 ID:bvU2J8NF0

 中立だったロダムも今はサミエル側のようだ。確かにアレやコレやを置いとけば、純粋
な『戦力』としては桁外れだからな。
 仲間になだめられ、エリスは口を尖らせている。だが彼女も変に意固地になるような子
ではない。ギュッと目を閉じた後、レイさんに向き直った。
「あなたほどの実力者にご協力いただけるなら、我々の方こそ頭を下げるべきだと思いま
す。ですが申し上げた通り、勇者様は重大な使命を背負われています。ですから……その
妨げとなさらぬよう、それだけは気を付けてくださいね」
「もちろんだとも」
 わーっと歓声があがり、パチパチパチとサミエルとロダム、さらには成り行きを見守っ
ていた兵士さんたちも盛大な拍手を送る。
「素晴らしい。それでこそエリスですな」
「改めてよろしくッス、レイさん!」
「こちらこそ」
 あっという間に和気あいあいムードができあがり、「今夜は歓迎パーティーだ!」とか
はしゃいでいる。とりあえず一件落着のようだね。良かった良かった。

 ま、ただ一つ言いたいとすれば。
 僕の意見はまったく無視ですかそうですか。
「いいけどさー……」
 今後うちのパーティのリーダーは、間違いなくレイさんになるんだろうな。



96 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:39:46 ID:SmxGsr090
紫煙

97 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:41:03 ID:2Q8ycesi0
支援

98 :Stage.16 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:42:16 ID:bvU2J8NF0




 ……と、和やかに帰りかけた僕たちの背後から。

「ま、待たんか皆の者おぉぉおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 魂の底から搾り出すような絶叫が響いて来た。

「まだこっちの話は終わっておらんぞ! 空気読んでずっと黙っていたというに、最後ま
でシカトとはあんまりではないかぁ!!!」



 (OдO)…ア 



 やべ、王様のことすっかり忘れてた。


 

99 :Stage.16 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:45:04 ID:bvU2J8NF0
 ----------------- Real-Side -----------------

 ……何時間経っただろうか。寝ようと思っても、意識は冴える一方だった。
 ベッドの中で何度も寝返りをうっていた俺は、我慢できなくなって身体を起こした。

 さっきの電話。ヤツが俺に叩きつけてきた言葉のうちの、9割は嘘だった。
 ヤツの癖なんだろうが、タツミがわっとまくし立てるのは、本心を隠したいときだ。俺
を責めるその内容はいちいち正論だったが、口に出している方は心にもない言葉を並べて
いるだけで、そんなことは考えてもいない……声から相手の心情を読むのが得意な俺には、
それがはっきりと伝わってきた。

 本音は、わずか二箇所。
『僕の存在さえ否定すれば、君はちっとも悪くない』
『友達になりたいって、今でも思ってる』
 そこだけだったのだ。
 わからない。タツミは俺のことを、まったく恨んでいないのか? 

 テレビ台の下に押し込んだゲーム機本体の電源ランプが、小さな赤い光を放っている。
ヤツと俺の命綱としてはあまりに頼りない。
 ベッドを降りて、投げ出していた携帯とテレビのリモコンを拾う。
 もう少しだけ、話してみようか。そう決意して俺は画面に向けてスイッチを入れた。

 ブンと音がして、茶を基調とした鮮やかな光彩が部屋を染めた。限界まで絞り込んだ音
は「王宮のロンド」。ほぼ画面いっぱいをうめる砂地の円形の広場の中心に、タツミたち
4人組と、黒装の剣士(レイに違いない)がおり、彼らを挟むように正面に王様、後ろに
数人の兵士が控えている。
 どこの城だろう。幼い頃に見た気もするが、実際の風景とゲーム画面は別物なので、はっ
きりとは思い出せない。
 まあ本人に聞けば済むことだ、と携帯に目を落とす寸前、「ティロロロ」というテロッ
プの表示音が流れて、俺は反射的に画面を見た。
 そこで俺h


100 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:47:17 ID:SmxGsr090
試演

101 :Stage.16 [11] ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:48:29 ID:bvU2J8NF0

 ※「まあ ほれた弱みと 言うものだよ。っちゅ!」(←ドラクエ的表現)


 カシャン!(←携帯を取り落とした音)
 ……………(←アストロン状態)


 ※「最初に会ったときから ずっと好きだった」(←ゲーム仕様による会話の簡素化)


 ……これはなんだ。(←意識の回復)
 なにやらヤツとレイがアヤシイことになってるんだが?(←状況分析)
 どうも目がおかしくなったかな。(←合理的解釈の模索)


 ※「勇者様 本気ですか?」(←ゲーム仕様による会話の簡素化)
   >はい   いいえ(←駄目押し)


 しかもOKなの?(←状況理解)
 いやいや、まさかな。(←拒絶)
 本当は寝ちゃってるらしいな俺。(←現実逃避1)
 ったく、変な夢見てるよな俺も。疲れてるんだな。(←現実逃避2)



 ……俺は再びテレビのスイッチを切った。ごそごそとベッドの中に潜り込む。

 とにかく、今はただ眠りたかった。
 バラモスの用意してくれたあの石棺が――異っ常ぉに恋しかった。
 

102 :Stage.16 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2008/05/18(日) 22:51:10 ID:bvU2J8NF0
本日はここまでです。
ちなみにアルス君、翌朝には誤解も解けましたが、
その夜は悪夢にうなされて大変だったようです。

いつもご支援いただいている皆様には感謝を込めて。
楽しんでいただけましたでしょうか。
好評でしたらまたやってみたいです。
【回答】
第1問:キングレオ
第2問:銀の鍵
第3問:雨雲の杖
第4問:ストロスの杖
第5問:ユバール族

103 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 22:52:01 ID:2Q8ycesi0
うほっだと思ってマジ物凄く焦ったよこんちくしょうGJ!!

104 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 23:02:02 ID:QsGxED6f0
>>90
>「ですが殿方同士の恋愛なんて宿スレ的にブッチぎりでアウアウじゃないですかっ。巣に
>帰れって大荒れするに決まってますでしょう!?」
>「確かにビジュアル的にはちょいヤバかもだけど、どうせテキスト表現なんだから設定が
>女性ならセフセフじゃないのかよ!?」

マテ。仲間たちもこれが2ちゃんスレってのが前提なのか?ww
みんなの慌てっぷりにワロタ GJ!!

105 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/18(日) 23:17:05 ID:SmxGsr090
王様、根が悪い人じゃないと言うのが今回の話でよく分かったw
よくあの騒動の中待っててくれたもんだ

106 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/19(月) 21:49:30 ID:FexqeDLV0
>>102
乙でした
いやー本当にびっくりしたw
R氏壊れたかとw
叙述トリックとはね

107 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/20(火) 07:38:35 ID:DfXAQhtgO
ウホッでアッーだと期待した俺に謝れ!
投下乙です。
ぶっちゃけガチでバイか何かだと期待した

108 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/21(水) 12:49:58 ID:2u7HO81sO
>>107
出たな腐女子

109 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/21(水) 17:56:02 ID:LXyeksDRO
俺女なんて認めない

110 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/21(水) 21:03:17 ID:EAFA3WNR0
>>109
レイの一人称「私」じゃん。

111 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/21(水) 21:30:00 ID:W0pWAcLd0
>>110
たぶん>>107-108の流れを受けての>>109

112 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/23(金) 12:28:03 ID:mb76prr8O
総長こないなー。

113 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/24(土) 08:53:00 ID:SqaEozKD0
多分、朝早く来るよ
早朝なだけに

114 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/25(日) 00:25:41 ID:KBctZTzcO
おもしろくないwwwwでなおっwwでなおしてwwww
まいwwまいれぁヒヒヒァぁああwww

115 : ◆Tz30R5o5VI :2008/05/25(日) 13:27:21 ID:BJk9VrVRO
昼になりました

116 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/25(日) 22:49:36 ID:+KkaaSxp0
レイさま、かっこいい・・・。ぽっ

117 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/25(日) 23:45:01 ID:RYjRhYyVO
>>R氏 乙です
レイさんが女性だったとは、ビックリw
こりゃ他のキャラも性別、再確認しといた方が良いなw

まとめサイト行って来るノシ

118 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/26(月) 05:46:46 ID:i3PGV6EgO
3の女勇者は「男の子のように育てた」と母親に言われるからなぁ…
レイさんもたぶんそうなんだろな

119 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/27(火) 19:08:09 ID:cITU4ox20
でも、考えて見れば、レイさんと結婚したりしても、魔王を倒すと、またリセットされるのね・・・(滝汗

120 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/28(水) 22:58:48 ID:mUaB+laTO
(//▽//)キャァァァーーー(ハート)(ハート)(ハート)
(*´Д`)レイタンタツミタンハァハァ

………( ゚д゚)ナンダオンナカヨ



orz スニカエリマス
o/rz !?
o.......rz …


121 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/29(木) 04:19:15 ID:7gEisxV4O
腐はそのまま死ね

122 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/29(木) 06:18:24 ID:lmxt6f0JO
スミスに謝れ

123 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/29(木) 08:22:01 ID:c9QD4c710
>>121
気持ちはわかるが、触っちゃダメだ

124 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/29(木) 13:01:29 ID:S00qqjrGO
俺もデカい女におんぶされてーなぁ

125 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/05/30(金) 23:32:07 ID:YX80q9NdO
>>124
つ 和田アキコ

126 :コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/01(日) 23:27:43 ID:A5J6HokB0
頑張って書いてるからちょっと待っててね保守

127 :コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/02(月) 10:03:16 ID:N7f8rMux0
総長マダー?( ゚ д ゚ )

128 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2008/06/03(火) 00:39:58 ID:/Uk8eike0
皆様お久し振りでございます。
今、ようやく真理奈の2章ができあがりましたので、テキスト投下しにきました。
もしお暇があれば読んでやってください。

http://www.uploader.jp/dl/ifdqstory/ifdqstory_uljp00019.txt.html

さて前回の投下から5ヶ月も空いてしまった訳ですが、
その間に小説版ドラクエ4と精霊ルビス伝説を初めて読みました。
ゲーム内事象の再現度の高さに加えて、
筆者独自の世界観を無理なく組み込むレベルの高さ。
ただただ凄いとしか表現できません。
5と6も同じ筆者さんなので読んでみようと思います。

いつかそんな風に書けたらいいなと夢見つつ、
また次のが出来上がった時はよろしくお願いします。
ではでは暇潰しでした。 ノシ

129 :コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/03(火) 01:30:46 ID:vtJA65w70
>>128
更新GJ
王子がひどすぎる
王様ノリノリだな
次章まで気長に待ってます

130 :コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/03(火) 02:49:26 ID:NsuzhDie0
>>128
更新乙でございます。
今回も楽しめました。
理想(ですらないけど)を振りかざして世間知らずな王子も世界の惨状を目にすれば何かかわるかもしれませんね・・・。
幼馴染ちゃんは、報われることがあるのでしょうか・・・。
能登かわいいよ、能登。

131 :コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/05(木) 20:23:40 ID:JppmPMguO
>>128
久美はいいよな。初めて読んだのが5だったせいか、メチャクチャ引き込まれたよ。
8も彼女が書いてくれればいいのにな。いまんとこ小説自体出さない方向だからなー。

132 :コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/05(木) 22:19:04 ID:QEdpzD6Y0
>>131
一部じゃ黒歴史と言う人間もいるから話すスレは気を遣うが、自分も久美は好きだな。
8はもちろん久美で不満は無いが、個人的には五代ゆうあたりに書いて欲しい気もする。

133 :暇潰し ◆ODmtHj3GLQ :2008/06/05(木) 23:25:22 ID:ewJMsfHZ0
あんまりここに出てこないので、お返事を。

>>129
ありがとうございますー
王子がひどくかけていれば嬉しいですねw
個人的にはもっとうざくなってほしいんですけど。
逆に王様は遊ぶのがお好きって感じをしっかり持たせたいですね。
次章は戦闘をバッチリやりたいと思っております!

>>130
ありがとうございますー
王子が好評なようでw
彼に関しては王様の願いが叶えばいいのですが……
後輩ちゃんは今のところ貧乏クジを引いてばかりですね。
まぁそれもアリアハンに帰るまでの辛抱です。
もっと真理奈の可愛さを引き出せるようになりたいです!

>>131
先生の作品僕も好きです。
日常生活のちょっとした出来事が話に出てきて和んだりしますよね。
キャラクターもみんな魅力的ですし。
アリーナのボクっ子は笑ってしまいましたがw
8なんか良い話になりそうな気がしますよねー
ゲームではそこまで盛り上がらなかったラスボスも熱い展開になりそう!

自分宛てではありませんが……>>132
久美先生黒歴史扱いもされたりしてるんですねw
五代先生の名前は初めて聞きました。
今度探してみよう!

と、でしゃばったところで帰りますノシ

134 :コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/06(金) 08:25:33 ID:i2I/rai40
投下があるまでのんびり雑談しながら保守ってのはいいな。
もちろん職人が戻ってきたらすぐ避難所に移動するが。

五代ゆうはオススメ。デビュー作の「はじまりの骨の物語」とか、
現実の神話をしっかり勉強してる上での正統派ファンタジーを書ける作家。
文章力はぶっちゃけ久美より上、久美は手本にすると変なクセがつく。
ただキャラ作りは久美のが上(ライトノベル層にウケる作り方を知ってる)。
それぞれ参考にできる点があるよ。

135 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/07(土) 01:24:32 ID:6goG9W8d0
―刑訴法と友引―

「調査って、あなたがこの事件を調べようって言うの?」
「はい。私はこのままサンディさんが罰を受けるのは納得がいかないんですよ。」
あんたが納得しようとしまいとどうでもいいのよ……

「私のところでは『疑わしきは罰せず』といいまして嫌疑だけでは罰せられないのです。」
「何を言っているのかよく分からないわ。」
「つまりですね、証拠がない限り犯人として扱ってはいけないということです。」
「あなたのところじゃそうかもしれないけど、ここじゃ町長に睨まれたらおしまいなのよ。」
「ええ。ですから何とかして町長にサンディさんの無実を証明したいんです。」
そんなことされたら私の計画が台無しじゃない!

「でもねえ、言いたくないけど、状況を考えたら犯人はサンディしかありえないわ。」
「そうとも言えないんです。サンディさんが犯人だとするとおかしなことがあります。」
「なんなのよ、おかしなことって。」
「いえ、おかしいと言ってもほんの些細なことなんです。」
「それじゃ気にしないことね。」
「でも、どうしても納得ができないことなんです。」
……じれったい男ね。

「実はですね。ペロ君の餌に毒を入れた方法が分からないんですよ。」
「方法って、餌を作るのはサンディの仕事なのよ。いくらでもやりようがあるわよ。」
「はい、確かに餌を用意したのはサンディさんです。彼女もそれは認めています。」
「それじゃ……」
「でも、彼女の用意した餌には毒は入っていなかったんです。」
「どうしてそんなことが分かるのよ?」
「ネズミです。ネズミが餌を食べていたんですよ。」

136 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/07(土) 01:25:34 ID:6goG9W8d0
「ネズミ?」
「そうです。餌は鍋で作られていたのですがその鍋に残った餌をネズミが食べていました。」
「見てきたの?」
「はい。町長の息子さん、ジョセフさんの許可を得て現場を見せていただきました。」
「……それで、そのネズミがどうしたって言うのよ。」
「そのネズミに体調の変化は見られなかった。つまり鍋の餌には毒は入っていないのです。」
「毒が鍋に入っていなくてもペロは餌を食べて倒れたことに間違いはないんでしょ?」
「餌はお鍋からお皿に移されました。毒が入れられたのはその後です。」
確かに私が毒を入れたのは皿に盛られた餌だった。

「でも、それはお皿の餌にサンディが毒を入れたことだってことじゃないの?」
「そう考えるとまたおかしなことが出てくるんです。」
何よ。おかしいのはそんなことを気にしているあんたじゃないの。
「毒を入れていた容器がどこにもないんですよ。」
「それは処分したんでしょ。サンディが。」
「サンディさんはペロ君が餌を食べた後すぐに拘束されています。そんな暇はなかった。」
薬を入れていた瓶は帰り道で捨てたんだった。その場に残しておけばよかった……

「サンディさんがこの事件の犯人だと言うにはどうしても納得できないでしょう。」
「……そうなるのかしら。」
「ええ、そうなります。そしてそうなると次なる問題が出てきます。」
「何よ、問題って……」
「サンディさんとは別にペロ君の餌に毒を盛った真犯人がいるということです。」

真犯人。

それは、つまり私のこと。

137 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/07(土) 01:26:35 ID:6goG9W8d0
「町の中でペロ君が放し飼いにされていることに不満を持つ人は多いようですね。」
ケージさんはサンディ以外にペロの餌に毒を入れそうな容疑者を探すつもりのようだ。
ここは話をあわせておかなければ。

「そうね。誰彼かまわず吠えるんだもの、あれは迷惑だったわね。」
「つまりペロ君に毒を入れようという動機を持つ人間は大勢いたわけですね。」
「でも、迷惑だからって毒を入れるまでするかしら。これはやっぱり……」
「逆にペロ君はサンディさんには懐いていて、彼女に毒を入れる動機はないようです。」
……それはそうでしょうね。

「動機があったとしてもチャンスがあったのはやっぱりサンディだけなんじゃないかしら。」
「毒を入れた容器が見つからない以上まったく別の機会に毒を飲んだのかもしれません。」
「別の機会?」
「たとえばペロ君が毒飲んだのは餌を食べるずっと前だったとかね。」
今度は何を思いついたのよ。
「事前に遅効性の毒を飲んでいて、餌を食べたときその毒が回ったのかもしれません。」
「ちょっとタイミングが良すぎるんじゃないかしら……」
「でもこれなら現場に毒の容器がなかったことの説明がつきます。」
いろいろ面倒なことを考えることが好きな人のようね。

「アマンダさん、サンディさんの無実を証明するため調査をしませんか? 我々で。」
「我々って、私も?」
「はい。アマンダさんはサンディさんの友達です。無実を証明してあげたいでしょう?」
「そ、それはもちろん……」
「決まりですね。これから本格的に調査を開始しましょう。」
「でも……」
「町長の許可は取ってあります。存分に調べましょう。」

犯人である私が事件の調査ですって?
なんだかおかしなことになったわ……

138 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/07(土) 01:27:35 ID:6goG9W8d0
「この町の人間ではない女性を見たと言う話があります。怪しいかもしれませんね。」
はっきり言って今この町で一番怪しいのはあなたなんだけどね。
「その人なら私も見たわ。綺麗な人だったわね。」

この男はサンディがちょっと可愛いもんだから助けてあげようとしているだけに違いない。
だからもっと別のことに興味を持たせることにしよう。
「ケージさんもそういう綺麗な人に会ってみたくない?」
綺麗な人と聞けば飛びつくに違いないわ。

「そうですね。彼女がどこにいるのか知っているんですか?」
「あの神秘的な雰囲気、彼女はきっと占い師よ。」
「占い師ですか……」
「この町からすこし南に高名な占い師が住んでいるの。そこの人じゃないかしら。」
そうよ。美人占い師なんてサンディよりも魅力的よ。
「ケージさんも1度占ってもらうといいわ。」
「いや、私はどうも占いというのは苦手でしてね。」
「占ってもらえば家に帰るヒントをもらえるかもしれないわよ。」

「……家に帰る方法ですか。」
この一言が効いたのかケージさんは占い師のところへ行くことを決めた。
単なるスケベ親父かと思ったけど意外と家族思いなのかもしれないわ。
だったらなおのこと本当に帰る方法を聞いてそのまま帰って欲しいものだ。

「でも、町の外へ出るのは危険なのですよね?」
「戦いができる人間に連れて行ってもらえばいいわ。誰か紹介してあげるわよ。」
私は何とかケージさんを占い師の下へ行かせることに成功した。

139 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/07(土) 01:28:36 ID:6goG9W8d0
ケージさんが占い師のところへ行っている間、私は自分が置かれている状況を省みた。
現状を考えれば私が怪しいと思われる要素はどこにもない。
ケージさん以外の誰もがサンディの犯行だと思っているはずだ。
町長もサンディが犯人であると決め付けている。

それにケージさんが私を犯人探しの仲間に加えたのはチャンスだ。
犯人探しを撹乱してこのままうやむやにしてしまえばいい。
あの男、ケージさんはそのうち諦めるだろう。
状況は私にとって有利だ。

ケージさんは聞き込みをして事件の情報を集めたいようだ。
この事件の犯人は私にとって彼が事件をかぎまわるのは非常にまずい。
ケージさんがはやく諦めるようにサンディに不利な情報を集めておこう。

今の私はサンディにとどめを刺すのに最適な状況なんだわ。
そう思うと、私は悪女のような微笑を浮かべた。

―続く―

140 :コマンド? |>全板トーナメント:2008/06/07(土) 03:23:52 ID:egifvloL0
投下乙でした。本格的な推理になってきましたね。今回も楽しめました。
アマンダを疑ってカマをかけたんじゃなさそうですね。
もっとも、このままかく乱されるケージさんじゃなさそうですね。

141 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/10(火) 23:47:25 ID:wuY5hlKF0
前回の最後でアマンダが「犯人である自分に迫っている」と言ってたし、
結果は見えてる気がするけど、案外とんでもないどんでん返しがあるのか……。
過程がどうなるかが楽しみ。
そういえば前回はトモノリ(リカ)ちゃんとジン君、結婚話が出てましたね。
遅ればせながらおめでとう。

142 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/11(水) 15:28:26 ID:G7OsM+qI0
結婚するのはジン君のお姉さんじゃなかったっけ?

143 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/11(水) 20:48:58 ID:ELSsmawq0
違うよ。ジンくんのお姉さんが結婚してて、子どもが生まれるんだよ。
そんなに長くないし面白いんだから、読み直せばいいのに。

144 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/12(木) 13:40:29 ID:RdWwvJIe0
>>142-143
避難所の「名無し客の雑談」レス25で簡単にまとめてみた。

145 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/14(土) 00:03:16 ID:eqPr2hEy0
>>144
dくす

146 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/14(土) 01:42:36 ID:j99PKQmJ0
―民訴法に先負―

ケージさんが占い師のところから帰ってきた。

「占いの結果はどうだった?」
「驚きましたよ。」
「そんなにすごい結果だったの?」
「綺麗な人だと聞いていたのに占い師は老婆だったんですよ。」
それはびっくりしたでしょうね。

「占いについては、占い師のグランマーズも驚いていました。」
「やっぱり驚くような結果だったのね?」
「いえ、まるで占えなかったそうです。こんなことは今までなかったそうです。」
「不思議なこともあるものね。」
「まるで私がこの世界の人間でないような態度でした。」
それが本当ならますます得体が知れない人だということね。

「そうそう、グランマーズのところへ行く前に教会に寄ったんです。」
ケージさんは楽しそうに語る。
「ここでは町の外へ出る前にも教会でお祈りをするのが常識だそうですね。」
「ええ、そうよ。」
「ついでに教会でお告げを聞きました。」
「何かいいお告げは頂けたのかしら?」
「いや、もっと頑張れば成長できるなんていうありきたりな話でしたよ。」
「ま、お告げなんてそんなものよ。」
「そもそも的確な神のお告げが聞けるなら占い師なんて商売成り立ちませんよね。」

私はお湯を沸かしながらケージさんとの話を続けた。

147 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/14(土) 01:44:09 ID:j99PKQmJ0
ケージさんは話を続ける。
「でも面白い話が聞けました。教会では毒の治療も行っているそうですね。」
いったいどこが面白いのかしら。
「毒の治療は神父様が行う。この世界の常識なんですね。」
「そうよ。だからペロも神父さんのところへ連れて行かれたんじゃないの。」
「ええ、そうでした。神父さんがいなかったら大変なことになっていましたね。」
「そういうときは毒消し草を使うのよ。旅の必需品よ。」
「おや、そんな便利な薬もあるのですか。」
「毒には毒消し草、麻痺には満月草よ。」
「麻痺と言うのは?」
「体が痺れて動かなくなるの。ヘルホーネットなんかの攻撃を受けるとなることがあるわ。」
ケージさんはしきりに頷いている。
「いやあ、アマンダさんは薬のことにお詳しいですね。」
「伊達に宿屋の娘なんてやってないわよ。旅人に薬はつきものだからね。」
だからペロに飲ませた毒を調合しようと思ったのよ。

「この世界の人はみんな親の仕事を手伝っているんですか?」
「そうね。いえ、そうでない人もいたわね。」
「親に反抗する子もいるんですか?」
「大工の息子のハッサンが武闘家になるって言って家を飛び出したって話よ。」
「子供が親に反抗することはどこにでもあることなんですね。」
「それ以来行方不明らしいけど、どこでどうしているのかしらね。」
ま、どうでもいいことだけど。
「こうして事件が起きたとき行方不明の人間がいるとなんとなく意味ありげですよね。」
「あなたハッサンがこの事件に関係していると思っているの?」
「いや、さすがにこの事件とは関係ないでしょうね。」
「そうでしょうね。」
どうせなら関係があると思ってハッサンを探し回ってくれたらよかったのに。

148 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/14(土) 01:46:02 ID:j99PKQmJ0
「そうそう、私のほうは町の人に事件の起きた日のことを聞いてみたわ。」
「何か分かりましたか?」
「あまりいい結果じゃなかったわ。」
私にとってはいい結果だったけどね。
「あの日ペロはずっと屋敷にいたの。だから外で毒物を食べた可能性はないわ。」
「どうやら毒はあの餌に入っていたと考えるしかないようですね。」
「そのようね。残念だけど。」
これでサンディが犯人ということで決着がつく。

「そもそもこの町では犬に危害を加えるのはどれくらいの罪になるのでしょうか?」
「ただの犬じゃなくて町長が可愛がっていた犬ですもの、大罪じゃなくて?」
「犬によって違うのですか?」
「だってこれがアロードックだったら罪にはならないでしょう。」
「アロードッグというのは?」
「モンスターよ。名前の通り弓を放つ犬のモンスター。」
「その犬ならば危害を加えても罪にならないのですか?」
「だってモンスターですからね。」
私は話しながらティーカップを食器棚から取り出す。

「モンスターと言えばこの世界には腐った死体というモンスターもいるそうですね。」
「いるわね。あまり見たくないモンスターよ。」
「モンスターとはいえ死体を傷つけたら遺族から賠償責任を問われないのですか?」
「だってモンスターが襲ってきたら反撃しなきゃ自分がやられるのよ。」
「うーん、厳しい世界ですね。」
「それに家族だって身内がモンスターになったら止めて欲しいんじゃなくて?」
「……そういう考え方もありますね。」
「きっと倒すほうも止めてあげたいと思っているんじゃないかしら。」
「そうですね。目の前に人の道から外れた人間がいたら止めようとするでしょうね。」
ティースプーンを探しながらそんな話を続けた。

149 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/14(土) 01:47:25 ID:j99PKQmJ0
「話がそれました。このままだとサンディさんはどうなるのでしょう?」
「そうね。処遇は町長の一存で決まるでしょうね。」
「前にもそんなことを言っていましたね。刑罰を与える権限も町長にあるのですか。」
「あれでもこの町で一番偉い人間ですからね。」
「私の所ならば損害賠償の請求ができるのがせいぜいでしょうね。」
相変わらず良く分からないことを言う人だ。

「これは一刻も早く真相を突き止めてサンディさんを助けなければなりませんね。」
「え、ええ。そうね。」
突き止められちゃ私が困るのよ……
「ねえ、ケージさんはどうしてサンディが犯人じゃないと思うの?」
「そうですね。まず動機がないことでしょうか。」
「動機……」
「ペロ君の餌に毒を入れる理由ですね。これがサンディさんにはない。」
「でもそれは誰だってそうよ。」
「はい。しかしサンディさんはこんな騒ぎを起こしたくない理由があるんです。」
それって……
「サンディさんとジョセフさんはお互い好意を寄せあっているようです。」
この男いつの間にそんなことまで調べたのかしら……。
「ですから私はサンディさん以外の人間が毒を入れたものだと思っています。」
サンディの奴ジョセフだけじゃなくこの男もたぶらかしたのかしら。
私はティーポットにお湯を注ぎながらそんなことを考えていた。

150 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/14(土) 01:48:38 ID:j99PKQmJ0
「次に考えられるのは誰か屋敷に忍び込んで毒を入れたということですね。」
「ちょっと! そんな人いないわよ!」
「分かりませんよ。こんなことならグランマーズに犯人を占ってもらえばよかったですね。」
冗談じゃないわよ……

「占いと言えばアマンダさんは占いのようなことができるんですか?」
「え? そんなことできるわけないじゃない……」
「そうですか。でももしかしたら占い師の才能があるかもしれませんよ。」
「何を根拠にそんなことを言うのよ。」
相変わらず意図の読めないことをいう人だ。

「いや、あれは未来に起こることが分かっているかのようでした。」
「何の話よ。」
「そういう人っているんですよね。私の知り合いもデイトレードでひと財産築きましたよ。」
「何を言っているのかわからないわ。」
話しながら紅茶に砂糖を入れる。

「いえ私がここで働くことになったとき午前中に教会へ行くことを勧めたじゃないですか。」
「そうだったわね。」
「あの日、午後に教会へ行っていたらお祈りどころじゃありませんでしたよ。」
「どうして?」
「神父様はあの日の午後ずっとペロ君の治療にかかりきりでしたからね。」
そうだ。神父様がペロの治療をすることは分かっていた。
だから、つい午前中に行ったほうがいいと言ってしまったんだった。

「まるでそうなることを知っていたかのような見事なアドバイスでしたよ。」

紅茶を口に運ぼうとする手が止まった。

……まさかこの男、私を疑っているの?

―続く―

151 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/14(土) 02:00:03 ID:lIAXojW9O
乙乙!
いよいよクライマックスですな!!

そして私は知っています。
この物語が明日で終わることを!
なぜなら(ry

152 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/14(土) 02:02:59 ID:VSLddegX0
すげえ面白いwわくわくする

153 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/14(土) 13:20:56 ID:++/yagpD0
>> 午前中に教会へ行くことを

おお、そこか。
ますま古畑っぽいな。
ラスト楽しみ。

154 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/14(土) 13:37:27 ID:xPUTDTSJ0
>「そういう人っているんですよね。私の知り合いもデイトレードでひと財産築きましたよ。」

もしかして3の彼?
だとしたら彼はもう……。

155 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/14(土) 14:09:42 ID:NFd+qfaV0
3の話が今のよりもだいぶあとの話であれば、まだ健在のはず。

156 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/14(土) 15:03:30 ID:fdytT2MN0
おお、3との接点も作ってたのか。気付かなかったけどすげぇ。
もしかして4でジン君の知り合いが言ってたっていう「嘘をつく覚悟」はケージさんのセリフなのかな。
この話読んでると、ぴったりな気がする。

157 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/17(火) 22:49:01 ID:+osgOlR90
うう、3の彼・・・(泣

158 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/19(木) 14:25:54 ID:cPwnu+yY0
ほんと引き込まれるね。
3ってどんなだっけって読み返してまた鳥肌・・・。
すげえよ

159 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/21(土) 11:40:52 ID:MZT6/NzH0
―商法は仏滅へ―

「早く運んでケージさん!」
「はい! ただいま!」
「それが終わったら食事の準備を手伝ってね。」
「夕食は何人前準備すればよろしいでしょうか?」
「そうね。今日は20人分用意しておけばいいわ。」

もともとケージさんはうちの宿屋の仕事を手伝うことになっていたのだ。
彼にはその仕事に集中してもらおう。これで事件の調査はできまい。
私のことを疑っている人間にこれ以上事件をかぎまわされるわけにはいかないのだ。

「おいおいアマンダ、そこまで働かせちゃ悪いよ。」
「父さんは甘いのよ。家においている以上これくらいは当然よ。」
「そんなにこき使ったらそのうち逃げ出してしまうよ。」
むしろそうなってくれたら大助かりだわ。
「アマンダさんの言うとおりです。これくらいのことはお手伝いさせてください。」
「そうよ。やってもらいたいことはいっぱいあるんだからね。」
「かしこまりました。」
ちっ。なかなか音を上げないわ。
思ったよりもずっと丈夫な人のようね。

「働くと言えば町長の家でサンディちゃんの代わりに働く人を募集していたよ。」
父さんがそんなことを言い出す。
どうやら町長はサンディを解雇することにしたようね。
いい気味。これでサンディはジョセフに近づけなくなるわ。

160 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/21(土) 11:42:34 ID:MZT6/NzH0
「困りましたね。」
「あら、何が?」
「サンディさんの疑いが晴れずに困りましたねと言ったんです。」
「それは……もちろんそうね。」
いけない。もっとサンディの身を案じる態度をとらなければ。

「町長を説得するのは難しそうですね。」
そうよ。だから早くあきらめなさい。
「そういえばアマンダさん。事件のあった日、大通りで町長を見かけたんですよね。」
「え、そうだったかしら……」
「はい、確かにそうおっしゃってましたよ。」
そうだったわ。あの時とっさにそんな嘘をついてしまった。

「町長は大通りを歩いていた……」
「それがそんなに重要なことなのかしら?」
「ええ、町長が留守だとしたら誰かが屋敷に忍び込むチャンスがあったわけですからね。」
しまった! 私の嘘で真相に近づけちゃったわ!
でも、いまさら嘘だったなんて言えないし……

「このあたりをもう少し調べてみないといけませんね。」
「でも宿屋の仕事はまだまだあるわよ。まずはこっちをしっかりやってね。」
そこにお父さんの声が聞こえてくる。
「おーい、そろそろ休憩とってもいいぞ。」
もう! お父さんたら今は娘のピンチなのよ!

161 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/21(土) 11:43:36 ID:MZT6/NzH0
私は自分の部屋で思い悩んでいた。
ケージさんは屋敷に誰か忍び込んでいないのか調べていることだろう。
あの日私は屋敷に近づいていないと言った。
誰にも見られていないと思うけれど、もし見られていたら疑われてしまう。
どうか誰にも見られていませんように……

「ちょっとよろしいですかアマンダさん。」
部屋にケージさんがきた。よろしくないんだけどそうも言えない。
「何かしら?」
「困りますねアマンダさん。いい加減なことを言っちゃいけませんよ。」

血の気が引いていくのが分かる。
いったいどこまでばれたのだろう。
屋敷に近づいたことか、ひょっとしたら忍び込んだことまで……

「今日の宿泊客は予約だけで20人以上います。夕食が足りなくなるところでした。」
ケージさんの言葉に私は脱力した。

「あらごめんなさい。うっかりしていたわ。オホホホ。」
「それからもうひとつよろしいですか?」
「何かしら?」
「あの日町長は大通りを歩いていないそうです。アマンダさんの勘違いですよ。」

「ふざけるんじゃないわよ!」
あの男が部屋から出て行くと私は悪態をついた。
彼をなんとかこの事件から遠ざけなければならない。
そういえば旅の商人が助手を探していたけどあの人を連れて行ってくれないかしら……

162 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/21(土) 11:46:56 ID:MZT6/NzH0
「ケージさんてこことはまるで違う世界にいたんでしょう。どんなところだったの?」
今度は事件に関係ないの話をして気をそらすことした。
「衣食住など基本的なところは共通点が多いようですね。」
「食事は口に合っていたのね。でも、あまりお酒は飲まないみたいね。」
「いえ、それは健康のため控えているだけです。」
あら、これだけ丈夫なのにそんなこと気にしていたのね。

「違うところも多いですよ。たとえば魔法の代わりに科学技術が発達しています。」
「それは魔法とどう違うのかしら?」
「……説明が難しいですね。そうだ、魔法と違い誰にでも使うことはできます。」
「誰にでも使えるなら魔法なんていらないのね。」
「そうですね。私のいるところでは法といえば魔法ではなく法律のことです。」
「なんだかよく分からないわ。ケージさんはその法律っていうものが好きなのかしら?」
「昔勉強したものですよ。経済を動かす法律、法律を動かす政治……」
話はますますわけの分からないものになっていく。

「ちょっと難しかったですね。何か面白い話は……」
私がつまらなそうなのを察してか話題を変えようとしていた。
「私の世界には株というものがいます。大学時代に友達だった奴もやってましたよ。」
「どんなものなのかしら?」
「その価値が上がるか下がるかを予測して売買をします。」
「よくわからないわね。」
「イメージがつかめませんか。この世界では基本的に買値も売値も一定ですからね。」
「なんだかケージさんの話ってなんだか難しいのよね。」
「気をつけているつもりなんですけどね。それなら恋愛の話なんてどうです?」
「あら、それは聞いてみたいわね。」
「若い人が恋愛話に興味があるというのはどこの世界でも同じですね。」

ケージさんはこう切り出してきた。
「アマンダさんは天空の花嫁と聞いてどんな人を想像しますか?」

そして……

163 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/21(土) 11:47:58 ID:MZT6/NzH0
「もし結婚したら天空の花嫁。ただし天空なのは妻ではなく夫のほうだった。」
ケージさんの口調が変わった。
「そうなんですよ。注目すべき相手が違っていた。この事件もね。」
「この事件……」
「そう、私はこの事件が犬のペロ君か町長に不満がある者が犯人だと思っていました。」
何を言い出すのよこの人は。
「でも、注目すべきところはそこではなかった。この事件にはもう1人被害者がいた。」
もう1人の被害者って……
「この事件で一番の被害を受けたのはサンディさんだったのではないでしょうか?」
何も言わない私を無視してケージさんは続ける。
「解雇されジョセフさんに近づけなくなった。そう考えれば彼女は立派な被害者です。」
まだケージさんは止まらない。
「犯人の狙いははじめからサンディさんを陥れることだったのではないでしょうか。」
そこまで気づいたのね。
やはり私の恋の障壁はまだなくなっていなかったらしい。

なんでみんな私の邪魔ばかりするのよ!
人の恋路を邪魔するものはみんな消えてしまえばいいのに!
私は心の中で叫んでいた。

そこへお父さんがあわてながら部屋に入ってきた。
「大変だ! サンディちゃんが町を追い出されてしまったぞ!」

私にはその声がずいぶん遠くから聞こえたような気がした。

―続く―

164 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/21(土) 18:34:56 ID:PJ24AVq40
ケージさん、更新きたー。
乙でございます。
ケージさんの語って聞かせるような口調、ひきこまれるようなものがありますね。

かなり核心に迫った感じですが、サンディちゃんが追い出されるのに間に合わなかったか・・・orz

165 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/21(土) 22:11:54 ID:ltJw/a330
このじわじわと真相に迫り来る感じが堪らんな…

166 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/24(火) 18:57:32 ID:CZBxeuAk0
hoshu

167 :お気の毒ですが(ry ◆QVZfTKbwI. :2008/06/24(火) 22:46:16 ID:Mw9Bhc3e0
○月×日
目が覚めたら見知らぬ場所にいた
こういう場合のお約束にしたがって頬を抓るも返ってくるのは痛みだけ
しばし周囲を散策、現地住民と交流する事に成功(その際色々あったが長い上に恥ずかしいので割愛)
すったもんだの末、この場所は日本どころか地球ですらない事を知る
なんか恨み買うような事したっけ?

○月△日
異界の地で職も無い、金も無い、人脈も無い
まさに無い無い尽くしの俺を見かねて、村長が仕事を斡旋してくれるという
その場所は俺のような異邦人が稀に来るらしい
なんでも移動魔法や旅の扉の座標事故で世界と時間の位相がずれ、ここに一時的に飛ばされるとの事
本気でチンプンカンプンである
俺も元の場所に帰れるのか、と質問すると
「君は事故でなく必然でここにいる。揺らいでいる彼らと違い、存在が安定している事が何よりの証拠だ」
と言われた。やっぱり意味が分からなかったがとりあえず簡単には帰れないようだ
俺は冷蔵庫の中の高級プリンを思い出し、少しだけ泣いた

○月◇日
仕事先は何を隠そう俺が目覚めた場所だった。宿屋らしい
異世界の住人の隔離施設って所だろうか?
俺がここにいたって事を鑑みるにあながち間違ってない気もする

そうそう、店長さんはナメクジのお化けみたいな風貌だ
しかし、一昨日彼(?)を見て取り乱した俺を笑って迎えてくれた非常にいい人(?)である
迷い人との会合を少しだけ心待ちにしていた俺だが、結局この日は誰も来る事無く一日が終了。店長さんと会話に花を咲かせるだけだった

なんでもランプの魔王とか古代の殺戮兵器とかが村の外には闊歩してるらしい
割と本気で不安に駆られる俺だったが、村の中は最深部に眠る神様の力で安全だという
元の世界に帰る手掛かりを得る為になんとかその神様に会ってみたいものである
でも外に出たら指先一つでダウンってレベルじゃないんだろうな……

168 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/25(水) 05:34:02 ID:y3/jTFx50
乙です。
この世界では、迷い込んでくる人の存在は認知されているのですね。
必然でここにいる・・・ってことは、誰かが呼んだとか。やることがあるのでしょうね・・・。
続きが楽しみです。

169 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/27(金) 14:48:30 ID:JYaOrRr70
hosyu

170 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/28(土) 00:13:33 ID:W0mhiZc40
―民法で大安に―

まさかサンディがこの町を追い出されちゃうなんて。
そこまでするつもりはなかったのになあ……

サンディは旅の商人の助手として連れて行かれてしまったらしい。
町の外に出たらどんなモンスターが襲ってくるかわからない。
最悪の場合サンディは……

私が部屋で落ち込んでいるとケージさんが来て訪ねてきた。
サンディが町を追い出されたことでこの人のことを忘れていたわ。
「何でも帰ってきたそうですよ。」
「サインディが? サンディが帰ってきたの?」
「いえ、大工の息子のハッサンが……」
「少しは空気読みなさいよ!」
「……アマンダさんはサンディさんのことを気にしているのですね?」
「当たり前でしょう……」
サンディは私のせいで危険な目に遭っているかもしれないのだから。

「心配ですよね。私も元の世界では行方不明となっているんでしょうか。」
知らないわよそんなこと。
「あまり長い間帰らないと失踪宣告を受けてしまうかもしれない。」
「失踪宣告?」
「私の世界では行方不明の人間は死んだ人間として扱われるんです。」
帰らない人は死んだ人と一緒。なんて嫌なことを言うんだろう。
「サンディさんはそうなる前に帰っていますよ。ただ、私は……」
ケージさんはしばらくぶつぶつ呟いていた。

171 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/28(土) 00:14:52 ID:W0mhiZc40
「……おや、いろいろな方法の載っている薬草の本がありますね。」
ケージさんは本棚にある本を目ざとく見つけた。本当に抜け目のない人。
「ひょっとしてその本にペロが食べた毒の作り方が載っているとでも思っているの?」
「いえ決してそんなことはありませんよ。」
「この際だからはっきりさせましょう。ケージさん、あなた私を疑っているでしょ?」
「どうしてそう思うのですか?」
「いいからその本を調べてちょうだい。私も疑われていると思うと気分が悪いわ。」

私の言葉でケージさんは本の内容を調べ始めた。
「椅子をお借りしてよろしいですか? ちょっと疲れているもんですから。」
ケージさんは椅子にすわりページをめくる。
でもその本に毒の調合法は載っていない。
毒の薬方が書いてあったのは本ではない。……しおりの方なのだ。

おそらく前の持ち主が毒の調合法のメモをしおりとして使っていたのだろう。
しおりは処分した。もう私が毒を調合したという証拠はない。

ケージさんが本を調べ終わるころを見計らって切り出す。
「どう? 毒の造り方なんて載ってなかったでしょう。」
「そうですね。」
「証拠がなくて残念だったわね。」
「私は残念だなんて思ってませんよ。」
「あなた、私が犯人だと思っているんじゃなくて?」
「……そうですね。いくつか疑問点があるのは確かです。」
やっと本音を言い出したわね。

172 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/28(土) 00:16:00 ID:W0mhiZc40
「ねえ、この前の話の続きしましょうよ。」
「この前の話?」
「そう。この事件を視点を変えて見てみるっていう話よ。」
「ああ、そうですね。」
「この事件の犯人はサンディさんがいなくなって得をする人物だという話よね。」
「……そういう考え方もあると言う話ですよ。」
「サンディがいなくなって都合がいいなら私も容疑者ね。」
自分からこんな話をするなんて、私は少し自暴自棄になっていたのかもしれない。

「アマンダさんはサンディさんがいなくなって欲しいと思っていたんですか?」
「あなたのことだからもうどこかから聞いてるんでしょ。私がジョセフが好きだって。」
「……そのことでしたら聞いていました。本当だったんですね。」
「サンディはジョセフと付き合っていたの。私もジョセフが好き。動機としては十分ね。」
「それではあなたが?」
「私はやったとは言ってないわ。ねえ、疑問点があるなら答えてあげるわ。」
私はまだ自分が犯人だと認めたわけではない。

「疑問点って町長が通りを歩いていなかったってこと?」
「たとえばそれですね。あの日あなたは町長の屋敷に行ったんじゃないですか?」
「私は町長の屋敷に行ってないわ。あれはあなたの言うとおり私の勘違いよ。」
「そうですか。そうなるとまた新たな疑問点が出てくるんです。」
「いいわ。その疑問点に答えてあげる。」

173 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/28(土) 00:17:02 ID:W0mhiZc40
「確認しますがあなたは私に聞くまでペロ君に毒に侵されたことを知らなかったのですよね?」
「ええ、間違いないわ。」
「しかし、それはおかしい。あなたが餌に毒を盛られたことを知っていたはずです。」
「教会へ行くなら午前中にって言ったこと? あれは何事も早いほうがいいと思っただけよ。」
「それではありません。私がペロ君の症状を言ったときの台詞がおかしいんです。」
「私がなんて言ったっていうの?」
「あなたはこう言いました。『ペロったらいったい何を食べたのかしらね』と。」
「別に不自然じゃないでしょ。ペロは餌を食べてそうなったんだから。」
「私が餌を食べて症状が出たと言う前にあなたは何を食べたかを気にしたんです。」
私には彼の言葉の意味がわからないでいた。
「毒を受けたならばモンスターの攻撃によるものと考えるのが普通じゃないですか?」
……確かに普通ならそう考えるでしょうね。
「でも、あなたは食べ物だと分かっていた。この毒は食べ物によるものだと。」

「言いがかりよ!」
「不自然なのはそれだけではありません。」
まだなにかあるの?
「そもそもこの世界の人はこれが毒によるものだと考えるはずがないんです。」
何を言っているんだろうこの男は。
「あなたは私がぺろ君の症状をどのように説明したか覚えていますか?」
「さあ、どうだったかしら?」
「ペロ君は痺れたように痙攣して動かなくなったと私は言いました。」
痺れて……動かなかくなった……
「気が疲れましたね。そう、これは麻痺の症状です。毒ではない。」

174 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/28(土) 00:18:04 ID:W0mhiZc40

麻痺……

「この世界では『毒』と『麻痺』はまったく別のものなんですよね。」
「それは……そうだけど……」
「町長はペロ君が餌を食べたところに行ったので毒を疑いました。でもあなたは?」
私は町長の屋敷には行っていないと言ってしまった。
いまさら実は見ていましたなんてことにはできない。
「麻痺の症状なのに毒物を疑った。私から聞いて初めて知ったはずなのにです。」

「私が疑問に思ったことは以上です。」
説明なんてできるわけない。
「……それは私が……私がペロの餌に毒を入れたからよ。」
終わったわ。何もかも。

「知らなかったわ。あれが麻痺の症状を起こす毒だったなんて。」
「本に載るような確立されている毒物ではなかったと思っていました。」
「……だから毒の造り方が本に載っていなくても残念がらなかったのね。」
「いったいどんな毒物だと紹介されていたんですか?」
「命に別条がないけど派手な症状が起きる毒の作り方よ。」
「……ペロ君に危害を加えるつもりはなかったんですね。」
「そう、誰も傷つけないでサンディがあの屋敷に居辛くなるだけの計画だった。」
私が望んだのはそれだけだったはず……なのに。
「嘘をつくには覚悟が必要なんです。たとえそれが相手のことを思う嘘であっても。」

175 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/28(土) 00:19:05 ID:W0mhiZc40
「それで、ケージさんは私をどうしようって言うの?」
「どうもしませんよ。あなたがやったという証拠は何ひとつないんです。」
「なによそれ……」
「言ったはずですよ。証拠がない限り犯人として扱ってはいけないと。」
「自分がやってって認めているのに?」
「私は何もしません。これからどうするかを決めるのはあなた自身です。」

「そんなこと言ったってどうすればいいのよ! 私のせいでサンディが! サンディが!」
「大丈夫。ジョセフさんがサンディさんを探しに行きました。すぐに見つけてきますよ。」
「私も探しに行く!」
「いえ、ここは彼を信じて待ちましょう。」
私、私は……
「きっと彼ならサンディさんを無事に見つけてきてくれますよ。」
「どうするかは私が決めろってあなたも言ったじゃない!」
「はい。でも、アマンダさんがどうするのか私には見届ける時間がなさそうです?」
「どういうこと?」
「好きで酒を断っているわけではないということです。ちょっと心臓が悪いんです。」
「そんな話聞いてないわよ。」
「薬さえ飲んでいれば大したことないんです。でも、この世界にはそれがない。」
「そんな……」

私が消えてしまえばいいと思った人は、その願いどおりみんないなくなってしまう……

そんなことさせない!

176 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/28(土) 00:20:54 ID:W0mhiZc40
それから幾日か経ち、ジョセフがサンディを連れて戻ってきた。

「これでジョセフさんとサンディさんの仲はますます強まることになるでしょう。」
「そっか。結局私のしたこと、何の意味もなかったのね。」
「良かったじゃないですか。」
「これで良かったのかしら?」
「取り返しのつかないことになるところだったのに何も起きなかったんですよ?」
「……そうね。そサンディが無事でよかった。そしてあなたもね。」
「ええ、おかげで助かりました。」

あの毒薬のしおりがはさんであった本に心臓病の薬の作り方が載っていた。
私はそれを必死に調合しケージさんに飲ませたのだ。
ケージさんを助けたことで私は少しだけ罪滅ぼしができたような気がした。

177 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/28(土) 00:21:56 ID:W0mhiZc40
「ケージさんも無事に帰れるといいわね。」
「そうしたいところですが世界が平和になるまではここで御厄介になります。」
「ええ、そうしてちょうだい。」
「その間に帰った時の妻への言い訳を考えておきます。」
「ケージさんは奥さんのことばかり考えているのね。」
私はちょっと意地悪く言った。

「いや、そんなことないですよ。職場の人間にも迷惑をかけてしまうことも心配です。」
「こんなときまで仕事のことを気にするなんて変わってるわね。」
「そうですか?」
「前に言っていた株っていうのを売り買いするのがお仕事なのかしら?」
「いえ、それは……昔友達だったやつがデイトレードでやっていただけです。」
デイトレード、前に聞いたお金儲けの方法だっけ。
でも、なんとなく照れくさそうな言い方だったのはなぜかしら?

「ねえ、ケージさんってどんな仕事をしているの?」
「教師です。この世界ではまるで刑事のようでしたけれど。」
「え? ケージさんってケージさんじゃなかったの?」
「いえ、名前は啓司に間違いないです。私の世界には刑事という職業があるんですよ。」
本当によくわからない人だわ。
「大学に入ったばかりのころは法律家を目指していたのですけどね。」
「諦めたの?」
「そうなりますね。まあ、思うところがあり教員になることにしたんです。」
よくわからないけれど、この人もいろいろあったのかもしれない。
「教師として子供達に嘘をつくには覚悟が必要だって言っていますよ。」
私に言った言葉。私も子供扱いだったのね。
ケージさんも覚悟をきめて嘘をついたことがあるのかしら?

178 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/28(土) 00:22:58 ID:W0mhiZc40
「アマンダさんはこれから新しい恋を見つければいいんですよ。」
「まあ、ケージさんからそんな言葉が聞けるとは思わなかったわ。」
「あの天空の花嫁の話、覚えていますか?」
10年ぶりに再会した2人の話よね。
「彼らは私の教え子なんです。その当時はこうなるなんて思ってませんでしたよ。」
「出会いなんてどこに転がっているか分からないってことね。」
「そうですとも。あなたにもきっと赤い口紅よりも似合う色が見つかるはずです。」
赤はジョセフが好きな色。この人そんなことまで調べていたんだ……

「ねえ、ケージさん。いまさらだけどひとつ聞いていいかしら?」
「なんでしょうか。」
「あなた、私にペロの症状を説明したときの言い回しなんてよく覚えていたわね。」
「実を言いますとあのセリフははじめから意識してああ言ったんです。」
「まさかあの前から私が妖しいと思っていたの? どうして?」
「いやいや、それは実にアンフェアなことなんですよ。簡単な理由なんです。」
「まさか私が毒を入れるところを見ていたんじゃないでしょうね。」
「同じようなもんです。実は私、ドラクエ6をやったことがあるんです。」
この人の言うことはやっぱり意味が分からないわ。
「なんなのドラ……何んとかって?」
「私の世界でのこの世界の呼び方です。途中まで気付きませんでしたけれど。」
「ここがどこかわかったっていうこと?」
「そうですね。でも、普通は絶対に来られないところです。」
そう言ったあとケージさんはしばらく考え込んだ。
「いや、もしかしたら来た人間がいたのかもしれません。しかもお金好きの人間が。」
「どうしてそう思うの?」
「ドラクエにエンドールという城があるんですが円もドルも私の世界の通貨単位です。」
エンドールなんて聞いたこともない。やっぱりこの人の言うことは分からないわ。
「その国の建国に私の世界の人間が関わったのかもしれません。」
それはちょっと強引な気がするわ。

179 :冒険の書6 ◆8fpmfOs/7w :2008/06/28(土) 00:24:58 ID:W0mhiZc40
「私、サンディにきちんと謝らなくっちゃ。許してもらえるかわからないけど……」
「きっと許してくれますよ。友達とは仲直りしたほうがいい。」
「……ねえ、ケージさん今度は私の推理を聞いてもらえるかしら?」
「どんな推理ですか?」
「もしかしてケージさん、あなたにも仲直りしたい友達がいるんじゃないかしら?」
「どうしてそう思うんですか?」
私はふふふと笑うと推理を披露した。
「あなたは『昔友達だったやつがデイトレードでやっていた』って言ったわ。」
ケージさんは驚いたような顔をする。
「昔友達だったってことは今は違うのよね。その人と仲直りしたいんじゃないの?」
何も言わないケージさんに対して私は言葉を続ける。
「デイトレードでひと財産築いた人がいるとも言っていた。きっとその人でしょう?」
お金を持ったことで今までの関係が壊れるなんてありそうなことだわ。

「お見事な推理です。でも、誤解があります。」
「どんなことかしら?」
「デイトレードで大儲けした人と昔の友達というのは別の人間なんです。」
どういうことかしら?
「大儲けした人は為替専門のトレーダーで大学時代の先輩です。彼はすでに故人です。」
「まあ…… 」
「なまじ大金を手に入れてしまったせいか晩年はちょっと歪んでしまっていました。」
「どうしてそんなことに?」
「周りの人間がお金目当てに近づいてくるようにしか見えなくなったのでしょう。」
お金を持つのも考えものね。お金のせいならその人はお財布を落とせば元に戻ったのかしら。
「じゃあ、昔の友達だった人というのは?」
「そっちは株のトレードをしていました。あまり才能はなかったみたいですが。」
「あ! 昔友達だってって、もしかしてその人もすでに……」
「いえいえ、そうじゃないんです。昔はただの友達だったんですが今は……」
「うちのかみさんなんです。」

―完―

180 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/28(土) 00:57:56 ID:7v7nC1Tc0
>>179
乙かれ
何というか、凄いな。色々と。
毎度期待を裏切らない完成度。
8fpmfOs/7w氏の作品は何となく星新一を思い起こさせる。

もう一度冒険の書1から読み直してくるわ

181 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/28(土) 02:35:51 ID:rqh23VtC0
ケージの台詞は古畑任三郎で脳内再生されていたのだが、
最後の台詞だけコロンボになったw


182 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/28(土) 03:41:16 ID:yB6M/cca0
いやー、今回も楽しくよませていただきました。
一番最後のオチが、びっくりでしたね。
それと、天空の花嫁との関係も意外でした。

183 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/28(土) 04:46:51 ID:yB6M/cca0
連投すいません。
冒険の書4を読み返していました。
嘘をつくには覚悟が必要なんです。たとえそれが相手のことを思う嘘であってもって、その言葉、ジンさんの心にしっかりと根付いてますね。
気づいたとき、正直鳥肌が立った。
すごいよ、すごいよ、8fpmfOs/7wさん。

184 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/28(土) 18:37:48 ID:8iIeyThQO
相も変わらず高い完成度、そして意外な結末、GJです
…って、ケージさんの台詞…
あの二人まさか…!

185 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/28(土) 21:40:26 ID:KE3JujeS0
タイトルやタイトルの文字数とかにまでこだわってるのが凄い
DQ1なら全1話
DQ2なら全2話でタイトルも2文字、前後の2つ
DQ3なら全3話でタイトルも3文字、上中下の3つ
DQ4なら全4話でタイトルも4文字、四字熟語
DQ5なら全5話でタイトルも5文字、五本指
DQ6なら全6話でタイトルも6文字、六曜

それぞれちゃんとタイトルに絡めて話が練りこまれているのは凄いとしか言えない

186 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/29(日) 00:34:11 ID:xspm4fUA0
>>185
ちょwwマジだよw
それに気付いたおまいさんも凄いな

…DQ7が書きにくくなったかも試練な

187 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/29(日) 02:56:17 ID:j5Zxe9YG0
>>185
げ、まぢかよ。
Sugeeeeeee

188 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/29(日) 11:13:40 ID:7P2zsQDgO
>>185
DQ6は六曜だけじゃなくて、六法もあるね
DQ7は一体どんなストーリーなるのか…、今から楽しみだw

189 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/06/29(日) 12:58:59 ID:0eYrqsLM0
8fpmfOs/7w氏にはもう、GJしか言えんわ…。


ちなみにDQ4は起承転結だったな。
ただ、本編のDQでもロト編と天空編の間に比べて、7・8は関連性が薄いし
(7の神様と3・6のゼニス、8のレティスと3のラーミアくらいか?)
あまり期待してプレッシャーをかけるのはいくない。と思う。

190 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/01(火) 14:55:05 ID:hl4opYnb0
ほしゅ

191 :親子1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/03(木) 03:41:03 ID:5tKe0/qk0
勇者宅は倉庫から目と鼻の先にあった。

おかーさーんただいまー

勇者が先頭で家に入る。ねーちゃんが俺とパンツの格好は物騒過ぎるから装備外して入った方がと耳打ちする。
だが時すでに遅し。奥から感じのよい女の人が出できた。

あらあらうちの子と一緒に旅してる方々ね。
まあなんておませさんな格好でしょうふふ。


???????????


さあさあ長旅で疲れてるでしょうしそんなとこで立ってないで奥に入って下さいな。
今腕によりをかけてご馳走を作ってるわようふふ。

あ…どーもッス…失礼します…

おませさん?ん?何を言ってるんだこのおばさんは…ちょっとアブねーぞ…

俺達は圧倒されつつも案内されるがままに奥に連れていかれテーブルを囲んだ。

ご飯ができるまでもうしばらくかかるからお茶でも飲みながらくつろいでいて下さいな!

そう言いながらテーブルにお茶とクッキーを並べる。

俺には紅茶の味の違いなんてさほどわからないがねーちゃんが絶賛していたからいいお茶なのだろう。
クッキーうまい。素朴な手作りの味だ。

腹が減っていた事もあってパンツと奪い合いながら目の前のクッキーを平らげた。

192 :親子2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/03(木) 03:43:22 ID:5tKe0/qk0
あらあらよっぽどおなかがすいてらしたのねえ。よかったらこれもどうぞ。

そう言ってテーブルの上にドンっと乗ったのは特大のケーキだ。

……でけえ。

小規模なウエディングケーキと言っても過言では無い。
勇者母はテキパキと切り分け俺の目の前にはケーキの塊が出現する。
パクッ。……うめええええええ!!!!!!!!これはうまい!!
何を隠そう俺は実は大の甘党なのだ。前の世界では総長という立場柄甘いものが大好き!などとは言えず
日本男児たるものは黙って醤油一筋などと訳のわからない事を言っていた。
たまらん!うますぎる!俺とパンツとピエロは物凄い勢いで食い出した。
ケーキなど無縁の旅だったからな。クリームの甘さが五臓六腑に染み渡るぜ…
大食漢三人相手にさすがの特大ケーキと言えどもみるみる減っていき最後の一切れになった。

睨み合う三人。

今にも殴り合いが始まりそうな空気だ。総長としてここはいさめなければなるまい。

ジャンケンで決めよう

俺のその一言に場の空気が変わる。

パ:ほう…総長はんどの口がそんな台詞を言えたもんでげすかねえ…
  あんたはあっしにじゃんけんで一度敗れている!!!さあルールを説明してもらおうでげすか!

ピ:じゃんけん…ルールを教えてもらおうか。「火達磨ピエロ」と呼ばれるギャンブラーのわしに
  勝負を挑むなど片腹痛いわ!

パンツ…覚えているとは思わなかったがなんでそんな偉そうに聞くんだ…
ピエロ…火達磨って褒め言葉じゃねーよ…毎回大火傷って事じゃねーか…ギャンブルの才能の欠片もねーよ…
まあいい。この面子なら負ける気がしない。そして俺には「例の秘策」もある…ククク…

193 :親子3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/03(木) 03:44:34 ID:5tKe0/qk0
一通り説明した。やはりパンツは理解していなかったが無視して先に進める事にする。

ではいくぞッ!じゃーんけーーーーんッ!ポンッ!!!!

……今だ!俺はタイミングをずらし伝家の宝刀後出しで攻める。この勝負貰ったッ!

まさに今決しようとした瞬間勝負は意外な決着を見た。

あらあらうふふ。まだありますからそんなあわてなさんな!

振り返るとそこにはさらにアホでかいケーキを抱えた勇者母がいた。

百戦練磨、数々の修羅場を潜り抜けた俺達ですら戦慄する。
うふふうふふと笑顔で切り分ける勇者母。チラッとねーちゃんの方に目をやる。

もう無理

声には出さないが唇は確かにそう動いた。
ク…いやだがしかしまだこれだけ食べれるんだ。むしろ好ましい状況じゃないか!

当然の如く10分後には至福の時は地獄の時に変わっていた。
あーもうお腹いっぱい!お母さんわたしも晩御飯の準備手伝うね!と勇者はこの場から消えた。
ねーちゃんも手伝うと言って消えた。残された男衆は目の前の強敵を睨む。
昨日の敵は今日の戦友だ。ここは共同戦線しかない。
まわりのクリームはピエロ、おまえにまかせた!パンツはスポンジを片付けてくれ!
おっさんは二人の援護を頼む!俺は上のイチゴを倒す!…………えっ駄目?


194 :親子4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/03(木) 03:45:15 ID:5tKe0/qk0
その後死闘を繰り広げた後山のようなケーキはその場からきれいに姿を消した。
勝った…まさか勇者の実家でこのような強敵に出くわすとは思わなかった。

下を向くと大惨事になりそうなので天井を見つめながら俺は思った。

あのおばさんアホだろ。


………。


ー次の日ー

明け方。
悪夢にうなされ目が覚めた。
糞でかいケーキの魔物にうふふうふふと言われながら喰われる世にも恐ろしい夢だ。
……昨日は本当に辛かった。
今後一年は甘いものを断てる。そう思わせるほど辛かった。

大体何が悔しいってちょっとお茶でも…のお茶でダウンしてしまった俺達は結局その後の
メインディナー所ではなかった。ねーちゃん曰くめちゃめちゃうまい肉だったらしい。

肉を食い逃がすとは俺とした事が…。あのおばさんは本当にありえない。
あのありえなさ具合が逆に勇者の母だって事を実感させる。
あの母にしてこの娘アリ…か。ここまでくると勇者の父親はどんな奴だったのだろうか。

興味は尽きない。

その後朝食のテーブルに一同並ぶ。珍しく寝坊したらしい勇者が目を擦りながら席に着いた。
そうか昨日はお母さんと寝るってちょっと照れながら言ってたもんな。
久しぶりに甘えながら熟睡できたのだろう。時々忘れそうになるがコイツは16歳の小娘なのだ。


195 :親子5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/03(木) 03:46:15 ID:5tKe0/qk0
朝食後勇者が駆け寄ってくる。あのね総長ちゃん出発の事だけど…ああその事か。別に急ぐ理由も無いし
もう2、3日ゆっくりしていってもかまわんだろう。勇者に向かってそう伝えようとした瞬間
今日のお昼前にでも王様の所に挨拶して出発した方がいいと思うんだ!と予想外の言葉が飛び出した。
………。おうわかったそうするか!みんなにそう伝えてきてくれ。
勇者には勇者なりの考えがあるのだろう。もしかして長居すればするほど出発が辛いのかもしれない。
この子は必死に自我を殺して世界のため平和のためと戦ってきた。その必死に堰き止めてきた心が
この世界で一番心の許せる母親と一緒にいる事でプッツリきれてもおかしくない。
おそらく本人もそれを感じていたのだろう。

こうして急ではあるが俺達は直ぐに出発する事にした。
勇者母に呼び止められる。このおばさんは苦手だ。うふふうふふでまた土産だとケーキ渡されたらどうしようか。
恐いもの無しのはずのこの俺様の背中を冷や汗が流れる。

総長さん。

な…なんスか…

あの子は戦いになんか向かない優しい子なんです。

………。

でも戦わなければなりません。「勇者の娘」なんです。

…………。

安心しました!

………?

血生臭い旅を続け心が枯れてしまっていたらどうしようかと心配していましたが
あの子は昔と変わらない笑顔で笑っています。それもこれも総長さんやみなさんのおかげです。
これからも…よろしくお願いします!

196 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/03(木) 04:16:51 ID:NjDGCeYR0
支援〜

197 :親子6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/03(木) 04:17:54 ID:5tKe0/qk0
……。何を言っているんだこのオバサンは。俺は何もしてねーしあのバカがいつも勝手にピーピー笑ってるだけだ。
不思議そうな顔をしている俺を見てオバサンはまたうふふと笑った。


さて。そろそろ本当に出発するか。
じゃーねーおかーさん行ってくるねー!カゼとかに気をつけてねー!
勇者は笑顔で手を振っていた。
……。とっとと魔王の糞馬鹿ぶっ飛ばしてーな。さっ王様の所にでも行ってやるか!

城に着く。

暫くみない間に逞しくなったな勇者の娘よ…。それにその仲間達も。
やはりおぬしは勇者と旅をする選ばれし者だったようだな。

…くそが…どいつもこいつも!なんだその言い草は!逆だ逆!俺がボスで勇者が子分なんだっつの!
がああああああとまくしたてようとしたが次の一言で口が止まった。

魔導師様の事だが…

言葉に詰まる。

いや、何も言わなくてもよい。夢に賢者様出てこられてな。全ての経緯は知っておる。
おぬしらがなぜここに来たのかもな。今のおぬしらにはこれを受け取る資格がある。

そう言って兵士に物々しい宝箱を運ばせた。当然中身はあのオーブだ。

198 :親子7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/03(木) 04:18:40 ID:5tKe0/qk0
さあ受け取るがよい。戦う力を持たぬ非力な者の代表として頼む事しかできず本当に申し訳ないが
魔王を倒して世界に平和をより戻してくれ。
魔導師様の事だがな、人には天命と言うものがある。魔導師様が蒔いた種が
今こうして活力ある若木に育ちいずれ大樹となるであろう。
おぬしらの顔を見ていると魔導師様の満足気な笑顔が見えてくるわい。

は、当然だな。俺は元々の天才的素質にプラスして超絶性格の歪んだあのじいさんと超弩S野郎の糞イケメンに
ゴリゴリにしごかれてんだ。ここまで強くなってじいさんが満足しないはずがない。
あとは魔王の顔面に右ストレートをブチこんでやるだけだ。

打倒魔王のモチベーションがいきり立った俺たちは城を後にした。

オーブも揃った事だし次はいよいよラーミアの復活だ。

出発を前にねーちゃんが酒を大量に買い込めと支持を出した。
え?いいの!?いつも必要最低限しか認めないねーちゃんが酒を大量に買えだと!?
パンツと俺は大喜びで酒場に走った。ふふふ買ってやったぜ。樽で10樽ほどな。

それらと食料や水を積み込む。出港の準備をしていると人がワラワラ集まってきた。
よく見ると勇者の母や酒場の女マスター、さらに王様やピエロまでいやがる。なんなんだ一体?

勇者様!どうかご無事で! おおあの子がオルテガ様の娘か!
生まれてくるこの子のためにも平和を! おねーちゃんまおうなんかにまけないでね!

ほうほうこいつら俺らを激励する為に集まったのか。まったくこれだから自分じゃ何もできない愚民は困る。
まあおまえらは家で茶でも啜りながらまってるがよい。この俺が魔王なんざ軽くノしてきてやるからよ。

そう言って俺は空に向かってイオナズンを唱えた。

ねーちゃんがまたやりやがったと冷たい目でこっちを見ている。
愚民共は腰を抜かして大騒ぎだ。はっはっはどうだ俺の力は。さて出発するか!


199 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/03(木) 04:19:40 ID:5tKe0/qk0
こんな時間に支援ありがとうございました!
今回はここまでです

200 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/03(木) 04:25:18 ID:NjDGCeYR0
総長様、執筆と投稿お疲れ様でした。
この時間だと書き込みが少ないから、規制かかりますよね。

うう、なんてあたたかい、いい話なんだ〜〜。
勇者ママンも萌へ〜。
王様の言葉もじ〜んときます。やっぱりふるさとって、あったかいものですね。
みんなの期待と声援を背負った出港(準備)シーンも、うるうるしちゃいました。
次回も楽しみに待ってます。

201 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/03(木) 20:16:07 ID:zFPW5C87O
乙!!

勇者ママ、17才でぇす♪

202 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/03(木) 21:51:10 ID:n4Rsb46E0
総長さん待ってました!勇者の母ちゃん強いwww

203 : ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:13:14 ID:s5aQgiCe0
お久しぶりです。
やっとこさスランプ脱出できそうです。

勢いに乗って第16話を投下します。
早朝ですので、規制に引っかからぬようまったり投下しようと思います。

204 :唯彼独尊【1】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:16:05 ID:s5aQgiCe0
甲高い悲鳴のような音をたて、顔が砕けた。
氷雨のように飛び散る冷たい飛沫を前に彼女は居た。

「ゲマ様!いかがなさいましたか!?」

どたどたと足音を荒げて部屋になだれ込む二つの異形。
それには答えず。憎悪に満ちた視線によって打ち砕かれた屑星の中、
主は静かに口を開く。

「お二方に問いましょう。貴方達の働きは誰の為のものなのです?」

主から発せられた脈略のない問いに、不可解な表情を浮かべる二人。
それも一瞬の事。すぐに姿勢を正し、主の前に跪き返答する。

「私とゴンズの役目はゲマ様…しいては魔王様の理想実現のために尽力する事…」
「ジャミの言う通り。あっしらはゲマ様と魔王様のためならいつでも動きますぜ。」

従者として実に模範的な解答。それを聞いた魔女が短く笑った。

「ほほほ…貴方達に聞いた私が愚かでした。良い、下がりなさい。」
「しかしゲマ様…」
「聞こえませんでしたか?二度は言いませんよ?」

魔女はその視線を向けただけ。
ただそれだけで、魔族の中でも高位に位置する二人は慌てたように部屋を後にする。

「ほほほ…愚かな教祖も、三流魔王も…狭い世界で抗っていれば良いでしょう…
 まぁ…私の抗いも定めの中では無駄なのでしょうかね…」

誰もいなくなった部屋で自嘲気味に笑う魔女。
毒々しい紫の瘴気が漂う空間に、綺羅星のように鏡の破片が輝く。

205 :唯彼独尊【2】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:19:57 ID:s5aQgiCe0
         ◇
さっきまでの凶暴さが嘘のように、喉を鳴らしてサトチーに擦り寄る魔獣。
その行為自体は微笑ましい光景なのだが、如何せん体格に差があり過ぎて、
どう見ても襲われているようにしか見えない。
まあ、当のサトチーが嬉しそうにしているからいいけどね。

「なんと。サトチー様とそちらのキラーパンサーは旧知の仲でありましたか。
 知らなんだとは言えとんだ無礼を…」

十年前。当時のサトチーに付き従い、様々な冒険を共にしたモンスター。
天涯孤独の身であるサトチーの幼少期を知る唯一のモンスター
それがこのキラーパンサー。
なるほどね。戦闘スタイルがサトチーに似てたのもその影響かな?

剣を向けた相手が主の戦友であった事を知り、平伏するピエール。
キラーパンサーにもみくちゃにされながら、サトチーが微笑みを向ける。

「最初は僕も気付かなかったよ。あんなに小さかったのに、すっかり大きくなって…
 そうだ、改めて皆に紹介しておこう。彼は僕の初めての仲間モンスター。
 彼の名前は…………」

そこで、サトチーの言葉が止まる。
言葉を止め、表情を止め、動きを止め、ただその口元が僅かに動く。

「名前…あれ?…プックル…ソロ…チロル?…いや、アンドレ…ボロンゴ?」

じっとキラーパンサーを見つめたまま固まるサトチー。
なぜか、その顔には困惑が浮かぶ。

「…サトチー卿…惑わされるな…正しい記憶は一つだ…」

戸惑い、視線を宙に泳がせるサトチーにスミスが静かに言葉をかけた。

206 :唯彼独尊【3】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:24:56 ID:s5aQgiCe0
「済まない。少し疲れたのかな…一度に色んな思い出が蘇って混乱してしまったよ。
 …そう、彼の名前はゲレゲレ。仲良くしてやってね。」

―ゲ…ゲレゲレ?なんつうか、凄げぇネーミングセンスだな…

「何と素晴らしいお名前!ゲレゲレ…実に気高く優雅な響き。」
―☆☆☆!!―
「ピエールとブラウンもそう思うかい?実はビアンカが考えた名前なんだけどね。」

工工エエェェ(´д`)ェェエエ工工
―何コレ?俺のセンスがおかしいの?それともこれも世界の壁ってヤツ?

仲間との微妙な温度差に凍えそうになる俺。

「…この後はどうするのだ?ゲレゲレが無害な魔物だったとしても…
 あの村の人間がすんなりと受け入れるとは到底思えぬ…」

話の流れを変えてくれたのはスミス。マジ感謝。

「大丈夫だよ。あの村の人達も事情を話せばきっとわかってくれるだろうさ。」

相変わらずゴロゴロと喉を鳴らしてサトチーに懐くゲレゲレ。
その豊かな鬣に手を入れ、優しく撫で上げるサトチーは幸せそうだ。
でも、あの村の人間たちにとっては畑を荒らしまわった憎い魔物なわけで…
サトチーには悪いがスミスの言うことも納得できる。

「…やはり無駄か…ならば魔物が現れないうちに脱出するべきだ…」

くるりと踵を返し、洞窟の出口に向かって歩き出すスミス。
その無礼な振る舞いに奥歯を噛み締めるピエールをなだめ、俺達も後を追う。

さて、果たして受け入れてもらえるかね?

207 :唯彼独尊【4】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:31:36 ID:s5aQgiCe0
「こんの化け物どもが!!」

受け入れてもらえませんでした。
むしろ、殺気立った村の住民に囲まれてピンチ。

まぁ…受け入れてもらえないのも当然と言えば当然なんだが、間の悪い事に
自分達で魔物を討伐しようと、俺達の後から洞窟に入った村人がいたらしく、
さらに、その村人にサトチーがゲレゲレを懐かせた所を見られたらしい。

その場面だけ見たら村を荒らした魔物の一味と勘違いされても当然なんだけど…

「ゲレゲレが村に迷惑をかけたことは許される事ではありません。
 ですが、彼は完全に改心しました。これからは村に迷惑をかける事も…」
「お前らと話すことなんかねえ!!」

ごつっ!!

「サトチー!!」
「おのれ!無礼な…」

村長が投げつけた茶碗が額に当たり、サトチーの言葉が強制的に中断される。
周囲からは『化け物』だの『火炙り』だの物騒な罵声が浴びせられ、
鎌やら鋤やらを手にした村人達は、自分達の言葉でヒートアップして暴走寸前。

―なんだよこれ…本当なら村を救った恩人として感謝されてもいい場面じゃねえの?

「駄目だ!手を出すな!!」

額から一筋の血を流したサトチーが片手で俺達を制する。
爆発しそうになる感情と、喉元から漏れ出しそうな怒声をぐっと飲み込む。
同じ様に耐えているブラウンは涙目で全身をわなわなと震わせ、
固く握りこまれたピエールの両拳から滴る緑色の液体が床をわずかに湿らせる。

208 :唯彼独尊【5】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:42:26 ID:s5aQgiCe0
「駄目だスミス!村の人たちを傷つけては…」

意外…サトチーの制止に従わず、殺気立つ村人達の前に進み出たのはスミス。
相変わらずの無表情からは一切の感情を読み取ることはできないが、
その気になれば息を一つ吐くだけで、この部屋丸ごとガス室にできる。

「スミス…駄目だよ…」

懇願するように搾り出されたサトチーの声。
その声を背に受けたスミスは首を僅かに傾ける。

「…案ずるなサトチー卿…私はこの者達を傷つけるつもりはない…
 …そして…この者達も私を傷つけることはできぬ…であろう?村長…」

ゆるりと歩を進めるスミス。見る見る青ざめる村長の顔。
何か、とてつもなく恐ろしい物を目の当たりにしたような強張った表情。
その乾いた唇を呼吸困難の金魚のようにパクパクとさせている。

「…気付いたか?…では選択しろ…私と共に灰と化すか…和平か…」

しん…と静まり返る部屋。
殺気に満ちていた村人達も、村長とスミスの間に漂う異様な雰囲気に飲まれたように
微動だにしない。

「…で………いけ…」

村長の乾いた唇から微かに漏れ出した声は形になっていない。
すぅっと一息、大きく深呼吸をした事で、村長の言葉がようやく形を成す。

「…出て行け!一秒でも早くこの村を去れ!!」

209 :唯彼独尊【6】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:45:44 ID:s5aQgiCe0
「…ご迷惑をおかけしました。僕達はゲレゲレを連れて村を出ます。」
「この…疫病神ども!二度と村に近付くでねえ!!」

―言われなくてもそのつもりだ。気分悪りぃ。
もし、どっかの魔王に『世界の半分をやる』って言われても、
この村だけは熨斗をつけて返品してやらあ。

「…みんな、行こう…」

額の傷口を押さえるサトチー。赤い鬣をしおれさせたゲレゲレ。
その背に乗るブラウン。怒り心頭のピエールの順で村長の小屋を後にする。

「…貴様等は…何度でも同じ事を繰り返すのだな…」

俺の前を歩いていたスミスが、村長の小屋を出る直前に呟いた。
ゆっくりと殺気立つ村人達へ向きなおり、濁った声を投げかける。

「…新たな流れを模索する道の中…堂々巡りを望むのならそれも良い…
 …独楽鼠のように永遠に同じ場所を回っていろ…」

―何を言ってるんだ?

「…行くぞイサミ…変化を拒む愚者にかける時間など無為だ…」
「お…おう。」

スミスの言葉。どんな意味があるんだろう?
聞いたところで曖昧にはぐらかされるか、俺には理解できないかだろうけど…
永遠に同じ流れ…新たな流れ…俺は大事なことを忘れている気がする。

誰も言葉を発しようとはしない。
ただ、それぞれの胸の内に悶々とした物が広がっているのが言葉以外で感じ取れて…

210 :唯彼独尊【7】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:51:32 ID:s5aQgiCe0
「みんな…辛い思いをさせてしまって…すまない。」

サトチーが静かに…口を開いた。
一番辛そうなのは、他の誰でもなくサトチーなのに。
その横ではゲレゲレが ぐぉん―と力なく喉を鳴らす。
ふさふさの尻尾を足の間に巻いて、叱られた犬のように目を伏せている。

「違うよ。ゲレゲレが悪いんじゃない…少しイタズラが過ぎたかもしれないけど、
 ゲレゲレも、あの村の人達も、もちろんみんなも、誰も悪くないんだよ。
 みんなに辛い思いをさせたのは僕の不甲斐なさだよね…」

サトチーがそのしおれた鬣の中にふわりと手を入れ、優しく撫でてやると
伏目がちだったゲレゲレがふにゃあと甘えた声を出した。

「サトチー様は我々を愚弄されるのですか?」

荷物を積み込んでいたピエールがその動きを止めた。
その声はいつもの忠臣ピエールの声ではなく、心なしか怒りの色を感じさせる。

「私にとっての誠はサトチー様に身命を賭してお仕えする事。
 サトチー様を否定する事は我々の誠を否定する事。それは即ち我々を否定する事。
 それが…サトチー様自身によるものだとしてもです。」

…なるほどねぇ。やっぱ、ピエールは忠臣だわ。
当のニブニブサトチーは真意がわからずに混乱してるみたいだ。

「いや…僕はそんなつもりで言ったんじゃあ…」
「さっき自分でピエールに言ったろ?自分自身を否定する事を今後一切禁じる。
 信念に従った行動を後悔する事…それも今後一切禁じる。
 部下に命令したことは自分でも守らねえとな。」

211 :唯彼独尊【8】 ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 04:55:23 ID:s5aQgiCe0
そこまで言ってやっと意味がわかったのか、サトチーの顔に笑みが戻った。

「言葉が過ぎました。申し訳ありません。」
「いや、ありがとう。ピエール。君達の信念を無碍にするわけにはいかないね…
 よし!そろそろ出発しよう。」
「じゃあ、とりあえず一回ポートセルミヘ戻るってことで良いのかな?」
「そうだね、ポートセルミを経由して次は西の街に向かおう。」

ぱちーん!と勢いよく自分の両頬を叩いたサトチーが馬車の手綱を握る。
西日が鋭角に差し込む獣道を走る馬車。
その足取りに迷いはない。







イサミ  LV 16
職業:異邦人
HP:77/77
MP:15/15
装備:E天空の剣 E鉄の胸当て
持ち物:カバン(ガム他)
呪文・特技:岩石落とし(未完成) 安らぎの歌 足払い ―――

212 : ◆Y0.K8lGEMA :2008/07/04(金) 05:00:29 ID:s5aQgiCe0
第16話一気に投下完了です。

しばらくは鈍足投下が続きそうですが、じわじわ続けますので
どうぞ最後までお付き合いをお願いします。

213 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/04(金) 08:11:14 ID:Wc2NRk6a0
復活おめ!
スミスの正体がますます気になるよ


もっと気になるのはDS版で追加される嫁候補?が追加されるかどうかだけどw

214 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/04(金) 08:36:16 ID:R5xa6pBXO
だんだんと物語の核心が見えてきそうな展開だな、乙!!

そしてデボラは頼むからピピンとかと同じサブキャラであってくれ…

215 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/04(金) 09:56:31 ID:U9HjnaXp0
乙です!

DS版も気になるところだが、GEMAさんには
GEMAさんの物語を書いてもらいたいです

216 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/06(日) 01:07:39 ID:vIMp/EhH0
カボチ村の連中、相変わらず胸糞悪いですね。
それにしても、スミスの一言で態度が変わる村長。そして、スミスの言葉。
なにかスミスとこの村の間には因縁がありそうですね。
今後の展開が楽しみです。

217 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/06(日) 07:57:30 ID:fv0POayzO
>>216
メガンテの腕輪をつけてるスミスを攻撃するとですね、腕輪がドカーンで
村人総砕けちりなわけですよ…

218 :お呼び出し:2008/07/06(日) 12:13:05 ID:u6X93chk0
携帯まとめ人より職人様のお呼び出しを申し上げます。

>暇潰し様
テキスト掲載についてご相談があります。
下記「避難所、まとめサイトについて」までお越しください。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/40919/1193451299/24-27

219 :ラーミア復活!?1 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:36:04 ID:VeYPADAv0
アリアハンから出港してはや10日。日に日に肌寒くなっている。
どうやらそのラーミアとやらが封印されている場所は俺の世界で言う北極とか南極とかそんな感じの場所らしい。
まあそれはいいんだよ。今更どんな僻地に行こうがビビッたりはしねえし。ただ問題が一つ

総長さん!あなたはメラやイオ系の呪文の威力には目を見張る所があるわ。
ただヒャド系の呪文に関してはまだまだ修行が足りないわね。大自然の雪と氷を肌で感じる事は
きっとあなたの魔力を飛躍的に伸ばすきっかけになるわ!バシバシいくわよ!

……帰りてえ……


さらに10日ほど航海したのちようやく目的の大陸に着いた。
寒いなんてもんじゃねえ。ねーちゃんが酒を買い込んだ理由がわかったぜ。
パンツと俺は樽を一つずつ担ぐと雪の積もった氷の大地に踏み込んだ。

見渡す限り銀色の世界。
太陽の反射に目が眩む。


さて。どうしたものだろうか。着いたはいいがここからどう進んでいいのかさっぱりだ。
この状況からして遭難=死あるのみ。今は晴れているがいつ吹雪くともわからない。

私にまかせて。


ねーちゃんがそう呟く。………………。しばらく精神を集中させたと思うとスッと指を指した。

220 :ラーミア復活!?2 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:37:25 ID:VeYPADAv0
あっちの方に強力な霊場があるわ。おそらくそこにラーミアが封印されているはずよ。

ほうほう心眼って奴ですかい。さすがだ。よしこれで迷う事は無さそうだ。
ねーちゃんの指示のもと俺達は歩き出した。


と、突然轟音と共に地面が盛り上る。

敵だ!おまえら構えろッ!

目の前には氷のデカブツと雲の塊が数匹ずつ。フヘへへ。顔がにやける。

ちょっと!総長ちゃんなんでそんな嬉しそうなのよ!

勇者が叫ぶ。当然だ。船の上の戦闘では海上への呪文による遠距離攻撃が多くろくに剣を振るえなかった。
しかしここならこの超強力な新相棒を思う存分振り回せる!
勇者とねーちゃんは雲を魔法で頼む!俺とパンツはあのデカブツをカキ氷にしてやるぜ!

いくぜゴルァアアアアアアア!!!!!!!!

敵の中心に向かって突撃だ。

ッしゃああああおらああああぁぁぁぁァ!!!!!

全身全霊を込めてはかいのつるぎを振り下ろす。








221 :ラーミア復活!?3 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:39:09 ID:VeYPADAv0




一撃。





一撃で5mはあろう氷の塊がバラバラになった。
なんだろうこの感覚は。このはかいのつるぎもそう、じごくのよろいもそう、ふこうのかぶともそうだ。
身に着けるとそれだけで全身の筋力が強化されたような、そんな錯覚に陥る。
実際腕力は格段に上がっている。

総長殿!後ろですぞ!

おっさんの声と同時に背中に強烈な衝撃を感じる。吹っ飛ぶ俺。
大丈夫!?と勇者とねーちゃんが駆け寄った。

………?

何事も無く立ち上がる。まあ確かに痛いは痛いのだがあのインパクトにしては
ダメージが残って無い。……こいつは凄いぜ…。

どっしゃあああああアアああ!!!!

奇声と共に残りの氷の塊をパンツが砕いていた。こいつのまじんのおのとやらも半端無い。

凄い…。二人とももう人間の域じゃないわ…。


222 :ラーミア復活!?4 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:40:28 ID:VeYPADAv0
ねーちゃんが息をのむ。
残りの雲を勇者が焼き払う。
うん、今更だが俺達は確実に強くなっている。
ここまで色んな事があった。本当に色んな事があった。

………いくぞ!

ラーミアを復活させたら俺の野望もいよいよクライマックスだ。




ねーちゃんのおかげで迷う事なくラーミアとやらが封印されている祠についた。
まったく霊感みたいなものが無い俺ですら何となくビリビリくる。
こいつは確かに凄い場所…のような気がする。

扉は軽く触れるだけで開いた。

一本道なのでとにかく奥に進む。広い部屋に出る。


おおおおおおおおおおぉおぉォオォ!!!!!


目の前にはバカデカイ卵がある。かろうじて全体像で卵だと認識できるが
もはや卵ってレベルじゃねえ。

一目散にダッシュで近づいてみる。………。俺は俺の中に沸き起こる衝動を必死に抑えた。
叩きたい。思いっきり叩いてみたい。こんなデカイ卵なんて割ってみたいだろうがチクショウが…
誰も見てないのを確認するとちょっとだけ剣で叩いてみた。
鈍い金属音が鳴ったが傷一つついていない。
ゴクリ…さすがは伝説の卵だぜ…

223 :ラーミア復活!?5 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:41:36 ID:VeYPADAv0
何気に隣を見ると俺以上にヤバイ目つきの男がいる。パンツだ。
総長…この卵だと目玉焼き何個作れるでやんすかね…
いやでどんだけかくても卵一個なら目玉焼きも一個しかできねーだろこいつは本当にどうしようもない馬鹿だな
なんて思ってる間にパンツは目いっぱい振りかぶるとフルパワーでまじんのおのを振り下ろした。

かいしんのいちげき!

ガキィィィィイイインと轟音が響く。が、やはり卵には傷一つ無い。
こいつがすげーぜ!さすが神龍の卵だ。俺たちごときの攻撃など屁でも無い。
期待できる!でき過ぎる!さあとっとと復活させようじゃないか!

…………コラ……

今まで聞いた事の無いドスの聞いた声がする。
凄まじい殺気だ。振り返るとそこには外の吹雪よりも冷たい目をしたねーちゃんがいた。

で、あなたたちは何をしてるの?

いや何って言われても…。ちょっとした破壊衝動に駆られただけで…


このものからは
このものからは

何か不思議な邪気を感じます
何か不思議な邪気を感じます

本当にあなた方は
本当にあなた方は

選ばれしものたちなのでしょうか
選ばれしものたちなのでしょうか

224 :ラーミア復活!?6 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:52:11 ID:VeYPADAv0
急にステレオで謎の声が聞こえる。
よく見ると勇者の両肩に人形サイズの女の子乗っている。
なんだなんだてめーらどっから沸いてきやがった?

目の前にいたよ!総長ちゃんが無視して走って行っちゃったんでしょ!
と勇者が言う。しらねーよこんなチビ視界に入るかっちゅーの。


ラーミアは神の使い

ラーミアは神の化身

人間程度の力では 傷つける事など できません


くっ…ドちび助の癖に何を偉そうに…
傷つける事などできませんだあ?燃えるぜバカヤロウ!

…やめなさい

ねーちゃんに凄まれてしぶしぶと下がるパンツと俺。
部屋のはじっこに追いやられて復活の儀式とやらを見守る事になった。

勇者とねーちゃんとおっさんが部屋に卵を中心として均等間隔で配置してある祭壇にオーブを置いていく。
全部置き終わった所でさっきのちび二匹が卵の前で光り始めた。


さあ いのりましょう
さあ いのりましょう

時は きたれり  今こそ 再び 目覚める時。
大空は おまえのもの  まいあがれ 空高く!

225 :ラーミア復活!?7 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:53:05 ID:VeYPADAv0
ピキッ…!

おお…!あれだけ硬かった卵にあっさりとヒビが入る。

ヒビは次第に広がってゆき亀裂から光が漏れる。





………ゴクリ…。




そしてついに殻中に亀裂が入ると一気にこそげ落ち破片は消えてしまった。

中心にはまばゆい光の塊がある。

その光が徐々に収まっていくと共に中の物体がうっすら見えてくる。




ピッ…ピィィィィイイ!!!!!!!!ピィ!!

226 :総長 ◆Lh6WfP8CZU :2008/07/08(火) 09:54:00 ID:VeYPADAv0
今日はここまでです
まとめの方いつもありがとうございます!

227 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/08(火) 10:19:50 ID:/IttdIy10
乙であります

228 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/08(火) 15:59:29 ID:SzSyDQw30
おお、ついにラーミア復活。
卵相手に会心の一撃、和良た(wwww


229 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/08(火) 16:12:54 ID:p0NBb7Ql0
人形サイズの女の子
…小美人か!!

230 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/08(火) 17:44:25 ID:jr4TF+vqO
このパーティはどう考えても世界救うために旅してるようには見えないだろ…
総長パンツ的に考えて…

231 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/08(火) 20:22:30 ID:P2FQgwbXO
総長今回も乙
人形サイズの女の子ってモスラのあれかよwww

232 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/11(金) 17:14:41 ID:TOFTVcGP0
hosyu

233 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/13(日) 12:37:04 ID:9XWP3i5gO
保守
勇者は俺の嫁
勇者母は俺の義母

234 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/14(月) 06:53:05 ID:QmHnM3BpO
勇者祖父は?

235 : ◆Tz30R5o5VI :2008/07/15(火) 15:43:58 ID:vwXT79x+O
保守といこうか

236 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/17(木) 08:20:06 ID:+vNDXoQRO
ほっしゅるぅ〜

237 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/18(金) 22:06:30 ID:wRFq03eE0
hosyu

238 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/20(日) 03:25:55 ID:a76HweYx0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(2)


「とまあボヤいてみたけど品種改良とかやってみたら面白いと思うんだけどな」
コシヒカリとか見てみろ、ありゃもう農家と偉い学者さんの血のにじむような努力の結晶だ。
時間こそ長くかかるが凡人でもやっていける道のりだ。
その間に何度か世代交換があるがその辺は勇者パワーで何とか。
現代に戻るのが無理ぽいなら田畑耕すしかない、この辺を見ればまだ開拓できる土地は有り余ってるし。
つーか、人類未踏の地のほうが多い気がするんだがそこんとこどうよ。
「ぶっちゃけ魔王が居る害ってのが理解できねーしなあ」
飯さえくってりゃ体力無限大だし、幾らでも仕事をこなせるぞ俺、そのためには種モミをかっさらってくる必要があるが……。
しかしモヒカンやろうにも敵は厖大、人類の敵は人類とネルフの偉い人も言ったわけで。
ヤツら魔物にはビビるくせに勇者には冷たいもので、完全に舐められてるぜ。
「あの勢いで魔王のとこまで攻めいりゃ今頃人の世が戻っていたろうに」
まああそこまで軍隊を派兵しようと思ったら兵站が破綻するだろうが……。
中世クラスの、しかも底辺っぽい感じの農業力では辿り着く前に朽ち果てる予感。
「略奪が基本だろこの時代、各自食糧装備集めろじゃ士気最悪の国力ガタ落ちだろうな」
徴兵で主な働き手分捕ったら国傾く、いや余裕で瓦解する。
先にも言ったが品種改良という概念が存在しないし、農業科学も発展していない。
ぶっちゃけ中世と言ったが古代級の生産能力だ、しかもこの大陸は旅の扉まで封鎖しているから物流がない。
定期船は存在するが魔物の襲撃を恐れて大規模な艦隊を組んでるわけでもなし。
「慢性的な飢餓と厭戦感、それに社会不安と鬱憤が溜まれば勇者が希望になるわけか」
四人ほどのパーティーなら動かす余裕があるってことだな、だからこそ俺の裏切りは相当堪えたってことだ。
「海渡れないだろうか、エルフに眠らされたあの村なら人一人隠れて住めそうなんだが……」
呪いを恐れ人も立ち寄らないし荒廃しているとはいえ雨露を凌ぐ屋根に道具が手つかずで残ってるはず。


239 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/20(日) 03:27:29 ID:a76HweYx0
何となく思ったんだが。

「魔王の目的は『恐怖』なんじゃねえかなあ……いや、もしくはどうしようもない絶望か」
もしくは緩やかな人類の衰退だな、魔王ってシロモノは相当イイ趣味をしているようだ。
「どう考えてもドSに違いない、絶対どこからか俺のこと監視してニヤニヤ笑ってるんだぜバラモスとゾーマの野郎」
そう考えると腸が煮えりそうになるが我慢我慢、こんなところで叫んで木をぶん殴ったら魔物に気づかれる。
俺にとって恐ろしいのは大量のモンスターの襲撃だ、数が多かったらどうしようもない。
幸いにもこの辺の分布を考えればさほど強いのは居ないが昔のエロい人は言った、戦争は数の暴力であると。
未完のビジュアルクイーン……じゃなくて、決戦兵器である俺には微妙すぎる。
広域戦闘魔法でも使えるようになれば「HAHAHAHAHAHA、今までの恨み晴らすべし!!」とでも笑いながら間引きを行うんだけど。
「国王のおっさん土下座して謝って許してくれないだろうか、せめて専門教育だけでもやってくれないとマズい」

なあんて一人トリップ天国に陥ってると何やら悲鳴。
あー、俺バカだは、こんなにも森がざわめいているのに――

「自分の殻に閉じこもって気付かなかった」
己の勘が警鐘を鳴らす、本格的に危険なシグナル、そして俺は聞いてしまった。
人の悲鳴、どうしようもなく絶望的な悲鳴、魂の底からひねり出す悲鳴、人生の末期、ただいちどだけ許された絶叫を。
現代人が失ったのは思いやりの心だとか、だけれども、俺のそばで、今、失われる命があるということは、絶対に、許容、できない。
次の瞬間には俺は風になっていた。
それは暴風だった。勇者とは即ち勇気あるもの、それは自らに向けるに非ず、それはどうしようもなく放射線状に内側から外側に伸びる力。
だからこその勇者、そのためのブレイブ・ハート。最後の武器は自分の勇気ってこと、それは決してケミカルではない。

単眼の巨人が居た。
その足元にはよく分からないが人の影がある。
正体がバレるなんてことはそのとき全く考えもしなかった。
だからこそその勇気はどうしようもなく本物で、怒りの鉄拳が空気の弾ける音ともに放たれた。

240 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/20(日) 03:29:00 ID:a76HweYx0
(3)に続く

ひたすら短い。
というよりもブランクがありすぎてどこまで書いたか記憶にございません。

241 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/21(月) 12:29:49 ID:kVg5M2aD0
キタ━━━ヽ( ゚∀)人(∀゚ )人( ゚∀)人(∀゚ )ノ━━━ !!!
待ってました!

正直めちゃめちゃおもしろい。
言葉の選択がシャープで重くて、いい意味でゾクゾクします。
ゆっくりでいいのでぜひ続けてください。次回も楽しみにしています!


しかし……主人公のバイタリティ半端ないですね。
この極限状態でよくまあこんなクールに考察できるなぁ。
ちょっと方向性は違うと思いますが、村上龍の5分後の世界を思い出しました。

242 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/22(火) 01:40:10 ID:ZQZp1qVIO
保守

243 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/23(水) 08:47:00 ID:V5DaLLXi0
保守

244 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/24(木) 00:27:47 ID:LijMPjN30
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(3)

全てのモンスターに言えることだが一目見ただけで理解した。
あれこそがただ暴力に特化した存在であると、その中でも目前の敵はその更に上を行くことを。
軽く見積もって3m、笑えるまでに逆三角形とそれでぶん殴られたらスイカみたいに弾け跳びそうな棍棒。
俺の鉄拳クリティカルヒットしたはずなのにびくともしない絶対装甲に涙しそう。
あれは無理だ、レベル差が激しすぎる。
「棍棒?嘘だ!!それ電柱だろ常識的に考えて」
風を切る音とともに俺のすぐ横に強烈な音ともに地面が爆散する。
曖昧3cm、人が見ていなかったら漏らしてたぞ多分。
幸い、突然の介入者によってモンスターの意識が削がれたのか悲鳴を上げた人物は無事だった。
ここで俺は落胆した、どうみても気絶したジジィですありがとうございました。
「ちくしょう、ここは美人の姉ちゃんのフラグが立つところだろ、この世界は優しくない!!」
知能が低いとは言え戦闘種族、あまりにも的格な攻撃に怯みながら避ける、避ける、避ける。
この優しくない世界で俺はひたすら逃げまくったせいかレベルアップ時にすばやさだけ極端に上がったようだ。
少なくともあんな大雑把な攻撃当たってたまるものですか!!

245 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/24(木) 00:28:23 ID:LijMPjN30
軽いことは軽いが追撃がヤバイ、あの体型でありながら愚鈍とは言い難い。
多少地形的に有利であるが何あのブルドーザー、木々へし折って走ってやんの。
後ろを振り返り、何とも言えない形相で追跡を行うモンスターを見る。
「どう考えても弱点はあの目だろうな、あそこだけが筋肉に覆われていないんだし」
石でも拾って投げつければ若干足が止まるかもしれない……が、ピッチャー返しが一番恐ろしい。
あの筋肉で勇者の投げた石が返されたら力積的に考えてどうなの、俺死ぬの?体に穴空くの?
木々の枝をつたいながら忍者気分、こっちがあちらに優位なのって結局機動力だけなんだよね。
しかも石を回収するには下に降りなければならない、となるとヤツの棍棒の攻撃圏内に入るってことだ。
「却下だ、却下、無理ゲーすぎて困る、そんな上手くいくわけがない」
俺にとって最良の選択肢はアレに見つからないこと、でなければ詰む。
この勝負始まる前から勝敗が決していてガチハードモード、つか息が切れそうなんだけど。
なぜアリアハン周辺であんな高レベルモンスターが居るんだ?
ルーラが使えるほど知能があるとは思えないし、かと言ってあんな存在は見たことがない。
というよりも、強力なモンスターの発生はスライムやおおがらす、いっかくうさぎにとっても脅威になるわけで。
モンスターの世界も弱肉強食、共食いなんてざらですよ。
つーか種の根源的に考えて共食いよりもまず自分より立場の低いものから食うわけだろ?
なのにモンスターはわんさか居る、雑魚モンスターすら駆逐できない人類があんなバケモノを間引くなんてことはありえない。
「となると、外来種である可能性が高い、誰が持ち込んだんだよあのバケモノ」
うすら寒い、待てよ、そもそもアレはこの世界に存在して良いものか?
記憶が曖昧だから不確かだが、そもそもVには……

246 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/24(木) 00:29:41 ID:LijMPjN30
「あぶねっ!!」

爆裂音と共に足元が揺らいだ、雑念俺殺すとか洒落にならない。
逃走時に余計なことは考えたららめー。
しかし、じり貧すぎて困る。装備が布の服って時点でファンタジー舐めてるけど誰か剣プリーズ。
ナイフでもあれば一方通行ブーメランでも作って装備するんだが。
あー、そういやジジィ泡吹いて痙攣しててキメェ。

「おーい、じじー起きろー死ぬぞー、足あるんなら走れー」
まあ、腰抜かして気絶するようなジジィに走れというほうが酷だが。
ぶっちゃけ起きてくれたらうれしい、惚れるとか惚れないとかそんな問題は抜きで。
気絶した人間は重心が安定しないというか、なんというか、こう、違う。
ぐにゃってるわりには硬いし持ちにくい、質量的には俺のほうが小さいわけで、何この10歳児。

「町でも逃げ込んで衛兵やら傭兵を引きずりだすか、却下だな、国家転覆ーとか言って打ち首にされかねん:

そもそも装備の関係上アレに対抗するべき手段がない。
アリアハンは恵まれている、モンスターの驚異度という点で見れば。
銅の剣さえあれば訓練を積んだ兵士なら倒せる敵しか発生しないからだ。
だから……強力な武器が流通しない、王は魔物も恐れるが――

247 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/24(木) 00:30:14 ID:LijMPjN30
人間も恐れる

過度の装備はそれだけ王政を脅かす、魔法使いの反乱を抑えられなかったのも理由の一つにあがる。
反乱、というが実質的に考えれば革命だ、まだ人間の世の頃、平和を享受している時、革命が起りかけた。
この平和な世界に王は必要ない、むしろ重税を課す王は悪であると。
魔法使いとはすなわち貴族や僧を除けば限られた有識者だ、人による人の支配の否定を行おうとしたのだ。
それがどれだけこの世界に激震を与えただろうか、支配階級にとってその特権を失うことは一番恐ろしいことだ。
はっきりと言えば死よりも恐ろしい、だからこそ驚異度の低い地方では武器の持ち込み制限がある。
身を護るのは当たり前のことで武器は比較的手に入りやすい、これを取り上げては不満は募る。
しかし、それが度を過ぎるのはよくないと考えた。
特権を除いてこの辺の傭兵たちはろくな装備を持っていない、エンチャント装備なんてもっての外だ。
あれは半永久的に道具として使用すれば魔法を行使する魔法使いたちの置き土産、その所持は極刑に値する。

「って、またトリップしちまったじゃないか、思考トラップはマズい」
その罠を自分で仕掛けたとあってはお話にならないとも言う。

「う、うぅぅ……」
胸元でうめき声がした。
あージジィもう少しで覚醒ですか?いまどき眠り姫なんて流行んないからさっさと起きろと。

248 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/24(木) 00:33:38 ID:LijMPjN30
(4)に続く

>>244
ジジィを背負い、走り出す十の夜。
>>245
と合間に入るはずだった一行が抜けてしまった
あってもなくてもいいけど今書くとほんとマヌケすぎる


249 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/24(木) 02:54:22 ID:72C7D6Iu0
ぅぅうお乙うぅぅっ!!!!!!!!!!
なんでアリアハンにザ・痛恨の一撃がwww

しかもシビアな世界観!
続きにwktk〜。ジジィはよ起きろw

250 : ◆I15DZS9nBc :2008/07/26(土) 19:04:13 ID:MMxMhX3C0
特権を除いてこの辺の傭兵たちはろくな装備を持っていない、エンチャント装備なんてもっての外だ。
あれは半永久的に道具として使用すれば魔法を行使する魔法使いたちの置き土産、その所持は極刑に値する。

置き換え→

特例を除いてこの辺の傭兵たちはろくな装備を持っていない、エンチャント装備なんてもっての外だ。
あれは道具として使用すれ半永久的にば魔法を行使することできる魔法使いたちの残した最高の置き土産、その所持は極刑に値する。
魔法とは生物の内部エネルギーたる魔力を燃焼しこの世界に働きかけ、特異な物理現象を引き起こす。
エンチャント装備はその法則を覆し、魔法を使えないものたちとの垣根を破壊する。
もっとも、それらを造るには遺失技術と希少価値の高い物質が必要らしいが……。

251 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/27(日) 21:22:12 ID:19XMLoHl0
保守

252 :名前がない@ただの名無しのようだ:2008/07/29(火) 20:53:45 ID:1b0a57bp0
保守

253 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/07/31(木) 21:00:29 ID:9iXv/60m0
保守

254 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/01(金) 21:13:12 ID:X+irc61o0
保守

255 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/04(月) 03:32:40 ID:RRdQs5Dp0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(4)

おめめをパチクリ、とろーんとした目をしたジジィの体に徐々に力が入る。
いや、それはあまりにも急速に引き締まる筋肉、まるでロボットみたいな動きで開こうとした口を俺は押さえつけた。
「むぐぇあぃ……」
声ならぬ声、さすがに耳元で絶叫されるのは御免こうむる。
「ジジィよく聞け、今あのバケモノから逃走中おk?」
そう言ってジジィの顔を下の方へと向けてやる。俺達は今山上を目指して木々の枝を渡っていた。
その後ろには道ができていた。無論、あの巨人が整地としかいいようのない走りで拓いたものだ。
未だ俺はあのバケモノを巻くことができていなかった。硬直するジジィに俺は優しく声をかける。
「ひとまず深呼吸だ深呼吸、ひっひっ、ふー」
何か間違ってそうな気もするが、それにならってジジィも一呼吸、ここで若干の冷静さを取り戻したのか表情が変わった。
「お主、なぜワシを助けた?」
助けるのに理由は要るか?と俺は返し、そろそろ脚がヤバそうだと思った。
ここまでは50m走の速度でかるくマラソンやってるわけだ、たとえ勇者とは言え乳酸は溜まる。
むしろこれはやせ我慢だ、男の子にはやらなきゃいけない時はあるが、もう限界かも知れない。
畜生、アイツは何で疲れないんだよ、粘着質なのは嫌われるぜ……とため息をついた。
「気づいちまったんだからしょうがないだろ、常識的に考えて」
何か変なものを見る目の老人いっちょ出来上がりってか。
「あのなー、ジジィよ、悲鳴上げてるの無視できるほど俺冷血じゃないんだは、最近人にも餓えてたしな」
まあ普通はあそこで介入するべきではなかったとは思うが、それに話し相手が欲しいってのは割と切実。
もう何日も人と会話を交わした記憶がない、人間に必要なのはコミュニケーションだ、単独で成立しねーよ、会話は。
この世界に飛ばされて何度も気が狂いそうになったが今こうしていられるのは勇者の心があるからだ。
勇者は単独行動を行うことが多々あるため精神的な加護は一般人よりも多い。

256 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/04(月) 03:33:25 ID:RRdQs5Dp0
けれども――それには限界がある。

人は結局のところ独りでは生きてはいけないのだ。
「そんな理由でワシを助けただと?」
やはり半信半疑のジジィ、それ以外に何が理由だってんだ。むしろ俺が聞きたい。
「まあ、悠長に会話してる場合じゃないんだが……下ヤベーことになってんし、ジジィ、一瞬で良いからアイツに隙作れないか?」
半ば諦め気味に俺はジジィに言った。そんなことができるなら苦労はしないってのに。
「ううむ……少し寝たから魔力には余裕はあるが……閃光を数秒間出すぐらいしかできんぞ」

魔力!?

「魔法使いだったのかジジィ!?」
なら何でアイツから逃げ切れない!?いや、アイツが規格外ってのは分かるが逃走ぐらいなら何とかできるだろう!!
「いや、アレは倒さねばならん……我が集落はアレによって潰され、あの脅威を取り除かねばこの国が滅ぶ……」
それはきっと比喩ではないだろう、合点がいった、ジジィの悲鳴は魔力が底をつき、打つ手がなくなった最後の絶望だったのだろう。
「おーけ、サクッと俺の言うタイミングで魔法を使ってくれ、その一瞬を突く」
うむ、と頷くジジィ、どうやら恐怖の色が若干薄れたのか血色がよくなってきた。もう、後がないという達観なのかもしれないが。

257 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/04(月) 03:34:46 ID:RRdQs5Dp0
「よしっ……今だ!!」

速度を早めトップスピードに乗り、木から飛び降りジジィを単眼の巨人へと向ける。
何やら呟きがジジィの口元から漏れるのを塞いだ目越しに聞く、そして魔法が成った。
さすがに薄暗い森の中の中で光を喰らったアイツは怯み、その瞬間待ち望んだ隙が生まれた。
迷うことは何もない、残された力を全て振り絞り、眼に拳を目指す。
全身のバネを使い、飛び上りながらのアッパー、ジジィは邪魔になるのでその辺に落とした。
魔物より早い悲鳴と、抗議の声が聞こえるがそれを軽く流し、突き上げる。

直撃――硬い感触が拳に伝わる――拳の砕ける感覚と奥へと確かに陥没する眼球――そのままクリティカルヒットで突き上げる。

声にならない悲鳴が上がった。己の眼球によって破壊された頭蓋骨が脳をそのまま粉砕する。
破片が基幹に突き刺さり、さらには全身を司る機能を犯す、が……


ここで誤算が起きた。

脳が砕けたというのに、剛腕が俺の身体を薙ぎ払った。それと同時に俺の意識が刈り取られ、死が身体に貫く。
最後の思考はモンスターを侮りすぎた、ということだろう、脊髄にプログラムされた基本動作を嘗めていた。
遠いジジィの声、ああ、俺は最後の最後で勇者に――

258 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/04(月) 03:36:31 ID:RRdQs5Dp0
(5)に続く

今回も微妙回、書きたいことが余り書けなかった
戦闘シーンが凄く淡泊です・・・

259 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 07:02:08 ID:0HKL3vfn0
かっこいいよ。その勇気ある行動、勇者に値するよ。
でも、運命はいかに・・・。続きが気になる終わり方だなぁ(wwwwwww

260 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/04(月) 10:41:00 ID:LbaCZqnq0
ちょwwwww
最初はメルヘンなヘタレDQNだと思ってたのに!
ヤバイ惚れるマジパネェっすかっけーwwうぇwww


ふう……。いやいや、本当にすごいです。
>「〜最近人にも餓えてたしな」
特にこのセリフが秀逸。これまでの過酷な状況が凝縮されてる気がする。
相手の事情を察せられる賢さだけじゃ抑えきれない負の感情もあるだろうに……。
この主人公、本当の意味で強い。

続きを心から楽しみにしてます。

261 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/05(火) 20:47:32 ID:iE2laiW50
保守

262 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/07(木) 03:52:55 ID:zcKbyfKf0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(5)

天の方舟システムに深刻なエラー発生――転送中に記憶領域に欠損を発見

修復プログラム起動

失われたドキュメントの復元率……99%
アリアハン王家天空回廊の接続を解除、転送を中断します。

「目を覚ましたのか?」
ぼんやりとした目をじょじょに%

263 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/07(木) 03:53:49 ID:zcKbyfKf0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(5)

天の方舟システムに深刻なエラー発生――転送中に記憶領域に欠損を発見

修復プログラム起動

失われたドキュメントの復元率……99%
アリアハン王家天空回廊の接続を解除、転送を中断します。

「目を覚ましたのか?」
ぼんやりとした目をじょじょに開いた俺の前にジジィが立っていた。
「あ」
ジジィ?ああ、ジジィ……。
「ああ!!俺の助けたジジィか!?すると俺生きてるんだな!?ふー、ビビったぜほんと
あんときゃ絶対死んだと思ったのに、あー勇者パワーすげー、普通死ぬはあのパンチ。
痛恨の一撃だったからな、ほんと、まあ何はともあれ二人生き残って良かったぜほんと」
一気にしゃべり終え、俺は大きくため息をついた。そりゃ人間だもの、ビビることは多い。
「貴様は一度死んだよ、よりにもよってワシを助けたのは王家の狗とは……」
そう言って俺の睨みつけたジジィの目は敵意の色に染まっていた。
あーよくよく見てみると俺拘束されてんじゃん、しかもどう力を入れても抜け出せないような方法で。
「勇者とは言え脊髄にストッパーをかけては動けまい、貴様の命は我ら未登録の魔法使いの排除か?」
魔法が使えないことは分かっているよ、と歪な笑いでジジィは言った。
魔法が使えるなら発声機能なんて残すわけがないといったような様だ。
「ちげーよ、王家?そんなファッキン野郎に俺は放逐されたんだよ、風の噂で聞いてないか?ジジィ」
諸王連合に“よる”勇者の資格を俺は失った、“神授として”の資格は残っているみたいだが。
「ふむ、それが真実と言えるのか貴様は……あの狡猾な者共がワシらを罠にかけようとしてないとどう証明できる」
どうしようもなく疑心暗鬼、駄目だ、完全に聞く耳をもってくれそうにない。
「信じてくれとは言わない……なあ、俺何で生きてるんだ?死んだ、って言ったよな?」

264 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/07(木) 03:55:34 ID:zcKbyfKf0
それぐらいは教えてやってもいいだろう、そうジジィは言った。

「貴様は確かに死んだ、瀕死の魔物の放つ強力な一撃によって挽肉のように飛び散った」
新幹線に衝突したような感じだったし、ありえなくはないが、ミンチ?悪い冗談だろ……。
「それなのに貴様は生き返った、生命の法則を完全に無視してな。
 認めよう、貴様は真に勇者のようだな、棺桶がどこからともなく落ちてきた……あれこそが天に祝福された証拠だろう。
 絶対的な死から至極安全な地へと勇者をいざなう神の魔法、神?そん者をワシは認めたくはないがアレを前に認めざるをえん。
 開かれた棺桶に肉片が収束したかと思うと一瞬、それが消えた。
 次の瞬間にはワシの目の前に戻っておったがな、唖然とするワシの前で柩はかき消え貴様の姿だけが残った。
 神官共の使うザオリクとは一線を課す、そうしてワシは思い出したのだ、あの常識外の力を。
 そんな特権が許されるのは人の共同幻想“勇者”のみであると、忌々しい、そんなものがあるから王たちの愚かさが治らんのだ」
間を入れず、早口でジジィは喋った、それを認めてたまるかと、そんな勢いで。
つーか、俺だって腹が立つ、何でこの世界で生かす、俺の世界に戻せとあれほど。
「ワシには貴様を殺すことは出来ぬだろう」
ズキリ、とその言葉が胸の奥に突き刺さる、久々に会った人間の言葉にしては残酷すぎる。
ああ、残酷、途方にくれるぐらいに。この世界はなかなか俺に甘くないようだ。
「なあ、勇者ってそんなに嫌われるものなのか?」
多分、その声は震えていて、泣きそうな声だった。
俺だってたまには泣きたくなることがあるのだ。
「好き、嫌いではない。力を持たぬ者と勇者では歩む道が違いすぎる……それも王の側につくとあるなら憎しみしかない。
 貴様が生まれてからどれだけの民草が重荷を背負ったか、勇者を養うということはそれだけで重税を課す理由になる。
 王は勇者を縛るためにありとあらゆるものを与える、いつか自らの脅威となるものを排除させるためにな。
 民も例外ではない、王に害をもたらす者は勇者をもって排除する、それは決して少ない話ではないだよ坊主」

265 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/07(木) 03:58:12 ID:zcKbyfKf0
(6)に続く
何か書き込みエラーが起きてageてしまって申し訳ない
そして毎度のことだけれど話が短い・・・
分割して頻繁に書き込んでないとモチベーションを維持できないんでそのへんはよろしく

266 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/07(木) 11:40:46 ID:sq1UWByv0
乙!
まさかの忌避される勇者!
ジジィが黒っぽくみえたと思ったら、巷に響く黒勇者の設定は面白いかも

267 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/08(金) 20:51:11 ID:fTYg0R3O0
ほしゅ

268 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/10(日) 08:31:40 ID:nczLtTID0
保守

269 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/13(水) 04:34:04 ID:2ox/bl190
保守・・・したほうがいいかな?

270 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/14(木) 20:42:57 ID:jB3Prsrb0
ほしゅ

271 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/17(日) 13:55:20 ID:GFezJg8i0
保守


272 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/18(月) 08:02:31 ID:J6dqgDuA0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話(6)

だが……とジジィは若干表情を崩して言葉を続けた。
「あの魔物を倒してくれたことは感謝する、ワシにはどうすることもできなかったからな。
 そして、坊主があの瞬間死んだお陰でワシと坊主に還元されるはずだった力がワシだけに注ぎ込まれた」
お主、貴様、坊主、俺に対する呼称が転々とし、言葉を切った。
あー、つまり、俺に入るはずだった経験値が……。
「今になって精神と身体を拡張することになるとは、うむ、喜ばしいことだ。
 ああ、そう、これは坊主に対する妬みと奴当たりだよ、ワシは衰える肉体を抑えきれず今回の出来事を起こした。
 贖罪、というべきか、ワシは死ぬよ、魔法使いの里は滅んだ、あの魔物を呼びだしたおかげでねな」
自分語りが激しいなジジィ、何で、何でそんな遠い目してんだよ。
「ルーラとは即ち、点と点を結び移動する魔法、通常は巨大な都市に目印を刻んで行うべき危険な魔法。
 なぜルーラは空間移動魔法であるのに一度宙を舞うと思う?」
そんなものは簡単だ、地上で展開すれば根こそぎ質量を動かすことになる。
都市にマーカーをするのも、空高くに現れるのも……。
「物質と物質が同軸上に存在する場合、最悪の被害が巻き起こる、そして、ルーラは何もこの世界にだけ作用する魔法ではない」
薄々とは感じた、そうだ、アレがこの世界に存在してはいけないのだ。
誰が持ち込んだ、目の前のジジィだ、どうやって?ルーラで。
「別概念の魔法知識をこちら側に持ち込もうとした結果があの大惨事、もはやワシが残すべき言葉はない」
年相応の、枯れた声だった。どうしようもなく生きる気力がなく、死以外のことをもはや見るすべを知らない。
ああっ、俺は、なぜこんなに淡々としているんだろうか。
裏切られたから?いや、そもそも信頼関係を築いていない、何なのだろうか、この感情は。
人が死ぬのは見たくない、見たくないのだが、目の前のジジィを救う方法が見当たらない。

勇者はこんなに脆いものなのか。

精神強化、肉体強化、どんなに強くなっても心に亀裂が入ってしまえば決壊してしまう。
ひねり出すように俺が漏らした言葉は貧弱だった。
「なあ、ジジィ……死ぬぐらいだったら、俺に魔法を、授けてはくれないか?
 俺は世界を救う存在なんだと思う、アンタを救うことはできなくても」

273 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/18(月) 08:04:29 ID:J6dqgDuA0
間幕

どうやら僕はとてつもない田舎に紛れ込んだのではなく、不思議なところに来てしまったようだ。
「言語は日本語なのに日本という国が存在しないなんて、はて、ここはどこなのだろうか」
あまり考えたくないけれどここはどうやら異世界なのかもしれない。
紙幣は珍しがられるけどそれだけで使い物にならないし、小銭も金じゃないから役に立たないから困った。
この世界では物々交換か金による取引しか成立しないらしい。
「困ったなー困ったなー、そろそろ家に帰りたいなー」
言葉に出してみるとあまり困った風には見えないけど僕は心底困っていた。
生活面ではいわゆる紐生活を送っているためそこまで困らないけど、さすがにずっとこうしているわけにもいかない。
だけど、他にすることが見つからない。
どうやら男のする仕事は肉体労働ばっかりで僕には向いてない。
兵士なんて冗談、自慢じゃないけど僕は運動が苦手。
かと言ってそんなに頭が良いわけじゃない、みんなが褒めてくれるのは声と顔ぐらい。
「でも、それのおかげ今も平穏な生活がおくれてるわけで、僕も捨てたものじゃないかも」
今僕を飼ってくれてる人はお金持ちの奥さまで僕を芸術品の一部として飾ってる節がある。
だから僕の美しさを損ねないように良いものを食べさせてくれるけど僕にはどうも口に合わない。
もちろん出されたものをマズそう食べるほど僕は愚行ではないから美味しくいただくけど半ば演技としかいえない。
奥さまも一日中僕にべったりしてるわけじゃないからある程度暇な時間はあるけど琴の練習に忙しい。
とりあえず飼ってくれてる間はいいけど、あの手の女性は飽きたらほっぽり出すから怖い。
そのためには詩を謳い、音色を奏でなければならないのだ。
僕がこの世界で生きていくには吟遊詩人に成りきるしかない。
手先はわりと器用なほうだと思うけど、二つの作業を同時にこなすのは一苦労。
正直もう投げ出したい気分でいっぱいだけど生きていくにはしょうがない。
「はあ、退屈だなぁ、テレビ見たいなぁ」
携帯の電波ももちろん入らないから救助も求められないし、何で目が覚めたら異国の宿屋なんだろう。
もう、知らない。

274 : ◆I15DZS9nBc :2008/08/18(月) 08:09:51 ID:J6dqgDuA0
すりりんぐぶれいぶはーと・第一話 END
NEXT すりりんぐぶれいぶはーと・第二話

本来(5)と(6)は一緒に書き込むべきだったんだろうけどそんな気力がなかった
間幕は多分、区切りごとの更新になると思われ
今更DSのDQ5をプレイしてて書き込みが遅れ気味なのはどうしたものか
このまま行くと完結は何年後だろう

とりあえずカジノのハイアンドローはすりりんぐでぶれいぶはーとが必要だと思う
あとエースが来た時嬉々としてロウ!と言ったらジョーカーとかやめて

275 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/19(火) 22:40:11 ID:IpUNNQdB0
やっと規制明け!

>>274
乙!
ルーラにそんな秘密が!ルラムーン草がいるわけだなぁ

ハイ&ローでエースにジョーカーが来たこと過去に2回あるw
この理不尽さはなんともいえないw

276 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/23(土) 08:39:37 ID:+P1gBsP+0
えとえと、保守いたしますわね・・・。

277 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/24(日) 21:58:55 ID:OqysLa4mO


278 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/25(月) 22:23:42 ID:VxMKHtMTO
干し

279 : ◆Y0.K8lGEMA :2008/08/26(火) 03:20:14 ID:JqDt5M4C0
幕間の短編一話のみですが投下します。
ちょっと時期が遅くなりましたが、イサミの世界の行事ネタです。

280 :番外編 at 一週間遅れ ◆Y0.K8lGEMA :2008/08/26(火) 03:25:55 ID:JqDt5M4C0
「イサミ殿、野菜に棒きれなど刺して…食べ物で遊ぶとサトチー様に叱られますぞ。」
「遊んでるわけじゃねえよ。これは『お盆』って、俺の世界の伝統行事。
 一年に一回だけ先祖に会える日でさ。野菜の馬と牛を飾って先祖を迎えるんだよ。」
「故人を召喚する降霊儀式のようなものですな。いや、死霊を使役する術式とは…
 そのような難解な呪法を容易に操るとは、イサミ殿の世界の住人も侮れませんな。」
「…死霊の召喚儀式とは禍々しい…それなりの代償は覚悟しているのであろうな…」
「なんか…勘違いしてねえか?特にスミス。お前が言うとシャレになんねえ。」
「…なぜ私だけ名指しでツッ込まれるのだ…」
「これは、そんなヤバい行事じゃなくってさぁ。死んだ後でも会いたい大事な人と、
 一年に一回だけでも近くで過ごせるようにって…そんな祭りなんだよ。」
「なるほど、そう言われるとこの妙な儀式にも人の温かみを感じられますな。」
「…ふむ…儀式の思惑には納得したが…イサミにも今一度会いたい故人がいるのか?」
「ん?…あぁ、今回は俺の先祖の為にコレを作ったわけじゃないんだ。」
「はて?では、何の為に?」
「まぁ、もう夜も遅いし寝とこうや。あとはコレを飾っておしまいだからさ。」
「う〜む…異世界の文化は実に奥が深いですな。」

        そして、夜が明けた。

「♪〜 あ、おはようイサミ。よく眠れたかい?」
「ふぁ…おぅ、サトチーおはよ。鼻歌なんか歌ってご機嫌だなあ。」
「まぁね、久しぶりに楽しい夢を見れたんだ。」
「ずいぶん楽しい夢だったんだろうな。…で、どんなんよ?」
「うん、夢の中に父さんが出てきてね。平和だったころのサンタローズで
 一緒に釣りをしたり、いろいろ話したり…うん、そんな夢。
 …おや?ねぇイサミ。この野菜はなんだい?」
「あぁ…それは…ただのおまじないみたいなもんだよ。
 ほら、スミスが馬車で待ってるぞ。早く準備しちまおうや。」

―お前にはずいぶんさみしい思いをさせたな―
『父さん、僕は大丈夫。僕の傍にはいつでも素晴らしい仲間がいます。
 そして、父さんから受け継いだ志がいつでも僕を鼓舞してくれます。』

281 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/26(火) 07:21:43 ID:D2zOOBe10
>>279-280
乙です。イイハナシダナー(;∀;)

282 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/26(火) 11:03:40 ID:OyOMU78b0
イサミGJすぎる(つД`)
乙でした

283 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/26(火) 21:20:09 ID:9w8k/nLQ0
サトチー良かったな!
イサミも儀式wをした甲斐があったw

284 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/27(水) 11:52:59 ID:iXQyQx5BO
目から汁が出た(´д⊂・゚・。
GEMAさん乙です
降霊儀式ww確かにその通りだww

285 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/29(金) 20:59:15 ID:otR745pH0
言い方は間違ってないがなんか違うwww

286 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/08/31(日) 21:44:15 ID:tuwq4DyC0
保守

287 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/02(火) 00:53:54 ID:OenAq7Qz0
職人の皆様超GJ!!

288 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/03(水) 20:51:21 ID:S0WMXPhb0
ほしゅ

289 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/05(金) 21:09:09 ID:AtSZD1Ve0
hosyu

290 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/08(月) 00:57:27 ID:AW0+2te20
ほす

291 :Stage.17 hjmn1 ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:10:34 ID:OOboCCOz0

アルス「ちーっす……」
タツミ「どうもー! すっかりご無沙汰しておりますぅ♪ 残暑も厳しい今日この頃、皆様い・か・が・お過ごしでしょ〜かぁ?☆」
アルス「なにその♪とか☆とかキモ! なんでそんなテンション高いんだ?」
タツミ「バカ空気読め! お騒がせ状態のまま数ヶ月も放置してたんだからもはやテンションで誤魔化すしかないじゃないか!」
アルス「思いっきりホンネ口走っとるがな。前回は本当にお騒がせだったよな、俺も焦ったっつーの」
タツミ「そういえば君もレイさんのこと男だと誤解してたんだっけww」
アルス「笑い事じゃねえよ。それでは遅くなりましてすみません。恒例サンクスコールです」

アルス「>>103様、いや〜俺もマジ物凄く焦りましたよこんちくしょう」
タツミ「>>105様、ほんとエリスもサミエルもあんまり大騒ぎするから僕の方がビビりましたw」
アルス「>>105様、うちの国王も悪い人間じゃないんだが、変なとこが熱血なんだよな。そこがうちの親父と気が合ってたみたいだが」
タツミ「>>106様、驚かせてすいません。Rに関してはすでに壊れ気味な気がしないでもありませんね」
アルス「>>107様ごめんなさい謝ります! ところで……なにを期待したんでしょう? ガチで、えーと??」
タツミ「あー覚えなくてイイよああいう特殊な現実用語は。
   >>116様、レイさん確かにカッコイイですけど、近くで見たら結構な美人さんですよ。ああいうの宝塚系っていうのかな」
アルス「へえ、そうだったのか? 俺は数年前に一度会ったキリだから顔とかあんまり覚えてねえんだよな」
タツミ「向こうはちゃんと覚えてたってのに……。
   >>117様、Rのことだからどこでなに仕掛けてるかわかんないですからね。
   あちこちに伏線はってたりするんで、たまにまとめ読み返していただけると嬉しいです」
アルス「>>118様、レイの家も幼少時から勇者の英才教育してたって聞いてるから、そうなのかもしれないな」
タツミ「>>119様、そこなんですよ〜! エリちゃんとかレイさんとかサヤお母さんとか魅力的な女性が多いのに
   そこがネックで手が出せn……OK悪かった冗談だよアルス。剣をしまおう、ね?」
アルス「俺のおふくろまで範疇なのかお前は!? ユリコに言いつけていいか?」
タツミ「だから冗談だってば、蹴り殺されるからやめて。
   あ、>>120様、僕自身はその手の話題ゼンゼン平気ですよ〜。女子に混じって下着からBLまで平気で語れるタイプなんで」
アルス「うわ、たまーにクラスにいるよなそういう男子。それって男として見られてないからだと思うが。
   >>124様、なにか不思議なロマンを感じる願望ですがそのココロは?」
タツミ「あれじゃない、小さい頃お母さんにおんぶされた思い出が蘇って〜とか?(超憶測)」
アルス「憶測で語るなよ。でもまあ、そういうことならなんとなく覚えてる。懐かしいなぁ」
タツミ「その割りにはサヤお母さんへの態度悪いよね君」
アルス「しつけーな、またそれを言うか。反抗期ってことにしとけもう」

292 :Stage.17 hjmn2 ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:12:39 ID:OOboCCOz0

タツミ「ちなみに今回のようにアンカー(>>)があったり明らかに他の読者様へのメッセージに対しては、
   読者様同士の会話に割り込まないという配慮からコールを控えております。ご了承ください」

アルス「お待たせしました、それでは本編スター……」

タツミ「あー待って待って。今回は僕らが語りじゃないから、スタートも彼らにお願いしたいんだけど」
アルス「そうなのか? 俺はかまわないが、お前、本当にそういうとこマメだよな」
タツミ「つねに周囲への気遣いは怠りませんからw」


エリス・サミエル・ロダム『というわけで、俺(私)たちが、本編スタートいたします(ッス)!!』


アルス「お前らもう少し息合わせろ……」


【Stage.17 うちの勇者様】
 続・ゲームサイド [1]〜[14]
  Prev >>83-101

 ----------------- Game-Side Another -----------------

293 :Stage.17 [1] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:15:47 ID:OOboCCOz0

 【サミエル=レイトルフの場合】

 勇者様について? タツミのことッスか。あー……、確かにあいつは得体の知れないや
つッスよ。自分は異世界の人間だ、とか言い出したときは、こいつアタマおかしいんじゃ
ねえかと思ったし。
 んで、いざ一緒に行動してみたらマジでこの世界の習慣を知らないみたいで、「トイレ
の男性用マークはどっちだ」とか聞いてくるから焦ったぜ。「革靴」が男用で「扇子」が
女用のマークだって、世界共通の常識じゃないスか?
 あとほら、よく宿屋でメシの後にサービスでニームの枝がついてくるっしょ。なんとあ
れをポリポリ食っちまったりとか。
「……勇者様、それ噛んで柔らかくして、歯を磨くんスよ」
 と俺が呆れ半分で教えてやったら、えらく感心してたっけ。
 あげくに、パーティの金銭管理はリーダーの仕事だからって俺たちの所持金を預けた時
は、「ええ! ゴールドって銀貨や銅貨もあるの!?」なんてこれまた当たり前のことに驚
いてたし。本当にこいつがリーダーで大丈夫なのかって、俺も不安になったもんッスね。

 だけどタツミって、すごく熱心なんスよね。行く先々の街や城で片っ端から本を読み漁っ
て、暇さえあればロダムやエリスに、呪文や世界の歴史について習ったりしてる。俺にも
魔物との戦いの注意点とか、しょっちゅう質問してくるし。
 今でこそあいつも慣れたもんで、旅のプランニングや経費の計算、売買の交渉とか、冒
険に関する雑務も一通りこなしてるけどさ。もともと記憶力はすこぶるいいヤツだったけ
ど、こんな短期間で覚えたのは、やっぱ努力の賜物ってんじゃないんスかね。

 まあ厳しいことを言えば、この程度はどのパーティでも当たり前にやってることで、冒
険者としてはまだ全っ然なっちゃいないッスけどね。
 まして「勇者」が魔物と戦えないなんざ、よそには絶対に知られたくない話だし……。

294 :Stage.17 [2] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:17:42 ID:OOboCCOz0

 それでもなぁ。
 血がダメなのはかなりマジだろうに、あいつは吐いても吐いても逃げ出さずに俺たちの
戦いを見守ってるんスよ。俺自身が知らないうちに負っていたケガに気付いてくれたり、
エリスもほら、女ゆえのサイクルってのがあるっしょ? それで体調が悪いのを見抜いて、
俺らに「フォローしてあげてね」ってさり気なく頼んできたりとか。
 マメっちゅうかなんちゅうか、いつも俺たちを気遣ってて……自分の方こそ、戦闘のた
びに顔が真っ青になってるってのにな。

 だから、あいつが戦えないなら俺が二人分戦えばいいや、なんて。
 いろいろ頼りないヤツだけど、今の俺たちのリーダーは、やっぱタツミなんスよね。

 そういうことで、王様。
 あいつが理不尽に罰せられるのは許せないッスよ、俺は。

   ◇

 なーんて意気込んでアリアハンの刑場に乗り込んだ俺たちだったんスけどねぇ。
 現在、その王様はひとり壇上でイジけてますよ。先刻の騒動ですっかり存在を忘れられ
ていたのがよっぽど悲しかったらしいッスね。執行役の兵士たちも「どうするよオイ」と
かマゴついてるし、なんかもうすっかりgdgdになってる。

 ピーヒョロロ〜と鳶が暢気に青空に円を描いてて、なーんかマの抜けた空気が漂う中。
 レイさんだけは妙にニコニコしてる。
「王よ、ここはいったん腰を据えて、じっくり話し合うべきではありませんか?」
 まあ無難な提案だわな。王様も渋々壇上から降りてきたんスけど、なんか情けない顔し
てるわ。

 タツミの方も同じように肩を落としてて、俺と目が合うと苦笑いした。
「今の王様の気持ち、僕もよくわかるよ。なんかこうして落ち着いちゃうと、結局のとこ
ろ、『吐け!』『言うもんか!』『じゃあ痛めつけてやる!』『やるならやれよ!』とお
互いに意地を張り合ってただけ――って感じだもんね〜」

295 :Stage.17 [3] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:20:59 ID:OOboCCOz0

「っぷ」
 思わず吹き出した。本当にその通りだもんなぁ。

 タツミはそれで吹っ切れたらしく、一歩前に出ると、王様に思いっきり頭を下げた。
「あの、王様。いろいろ失礼なこと言っちゃって申し訳ありませんでした!」
 そうそう、うちのリーダーは本来、自分が悪いと思ったらすぐにちゃんと謝る人間だも
んな。今回みたいにわざと反感買うような真似してるのは、全然らしくないんスよ。
 王様もしばらーく黙っていたけど、やがて降参とばかりに両手を挙げた。
「わかったもうよい。不問とする。貴様ではないが、だんだん余も面倒になってきたわ。
お前たちも下がってよいぞ」
 どこかスッキリしたように笑いながら、王様は兵士たちに退席を命じた。兵士たちはサッ
と敬礼すると、物騒な道具をかかえてそそくさと刑場を出て行く。あいつらも本当は嫌々
従事していたんだろうな。
 アリアハンはもともと平和ってゆーか、ノンビリした国ッスからね。魔物ガラみの暗い
事件はたびたび起きてるけど、それがなきゃこんな陰気な話は滅多に無い。いつだったか、
王様が自分の息子みたいに大事に思ってるオルテガ様のご子息に不埒な真似をしようとし
たアホな女パーティがいたけど、そいつらも表向きは極刑とされたが、秘密裏に国外に追
放するだけで済まされたし。

「まったく、本当に虫の好かんヤツだ貴様は。余の力量を試すなど、侮辱罪で打ち首にさ
れても文句は言えんのだぞ?」
 王様がチョンと首に手を当てるマネをすると、タツミは胸の前で手を組みつつブンブン
首を振った。
「いやだなー王様、僕そんな恐れ多いことコレっぽっちも思ってませんよ? 偉大にして
神聖なる御国王陛下より直々に賜りし罪なればここは粛々と甘受すべきかとですね」
「だーまーれ、少しは物怖じせんかこのクソガキが。……まあ確かに、余も少しばかり頭
に血が昇っていたかもしれんが」
 ありゃ? なんかこの二人、かえって仲良くなってないか?
「ふむ。やはりアリアハン国王は立派な方だな」
 とか言いつつレイさんはニタニタしてるし。この人も最初から結末が読めてたっぽいな。

296 :Stage.17 [4] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:21:46 ID:OOboCCOz0

「さて、余は譲歩したぞ。次は貴様の番であろう?」
 王様の言葉に、タツミは少し困ったような顔でうなずいた。
「――わかってます、アルス君のことですよね」

 アルセッド=D=ランバート。
 本来、俺たちがともに旅をするはずだった、真の勇者たる少年。

 タツミは間違いなく「彼」の身に起きたことを偽っている。それは王様が疑問に思うま
でもなく、俺たち3人も薄々察していたことだ……が。

 けど実は、「とりあえず向こうが言い出すまではそっとしておこう」って俺たちの中で
話し合いは済んでたりする。実際あいつはマジメに勇者として人助けの旅を続けてるんだ
し、たとえ隠し事をしていようとそれなりの事情があるんだろう、ってさ。
 だいたい、王様がタツミに「アルスの名声を横取りしようとしている不逞の輩」って猜
疑の目を向けるのも、仕方ないっちゃそうだが、現場を知る俺たちから言わせてもらえば、
こんなクソ面倒な大役をわざわざ買って出るくらいなら、一般人でいるほうがよっぽど楽ッ
スからねぇ。

 でもまあ、そろそろ真実を聞いておきたいところではあるなぁ。
 エリスやロダムも同じ考えなのか、じっとタツミの方を見つめてる。

 うちの勇者様もそれに気付いたのか、軽く肩をすくめてうなずいた。
「わかりました。僕にわかる範囲のことはお話します。ひとまず腰を落ち着ける場所を貸
していただけますか、王様?」

297 :Stage.17 [5] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:23:24 ID:OOboCCOz0

 【エリス=ダートリーの場合】

 タツミ様のこと、ですか?
 そうですね。実はその……今だから言える話ですが、最初の頃、私は彼をまったく信じ
ていませんでした。
 タツミ様は一見すると、温和で人当たりが良くて会話上手、他人とすぐに打ち解けられ
る方ですが――その笑顔の裏でいつもクールに場の空気を読み、先を計算しているような
ところがあります。
 私だって、ついついアルス様と比較してしまうからこそ、そういう性質に気付きました
が、普通の人は彼の表面的な笑顔に簡単に騙されるでしょうね。
 あ、ごめんなさい、騙されるというのは言い方が悪いわ。それが彼なりの気遣いや優し
さなんだって、今はもうわかっていますから。

 まあロマリアにいた頃までは私もそんな感じで、
(このニセモノがアルス様の命を握っているのかしら)
 と本気で不安に思っていました。王様が疑っていたように、私も彼が、アルス様に成り
代わろうとしている魔王の手先かなにかでは……と考えていたんです。
 だからモンスター格闘場での八百長じみた大勝にも大げさに感心してみせましたし、お
となしく彼の指示に従って金の冠を取り返しにも行きました。
 どういういきさつなのか一時的にロマリアの国王代理を務めることになった彼から、
「僕、王様してる間にちょっとやっときたいことがあるんだ。そんなにかからないから、
しばらく宿屋でのんびりしててよ」
 そう言われましたが、私は彼に秘書役として手伝いを申し出ました。だって、こんな怪
しい人間にロマリアのような大国の権力を渡すなんて危険じゃないですか。
「ありがとうエリス、本当に助かるよ。ごめんね、疲れてるのに」
 少し照れたように言う彼に、
「いいえ、お気になさらずに。タツミ様の方こそずっと働きづめではないですか、少しは
休まれたほうがいいですよ?」
 なんて白々しく心配するフリをしながら、私は彼の動向を探っていたんです。
 結局、タツミ様は約束どおりすぐに王位を返還し、一日も経たずにロマリアを出立する
ことになりましたけど。

298 :Stage.17 [6] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:27:42 ID:OOboCCOz0

 ――それから、初の魔物との戦闘に至り。
 タツミ様が血に弱いということが、ここで初めてわかりました。
 冒険者の中にも苦手という人はいますよ。ロダムのような僧侶など、基本的に殺生ごと
は好みませんし。でも彼の……血液恐怖症というのでしょうか、あれは半端じゃないです
ね。木陰で吐いているのを見かねて水筒を持って行きましたが、とても演技とは思えない
くらい参っていました。
 なのに、
「ごめんね〜、血はどうも苦手なんだよねw 近いうちに必ずなんとかするからさ」
 と、必死に笑顔を作ろうとするんですもの。
 この人、悪い人じゃないのかしら……?
 ふとよぎったその思いは、ピラミッドで確信に変わりました。

 タツミ様と2人で落とし穴にはまり、魔法が使えない地下道を彷徨い歩き、どうにもな
らなくなって通路の隅に隠れて休んでいた時です。
 気を紛らわせようと雑談をしていたんですけれど。
 その会話の方向性が、私に囮になれと暗に促していることには、最初から気付いていま
した。そういう作戦自体は別に彼じゃなくとも冒険者のパーティなら一度や二度は経験す
ることですから、それについては特にヒドイとは思いませんでしたよ。これまでの経緯を
鑑(カンガ)みて、本当にこのまま見捨てられることはまず無いだろうという計算はありまし
たし。
 むしろ遠回しに誤魔化さないではっきり言ってくれた方が良かったんですが、男の彼か
ら女の私に「身代わりになれ」とはさすがに言い辛いのでしょう。そう思って、親切心で
私の方から言ってあげたんですよ。
 私を置いていけ、と。
 抱きしめてあげたのは、まあちょっとしたサービスで。

 ……すぐに後悔しましたけどね。

299 :Stage.17 [7] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:29:00 ID:OOboCCOz0

 その時のタツミ様の表情は、今でも忘れられません。
 悔恨とか自己嫌悪とか、なにかそういった、自分に刃を向けるような負の感情に一気に
支配されてしまったかのような。
 うまく言えないんですが、たとえば、大切な人をどうしようもない理由で殺してしまっ
た、その直後みたいな。もう他人にはどうすることもできないくらい自分を追い込んでし
まった人を、目の前でただ見ているしかない状態というのか……。

 しかも驚いたのは、彼は次の瞬間には、スッといつもの笑顔でそれらすべてを覆い隠し
てしまったことです。
「じゃあ、ちょっと様子を見てくるから、君はここで待っててくれる?」
 まるでなにごともなかったかのように。正直、私はほっとしました。私には、さっきの
状態の彼にどう対処していいかわからないもの。

 だから、あの時の私の言葉の、本当の意味は。
「なるべく早く、帰ってきてくださいね」
 そしてさっさとどこかの街に戻って、宿を取って、この人に暖かくしておいしいものを
食べさせて、ゆっくり眠らせてあげたい。
 そう思ったんです。

 キスをしたのは……よくわかりません。
 私の方こそごめんなさい、って、そんな気持ちの表れだったような気がします。

   ◇


300 :Stage.17 [8] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 12:32:17 ID:OOboCCOz0

 刑場から応接間に移動した私たちは、そこでタツミ様のお話を聞くことになりました。

「まず謝ります。僕、嘘をついてました。アルス君がいなくなったことに関して、魔王が
直接なにかしたわけじゃないんです」
 アルス様は魔王に封じ込められたのではなく、タツミ様の異世界に飛ばされ、替わりに
タツミ様がこの世界に送られたというのです。
 つまりお二人は入れ替わってしまったのだ、と。
「ではアルセッドはどうしてるのだ? 無事なのか」
 王様の問いかけに、タツミ様は自信が無さそうにうなずきました。
「たぶん。僕が住んでいた世界に魔物はいませんし、アルス君ほどの戦闘技術を持つ人間
もほとんどいません。まず危険はないと思います」
 私も少しですが、タツミ様が住んでいらした世界について聞いたことがありました。魔
術の類はいっさい存在せず、まったく異なる文明を持つタツミ様の故郷。そこは魔王も魔
物もいない平和な世界であると。
 タツミ様はそこで溜息をつきました。
「正直、僕もなにが起こってるのかわかってないんです。この世界に来る直前に、神様だ
かなんだかに簡単な説明をされただけで……。僕がアルス君の代わりに魔王を倒さなけれ
ばいけないらしいんで、やっぱり魔王が間接的に関わっているのかもしれませんけど、そ
れも僕には答えようがありません」
「なるほどな。君も大変だったね、青少年」
 レイさんがしみじみと言いました。
「いきなり見知らぬ世界で『勇者』をやれなんて言われて。よくやってるじゃないか」
「まあなんとか。――ただ、アルス君の方はどうも以前から、僕や、あっちの世界のこと
を知っていたみたいです。『夢を通して見ていた』と言っていました」
 え、夢で見ていた……?

(――聞いてくれよエリス、また例の『夢』を見たんだ。ほんと不思議な世界だよ、ヒコ
ウキってわかるか? 何百人も人を乗せて空を飛ぶんだぜ。ラーミアよりすげえよな!)

 どうしてでしょうか。嬉しそうに語るアルス様の姿が浮かびます。
 そんなこと、過去に一度もなかったはずなのに。

301 :Stage.17 [9] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 13:01:01 ID:OOboCCOz0

「なんだか貴様はアルセッドを知らぬような口ぶりだな。以前、余に『アルセッドは自分
にとっても大切な存在だ』と言い切ったではないか」
 王様がややキツイ口調で聞きました。タツミ様はそれにも困った顔になりました。
「それは間違いありませんが……。当時は彼がアルスという名で、しかも僕とそっくりだ
なんて知りもしませんでしたけど」
「知らないけれど大切な存在? タツミ殿、どういうことですかな?」
 ロダムが首をひねります。
「えーと、なんて言えばいいのかな。僕の世界では、彼の冒険譚が絵本みたいな形で残さ
れているんだよ。この世界にも古い伝説や神話を描いた子供向けの絵本はあるだろ? 僕
もそういうのを読んで育ったというか……だから、勇者アルスは僕にとって憧れの英雄と
いうか、なんかそんな感じなんだ」
「すでに伝説になってるって? じゃあタツミさんトコの世界って、未来の世界なんスか?
これからどうなるかも知ってるとか」
 興味津々で身を乗り出すサミエルに、タツミ様は微笑みました。
「もしかしたらそうかもね。僕が知ってる話では、勇者は魔王を倒して世界を平和にする
よ。登場人物の名前はハッキリしないんだけど、戦士や僧侶や魔法使いが仲間だったから、
きっと君たちのことなんじゃないかな?」
 おっしゃぁ〜!と嬉しそうにガッツポーズをするサミエルを、王様は呆れたように見て
います。
「まあそれはわかった。で、アルセッドのことだが……まさかと思いたいが、自らの意思
で貴様の世界に行ったのか?」
 王様がそう問いかけると、タツミ様は申し訳なさそうに首を振りました。
「だと思います。でも、なんだかつらそうに見えました。皆さんからこんなに頼りにされ
て、心配されてるんですから、きっとよほどの事情があったんじゃないかな……」
  

 その後もいくつか質問が出ましたが、タツミ様にもはっきりしないことばかりでした。 
「貴様をアルセッドの後継と認めよう。余に報告を怠らぬように」
 最後に王様から正式な許可が下りました。わけもわからず勇者を押しつけられた彼の苦
労が、王様にも察していただけたのでしょう。
 そこでひとまず、私たちは解散したのでした。

302 :Stage.17 [10] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 13:22:06 ID:OOboCCOz0

 【ロダム=J=W=シャンメールの場合】

 アリアハン城を出た我々は、その足でルイーダの店に向かいました。タツミ殿が、すぐ
にもレイ殿の歓迎パーティーをしたいと言い出したのです。
「僕のせいで変なことになっちゃったし。……それと、なんと言いますか、このままじゃ
サヤさんところに顔を出しづらいし。もちろん、落ち着いたらちゃんと行くけどさ」
 勢いをつけるために先に一杯ひっかけたい、というところでしょうか。気持ちはわから
ないでもありませんが、そこはまずサヤ殿に謝りに帰る方が先では――。
 と思ったのですが、
「ねえねえ、ダメかな〜?」
 タツミ殿の「お ね が い♪ ウルウル瞳攻撃」にレイ殿とサミエルがあっという間
に陥落したため、多数決で即決されました。


 その後、ルイーダの店の2階の一室を借り切って、大いに盛り上がりました。

 2時間くらい盛り上がったでしょうか。
 そろそろドンチャン騒ぎも一通り落ち着いた頃、私はふと、店内にタツミ殿の姿がない
ことに気が付きました。
 彼はあれでなかなかの酒豪で、少々のお酒では参りませんが、酔って絡んできたレイ殿
をあしらったり、それでまたいきり立ったエリスをなだめたり、調子に乗って脱ぎだした
サミエルを酒瓶でドついておとなしくさせたりと忙しく立ち回っていたので、息抜きをし
に行ったのかもしれません。

 私もそっと席を離れ、外へ出ました。少々気になっていたことがあり、この機会にタツ
ミ殿に確かめられればと思ったのです。

 彼は店の横を流れる城の外堀のふちに座っていました。すっかりお気に入りとなったス
ライムのヘニョを抱き、空中に投げ出した足をまるで子供のようにぶらぶらさせながら、
水面に映った月を見つめています。

303 :Stage.17 [11] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 13:26:55 ID:OOboCCOz0

「疲れましたか」
 私が声をかけると、気配には気づいていたのでしょう、彼は微笑んで片手をあげました。
拒む様子はなく、隣に立った私に彼の方から話かけてきました。
「ごめんねロダム、嫌な思いをさせたね」
「それは、王様との約束のことですか? それともレイ殿のことですか?」
 私の言葉に、彼はあう〜っと情けない声を出しました。

「どっちもだけど――。レイさんのアレさ、やっぱり本気だよね。年下をからかってると
かじゃないよね」
「まあ冗談ではなさそうですな。私も女性の気持ちはよくわかりませんが、少なくともレ
イ殿の人となりからして、ふざけてあのような言動はなさらないでしょう」
「だよねー……。いや確かにレイさんの戦力は欲しかったから、ちょっとは『仕掛け』た
さ。でも別に女心をもてあそぶとか、そんなつもりはまったく無かったんだよ」
 水面の月から上空の月へと仰ぎ見て、またうあ〜っとうなっています。
 私はわざと澄ました顔を作って言いました。
「ほほぉ。わざわざ私に『自分が血に弱いことはレイさんに決して話さないで』と念を押
してから、いかにも話してくれとばかりにサミエルと連れ立って武器屋に行ったり。洞窟
内でも、我々にもまだ話していない悩みをレイ殿だけにはこっそり打ち明けたとか、いや
はや勇者様もなかなかやり手だなと感心しておりましたが?」
 そもそも、普段のタツミ殿はご自分がアルス殿の偽者だとバレないよう第三者への態度
にはかなり気を使っています。しかしレイ殿に限っては妙に適当だったり、わざと弱みを
見せていたりところが、ずっと気になっていたのです。

「だーからー! 『なんか頼りない後輩君をちょっと助けてやろうか』なんて思ってくれ
ればいいなぁ、程度だったの! 王様に実力を計られてる状況でこっちから助力を仰ぐわ
けにもいかないし、でもこんなチャンスは逃したくなかったし。だいたいあんなスゴイ人
が僕みたいなガキに惚れるとか、あり得ないだろ? 普通は思わないってば!」

 レイ殿のことは本当に予想外だったのでしょう。いつもどこか冷静に構えている彼が、
すっかり弱りきった顔で言い訳しています。

304 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/08(月) 13:28:04 ID:wsWjFWbj0
リアルタイム遭遇きたーー、
支援

305 :Stage.17 [12] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 13:35:55 ID:OOboCCOz0

 なんだか私は、ようやく年相応の勇者様を見られたような気がして、ついつい笑顔になっ
てしまいました。
「ではそういうことにしておきましょう。なに、レイ殿も立派な大人だ、自分の恋はきち
んと自身で責任を取りますよ。あなたを悪く思ったりはしないでしょう」
「う〜……。僕ももう一回、ちゃんと謝るつもりだけどさぁ……」
「そうですね。――まあ、ひとまずレイ殿のことはそれとして」
 それよりも問題は。
 さきほどから、彼がなんとか話題を逸らそうとしている、もう一つの方です。

「……なぜ、我々に黙って国王とあのような約束をなさったんです。しかも、わざと国王
を煽ったでしょう? あなたならもっと穏便に済ませることもできたはずです」
 ヘニョをなぜていたタツミ殿の手が止まりました。
「どうしてですか。理由があるのでしょう?」

 私はなるべく声に棘がないように問いを重ねました。
 アリアハン城でのさっきの話も、私は彼がすべてを語ったとは思っていません。まだな
にか隠しているのは間違いありません。
 ですが、タツミ殿はそこらの15、6歳の子供とは訳が違う。彼が自分の身が可愛くて嘘
や隠し事をするような子ではないことは、これまでの旅でわかっています。この少年がな
にを一人で抱え込んでいるのか、少しでもその重荷を分け持ってあげたいと、そう思うの
です。

「話してはくれませんか? そんなに、我々が信用できませんか」
 スッと月が雲に隠れ、当たりが暗くなりました。

306 :Stage.17 [13] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 13:38:07 ID:OOboCCOz0





 
「……このゲームは本当に良くできてるよ」





 ようやく、押し殺したような声が彼の口から漏れました。
「ゲーム?」
 聞き返した私に、彼は独り言のように続けます。  
「本気でクリアを目指すなら、どうしたって心の通い合った仲間が必要になる。利害関係
だけのパーティでエンディングに到達できるほど甘くはなさそうだもんね。でもそうして
絆を深めて、一緒に困難を乗り越えて、その先の最後の選択まで到達できた時、果たして
それを全部捨ててまで『あっち』を選べるものなのかな?」

 月が雲の陰から再び姿を現しました。
 タツミ殿が私を見上げます。そして。

「帰りたくないって……思っちゃうのが、普通じゃないのかな?」


 それは、ぐっとなにかに耐えているような。
 私たちには入り込めない深いところで、ひとり孤独な戦いを強いられているような。
 そんな胸が痛くなるような、笑顔でした。

307 :Stage.17 [14] ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 13:40:01 ID:OOboCCOz0

「ここらでちょっと痛い目に遭わないとダメかなぁ、なんてバカなこと考えちゃったんだ。
本当にごめんね、心配かけて。もうあんな無茶はしないよ」
 なんと言っていいのかわからず立ちつくしている私に、タツミ殿はもう、いつもの飄々
とした調子に戻っていました。「寒くなってきたネー」なんて腕をさすりながら、店に向
かいます。
 その後ろ姿が今にもフッと消えてしまいそうな気がして、私も急いで後を追いました。



 彼の言ったことは、私にはよく理解できません。
 ただ、「ゲーム」というからには勝敗がある。
 そしてその負けというのが、先ほどの言葉の通り、「この世界を好きになり、元の世界
に帰りたくなくなってしまうこと」――なのであれば。

 私たちがこうしていっしょに泣いたり笑ったり、心を通い合わせて旅をしていることの
すべてが、彼にとっては重荷にしかならないと、そういうことになるのでしょうか。

 それはひどく悲しい話だと……私は思いました。

308 :Stage.17 atgk ◆IFDQ/RcGKI :2008/09/08(月) 13:45:02 ID:OOboCCOz0
本日はここまでです。

お久しぶりです。今回はあまり話が進まなくてすみません。
読み返してみてタツミの行動がいまいち説明不足かなぁと思いまして、
胸の内を少し打ち明けてもらいました。

309 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/08(月) 21:58:11 ID:PRC/S6sV0
>>308
久しぶり乙です。
なんていうか、深い、ですね。
ロダムの立場に立つと色々と考えさせられます。

貴方のSSは読んでていつも頭の中に映像が浮かびます。
完結までじっくりゆっくり頑張ってください。
続きを楽しみにしてます。

310 : ◆I15DZS9nBc :2008/09/09(火) 02:34:49 ID:3B9GOb7n0
すりりんぐぶれいぶはーと・第二話(1)

魔法を行使するには幾つかの手順が必要となる。
ひとつ、魔法を心に刻む。
ふたつ、脳裏に魔法を思い浮かべる。
みっつ、魔法の呪文を唱える。
魔法特性があるなら特に難しいことはない、一度心に刻み、その魔法を使えるレベルに到達すれば後は自動的に行使できるようになる。
そして脳裏に思い浮かべる、これが俺にとって一番の難関だった。
魔法基盤の存在しない世界に生まれたがために魔法を理解することが容易ではなく、ジジィには才能がないと言われながらも本気で努力した。
そうせざるをえなかった、魔法が使えないとほんとに不便すぎて困るわけで、それはつくづく身に染みていたから朝から晩まで頑張った。
ようやくそれを体得したら後は簡単、魔法の呪文なんて覚えることがない、つーか、呪文というより魔法の名前を告げるだけで良いからだ。
まあ、ある意味呪文は安全装置で、ぶっちゃければ魔法を使うと認識さえできればそれすら必要ない。
だから厄介なもので、百兵をもって魔法使いに挑んでも下手をすると魔法を使えない戦士が全滅することになる。
今、魔法を公式に教わることができるのは王家直属の魔法技師とダーマ神殿ぐらいのものだ、庶民は魔法を刻むなんてことはできない。
ダーマ神殿……無料でその人に合った適正を調べ、さらにそのための肉体改造すら行ってくれる、なんと親切な機関だろうか。
やはりそんなことはなく内情はどす黒い、体面上は職の神を祭るが、実際は諸王連合の利権争いの末に生まれたものだ。
王家にとって王国にとって、兵隊はのどから手が出るほど欲しい、さらにそれが優秀であるならなお良い。
しかし、優秀すぎるのは困るわけで、いつの間にか優秀な兵士が王になっていたんてのは目も当てられない。
だから肉体改造を行う時、従属の印を刻む、それは真実を知るもの以外には悟られていないし、王が死ねと命じれば死すらも拒否することができない。
現実とはかくも恐ろしいものなり、古代叡智の結集であるダーマだが今だかつて勇者を輩出していないのが救いか……。

311 : ◆I15DZS9nBc :2008/09/09(火) 02:35:41 ID:3B9GOb7n0
「いかんいかん、そろそろ晩飯を作らんとジジィのどやされる」

レベルの上がったジジィはあの後何度か自殺を試みたようだが今も元気で他にすることもなく魔法理論の構築に励んでいる。
いやー、あの頃は酷かったね、俺の前でジジィが自らに消滅の魔法をかけて粒子に還元されてんの。
しかもそれが復活すんだから勇者のパーティの呪いって恐ろしいは、人間が骨から内臓、筋肉に包まれていく様はほんと気持ち悪い。
もう二度と勘弁と思う俺が居るわけで、そんなジジィだが魔法そのものに対してはぞっこんラブなんで俺がほっとくとほんと一日中部屋に籠って何かしらやってるわけ。
まあパーティの一員であるから一か月ぐらい食わなくても良いわけだが、どうやらジジィは人間の一員だと思ってる節があるらしく人間っぽい生活から外れると俺に対してキレる。
俺だって人間だっつーの、と思うがそれ以前に勇者に組み込まれたからにはどうしようもない。
なんか最近吹っ切れた、というか、もう諦めた、もう人間駄目だは、俺人間じゃないもの、職業勇者じゃなくて種族勇者みたいな。
ジジィが言うには記憶の書き換えらしいが、もう良い、ここまで深層心理が侵されたらもう後戻りができない。
使命としては魔王討伐だけど、顧みれば特に脅威ってわけでもないからこのままダラダラと生活していても良い気がする。
何度か王軍の追手がちらほらと見えたけどあちら側としては不干渉らしいし。
殺せない相手なんだからしょうがない、殺せないことはないけど魔王級のバケモノでもなければ無理ってあたりが微妙。
獄中死した勇者も居なくはないが、あれは勇者としての密度が低かったんだろうなあと俺は思う。
どこぞのオルテガも下の世界で生きてるんだろうし、まあ、焦る必要もない。
このなんとも言えないバランスをいたずらにつつくのもどうかなと。
むしろバラモスを潰してその後に出てくるヤツが厄介すぎる、アイツは本気で世界を潰しにかかってくるだろうからな。
ここ二年の動向を考えると十中八九、バラモスと王家の連中の間では協定が結ばれてやがる。
あんだけ大げさに言ってやがったのに国は滅びる気配はないし、多少の人口の推移もあるが許容内だ。
逆に人口増加に歯止めをかけて良い感じに間引きしてんじゃねえかな。
農耕地は無限ではないし、上手くコントロールできるよ、この世界。
こう楽観的に考えるのはよくないが、ぶっちゃけこのまま百年経っても今まで通りだと思う。

312 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/09(火) 02:37:00 ID:3B9GOb7n0
「だが、俺のゲームクリアは脅威の除去なわけで、それまで俺はこのままなんだろうな」

真っ当な生活ができないのは素敵なまでに約束されてるし、結局エンディングは一つしか用意されていない。
これが現実が覚めてしまったら……俺は元の日本に帰ることを恐れているのか。
もはや俺%

313 : ◆I15DZS9nBc :2008/09/09(火) 02:38:33 ID:3B9GOb7n0
「だが、俺のゲームクリアは脅威の除去なわけで、それまで俺はこのままなんだろうな」

真っ当な生活ができないのは素敵なまでに約束されてるし、結局エンディングは一つしか用意されていない。
これが現実が覚めてしまったら……俺は元の日本に帰ることを恐れているのか。
もはや俺の現実はここで、いや、現代への望郷の思いが覚めたわけではない。
やり残したことはいくらでもあるが、ここに来てからあのまま時が流れているのなら俺の席はあそこにはない。
考えてみればなぜ俺がここにいるのか、これは長い夢なのかもしれない。
本当の俺はチューブに繋がれ、脳死状態……

「おーっとマズイ、またトリップしちまった、あー何すっかなー、調味料をどうにかして手に入れればレパートリーも増えるんだが」

314 : ◆I15DZS9nBc :2008/09/09(火) 02:40:28 ID:3B9GOb7n0
(2)に続く
間が空いてしまった
上げてしまってもうしわけない
書き込み失敗これで二度目、何が原因だろうか

315 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/09(火) 18:44:23 ID:9i/5FQu50
ここ二日で新作が二つも
うp乙です!!マジで面白い

316 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/09(火) 21:55:26 ID:g1l8M0bgO
久々に除いたら新作が!

楽しませていただきました乙です

317 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/10(水) 09:59:35 ID:olHLZKrlO
>>308
R様乙です!

待ちに待った新作だぜコンチクショウ!!

自分もサミサミ同様タツミに惚れ込んでるッス!深みのあるキャラで最高ッス!

今後もご自分のペースで書き進めていってください。楽しみに待っております。

318 :名前が無い@ただの名無しのようだ:2008/09/12(金) 18:55:37 ID:RBcoA4hs0
ほしゅ

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